仏像のあるくらし 韋駄天
薬師如来 ― 心と体を癒す仏
薬師如来は「東方瑠璃光世界」の教主として、古来より人々の病や苦しみを救う仏として信仰されてきました。その正式なお名は「薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)」。
「瑠璃」とは透きとおる青い宝石を意味し、病を取り除き、清らかな心身を照らし出す力を象徴しています。
仏像の姿は、左手に薬壺(やっこ)を持ち、右手は施無畏印(恐れを取り除く印)や与願印(願いを叶える印)を結ぶのが一般的です。その薬壺には「万病を癒す妙薬」が納められているとされ、人々はそこに健康長寿や心身の安らぎを祈ってきました。
また、薬師如来の脇侍には日光菩薩・月光菩薩が仕え、十二神将がその周囲を守護します。これらは薬師信仰が国家的にも重んじられ、疫病退散や国民の安寧を願う祈りの対象であったことを物語っています。
現代に生きる私たちにとっても、薬師如来は「病気平癒」だけでなく、「心の癒し」をも授けてくださる存在です。
ストレスや不安に揺れる日々のなかで、薬師如来の前に手を合わせることは、心身を調えるひとときでもあります。
薬師如来の青き光は、体の痛みを和らげ、心の疲れをも癒してくれる――。
そう信じて祈るとき、人はすでに「癒し」をいただいているのかもしれません。
本作は、緻密な彫刻技術で仕上げられた柘植材製の薬師如来坐像です。
柘植特有のきめ細やかな木肌と、しっとりとした光沢が、尊像の静かな気品を際立たせています。
右手は施無畏印を結び、左手には万病を癒すとされる薬壺を持ち、清らかな祈りの姿を表しています。
ご自宅での心身の健やかさを願う守り仏としていかがでしょうか。
その青き光を象徴する存在感が、日々の暮らしにやすらぎをもたらすでしょう。



