心静かにご先祖を迎える日――「盆の入り」とは
お盆になると、仏壇や玄関先に並べられる「きゅうりの馬」と「なすの牛」。
子どものころ、親や祖父母に「これは何?」とたずねた記憶をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
これは「精霊馬(しょうりょううま)」「精霊牛(しょうりょううし)」と呼ばれ、ご先祖さまの霊がこの世とあの世を行き来するための乗り物とされています。
きゅうりは足の速い馬を、なすはのんびり歩く牛を表します。
迎え盆にはきゅうりの馬に乗って、少しでも早く帰ってきてもらう。
送り盆にはなすの牛に乗って、ゆっくりあの世へお戻りいただく――
そんな想いが、この素朴な風習には込められています。
足として使うのは割りばしやつまようじ。
立て方や飾る場所に厳密な決まりはありませんが、仏壇の前や玄関先に置かれることが多いようです。
最近では住宅事情や素材の関係で作られないことも増えてきましたが、こうした風習を通じて、子どもたちにご先祖さまへの感謝の心や日本の伝統を伝えるよい機会にもなります。
折り紙やミニチュア、絵に描いて飾る方もいらっしゃいます。
身近な野菜でつくる馬と牛――
そこには、祈りと感謝、そして家族のつながりが静かに息づいているのです。
こころ静かにご先祖様を迎え、日々の感謝を伝える――
お盆のひとときが、家族の絆を見つめ直す優しい時間となりますように。



