遺言について
生前対策とは?
最近は「生前対策」という言葉を聞かれことが多くなったと思いませんか?
「なんとなくイメージがないわけではないけど、「相続」や「遺言」とはどこが違うの?」「「相続」「遺言」以外に、「成年後見」や「民事信託(「家族信託」という言葉も使われます)」というのはも聞いたけどそれって何?」と感じられているかも方も多いのでないでしょうか。
高齢化社会という平均寿命が高くなった今、どうしても「健康寿命」というのが気になる方が多いと思います。「元気で過ごしたい」という思いは皆さん同じと思いますが、やはり加齢とともにいろいろな疾患の発症リスクは高くなっていきます。
その中で今回のテーマに即していえば、特に「認知症」は大きな課題です。「認知証」を発症すると「介護」の問題などご家族の生活にも大きな影響を与えますが、同時に財産の管理にも大きな問題が発生します。これは「不動産の処分」いった大きな話はもちろん「銀行預金の払い出し」といった日常のことにも支障が発生します。
そうなる前の元気なうちに「認知症になったあとの財産等の管理計画を作っておく」や「死後の財産分割の準備をしておく」といったことが「生前対策」と言えるかと思います。
「遺言」「成年後見」「民事信託」
先述の「遺言」「成年後見」「民事信託」はいろいろな「生前対策」のなかの一手法であり、その目的が異なります。以下、簡単に「遺言」「成年後見」「民事信託」を簡単にご説明します。(詳細は今後このコラムでご説明していく予定です)
「遺言」
「遺言」は「ご自身が亡くなった後」の財産を民法の定める法定相続分や相続人の希望に関わらず、ご自身で分割内容・方法等を指定する、いわば「自身の財産についての最終処分の指示」です。
民法で定められた「正しいルール」に沿って作られた遺言であれば原則その通り執行することができます。逆に言えば「ルール」から外れていた場合残念ながら「無効」となり遺言の内容通りには執行できません。
遺言書の種類は民法でいくつか定められていますが、①公正証書遺言(公証人へ作成を依頼)と②自筆証書遺言(自身で作成)が一般的です。
後者のほうが簡便でお金もかかりませんが「紛失」「偽造」などのリスクがあります。その対策として自筆証書遺言を法務局で保管する制度もあります。
「成年後見」
「成年後見」とは「認知症」や「障害」等のため判断能力が不十分な人を保護・支援するための制度で、「法定後見」と「任意後見」の二つの制度があります。
「法定後見」は既に判断能力に支障が発生した方に対して、親族等の申し立てにより家庭裁判所が職権で成年後見人等を選任されるものです。
一方「任意後見」はご自身に判断能力がある時点で、特定の個人と認知症発症時に「任意後見人」なってもらう「任意後見契約」を締結し、判断能力が低下した後の療養看護や財産管理を委任するものです。
「法定後見」の場合、財産管理等についてご自身の意思等は反映させることはできませんが、「任意後見」は契約にご自身の希望を反映させることが可能です。
尚、「成年後見」は裁判所の一定の監督を受けることになります。
「民事信託」
前述の「任意後見」と同じようにご自身に判断能力がある時点で設定するものです。
元気なうちに信頼できるご家族等と「信託契約」というものを締結してご自身の財産管理を「委託」し、利益を受ける人(「受益者」)のために、特定の目的にそって委託財産を管理・処分してもらうことを可能にするものです。この契約は認知症等発症後も有効です。
任意後見と大きく違う点としては、委任できる事項は「財産の管理」だけであること、裁判所の関与は発生しない、といったことが挙げられます。
答は一つではありません。
これらの制度の「どれか一つを選ばなければならない」ということではありません。お一人お一人が抱えている事情や課題は異なるわけですから、解決方法も人それぞれです。事情や条件等全体を考慮して「『遺言』と『(任意)成年後見』」、或いは「『遺言』と『民事信託』」といった制度を組み合わせて検討することがいいと場合も少なくありません。
まずは行政書士など身近な専門家に早めに相談されることをお奨めします。