古民家を再生し次世代へつなぐリフォーム・リノベーションのプロ
遠所明臣
Mybestpro Interview
古民家を再生し次世代へつなぐリフォーム・リノベーションのプロ
遠所明臣
#chapter1
「過去と現在、未来が共存する家づくりで、ご家族の記憶を紡ぎます」と話すのは、「遠所大工店」の代表・遠所明臣さん。松江市や出雲市を中心に、古民家や町家のリフォーム・リノベーションを手掛けています。
「築100年以上の建物は当時の大工が知恵と技を凝らし、堅ろうな造りです。木と語らい、傷んだところを繕うことで、世代を超えて住み継ぐことができます」
明るく、開放的なリビングが欲しいなど、理想を反映するため、骨組みの状態まで解体したうえで再構築。家事動線に優れたレイアウト、収納スペースの増設、バリアフリー化などを通じて、使い勝手がよい住環境へ再生しています。
「相続した実家の扱いに困っている方も、保全を前向きに検討してほしいですね。私自身、曽祖父が建てた家で幼少期を過ごしました。古き良きたたずまいや木のぬくもりは、今でも強く印象に残り、かけがえのない財産になっています」
昔ながらの日本家屋は、玄関を入ると土間が広がり、座敷まわりには縁側が設けられています。家の中と外がなだらかにつながり、ご近所さんを招き入れて談笑したり、ひなたぼっこをして季節の移ろいを感じたり。効率性が重視される現代の住宅と比べると、一見無駄にも思える空間があることで、心がほっと安らぐ時間が生まれ、穏やかで豊かな暮らしが送れるのではないか、と遠所さんは考えています。
「部屋が寒い、水回りが不便という場合も断熱材を入れ、設備をリニューアルすれば、より使いやすい住環境へ整えることができます。情緒を醸す余白のある住まいで、彩りに満ちた日常をかなえていただければ幸いです」
#chapter2
「私は、7代前から代々、大工を営む家系に生まれました。家業を継いだわけではありませんが、ご先祖さまに導かれるように職人の道に進みました」
木造住宅の建築で知識を養い、技術を磨いた遠所さんは、2002年、宮大工に弟子入り。神社仏閣、古民家の修繕・改修に携わる中で、歴史ある建物への関心を深めます。
「土台や構造など、先人が目に見えない部分も、微に入り細に入り手を施してきたからこそ、時代を超えて建物が現存しているのだと気づかされました。木材を切り出し、磨き上げるといった手仕事の面白さも見いだし、木の個性を読み取り、適材適所に用いる術も身につけました」
師匠からは「見えないところも、決して手を抜くな」と教えられ、自らの信念として胸に刻んだ遠所さん。2014年に独立し、「遠所大工店」を立ち上げました。
「太い梁や柱が存在感を放ち、畳や障子といった和のしつらえが美しい日本家屋は、近年、外国人からの人気が高まっています。ベルギーの方が購入された物件の改装に携わった際は、壁板に力強い木目のナラ材、天井板には滑らかな木肌のサワラ材を使用し、木のやさしい風合いに包まれ、落ち着いた空間に仕上げました」
ものづくりが好きだという遠所さん。時には、顧客から家具のオーダーを受けることもあるそうです。
「『古民家に似合うタンスを』とご用命いただいた時は、作っているうちにどんどん楽しくなって。完成品を見て、お客さまに笑顔になってもらえることが、何よりの喜びです」
#chapter3
木を巧みに組み上げ、手作業で家をつくり上げてきた職人の技量に敬意を払いながら、新たな価値を創造する遠所さん。家づくりに向き合う上で、三つの約束を掲げています。一つは、「生きた木でつくる」ということです。
「木材の収縮や変形を防ぐため、短期間に高温で水分を抜く人工乾燥材が主流ですが、当社は、ねじれやそりも持ち味と考え、太陽光や風による天然乾燥材を採用しています。時間も手間も要しますが、木の香りや色つやが残り、油分も流れ出ず、しっとりとした肌ざわりになります。細胞も保たれてねばりや強度が増し、丈夫な建材となります」
二つ目は「伝統や木の魅力を最大限に引き出す提案をすること」、三つ目は「お客さまのご要望を丁寧にお聞きすること」です。
「『どこを、どう直せばいいのか分からない』という方もいらっしゃいます。時間をかけて細やかに打ち合わせを重ね、どんな暮らしを望んでいるのかをくみ取り、お客さまのライフスタイルに合った間取りや、キッチン、バスといった設備機器をアドバイスします」
DIYが普及した昨今は、「費用を抑えるために現場を手伝いたい」という声も。遠所さんは快く受け入れ、協働しています。
「お客さまと、壁に珪藻土を塗ったこともあります。コスト面の理由だけでなく、ご家族の思い出として、施工に関わりたいというニーズもあります。自分の手を動かすことで愛着も湧くので、皆さまと一緒に大切なわが家を慈しむことができたら、うれしいですね」
(取材年月:2026年3月)
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Profile
古民家を再生し次世代へつなぐリフォーム・リノベーションのプロ
遠所明臣プロ
建築士
遠所大工店
松江市を拠点に、古民家のリフォーム・リノベーションを実施。築100年以上の古民家の構造を生かしながら、細部まで丁寧に手を加え、世代を超えて住み継げる住まいづくりに取り組んでいます。
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