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小型人工衛星「まいど1号」の技術リーダーが、挑戦する心を育てる方法や組織マネジメントを伝授

「社員を主役に」で企業を成長に導く人材育成コンサルタント

杦本日出夫

杦本日出夫 すぎもとひでお
杦本日出夫 すぎもとひでお

#chapter1

「育てる・育つ・育てられる」をテーマに、企業や教育機関での講演多数

 ものづくりが盛んな東大阪の中小企業が技術を持ち寄り、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や大学の協力も得て作り上げた小型人工衛星「まいど1号」。2009年に打ち上げに成功し、多くのメディアでも取り上げられました。2002年より同プロジェクトに参加し、技術リーダーを務めたのが、「まいどスペース」の代表・杦本日出夫さんです。

 組織を率いる中で培った知見を生かし、主に「育てる・育つ・育てられる」というテーマを掲げて、人材育成に関する講演やコンサルティングを行っています。

 「リーダーは部下を育てるという視点で、チャンスを与えることが大事です。任せられたことで部下は育ちます。その成長した姿を目の当たりにすることで、リーダーもまた育てられるもの。これは、私自身が電子通信機器の会社を長年経営してきて実感したことです」

 教育施設での講演実績も豊富な杦本さん。小学校低学年の児童には、「まいど1号」が完成するまでを描いた絵本をもとに、人工衛星作りに奮闘する町工場の人たちの姿を伝えます。中学・高校の生徒には、挑戦することの大切さについて話すことが多いとのこと。

 「挑戦というと大変そうと思うかもしれませんが、例えば、朝会った人に自分からあいさつをする。これだって、今までやったことがなければドキドキするでしょう。『おはようございます』と勇気を出すことが第一歩で、小さな挑戦を繰り返すことによって、大きな挑戦につながっていくのだと説いています。当方では、聞き手の年齢や背景に合わせて話をいたしますので、どうぞご相談ください」

#chapter2

社員を主役にする組織づくりと人間力育成で、企業を成長に導く

 杦本さんは工業高校を卒業後、列車無線の保守メンテナンスなどを経験した後に、1981年に電気通信工事・機器製造を行う「大日電子」を設立。心電図伝送システムや、消費者金融向けの無人店舗監視制御装置、列車無線、電力保安無線、無線テレメータなどを手掛けます。
 「当方の技術が宇宙開発事業団(現JAXA)の目に留まり、声を掛けられたのが、宇宙と関わるきっかけです」

 大学との共同研究で、人工衛星などに搭載するジャイロセンサーの小型軽量化に成功。2002年に「宇宙開発事業団 宇宙ベンチャー大賞」を受賞します。
 「喜び勇んで会社に連絡を入れたのですが、社員の反応は『よかったですね』と、まるで人ごとでした。なぜなのか振り返って考えると、社内がワンマン体制に陥っていたことに気づきました」

 杦本さんは「社員を主役にする」組織への変革を決意。「まいど1号」のプロジェクトに、あえて新入社員を加えたところ、試行錯誤する過程で個々に主体性などが芽生えます。並行して、「あいさつ・身だしなみ・掃除」の徹底による、人間力形成にも注力しました。

 自ら考えて行動し、周囲にも配慮できる人材が育ってきた頃、会社も新たなステージへと進みます。

 「長らく下請けをメイン業務とし、大手メーカーに納入することは私どもにとってステータスでもありました。しかし、時代の変化で大手がアナログ無線機から撤退しだしたのです。そこで、弊社が得意とするアナログ無線分野のユーザーである鉄道会社や電力会社などに直接販売することで自立を図りました。また、保守・メンテナンスまで責任をもって担うことで、自社製品に誇りを持てる企業風土を醸成しました」

杦本日出夫 すぎもとひでお

#chapter3

幅広い世代が参加できる「ジャンボ将棋」の普及で、地域を元気に

 2009年に吹田市で「まいどスペース」を立ち上げた杦本さん。コンサルタントや講演家として事業にいそしむと共に、地域活性化のため「ジャンボ将棋」の普及にも取り組んでいます。

 「吹田市は、明治から昭和にかけて活躍した棋士・阪田三吉ゆかりの地で、吹田歴史文化まちづくりセンター『浜屋敷』で、毎年『ジャンボ将棋まつり』が開催されています。庭に施された一辺が約4メートルの石盤に、縦横約30センチの駒を指すもので、参加者やギャラリーは大いに盛り上がります」

 通常、将棋は個人同士の対局ですが、ジャンボ版ではチームを組んで戦うのが特徴だと言います。
 「みんなで話し合いながら戦法を考えることで、コミュニケーション力や協調性が養われます。駒を動かすために盤上を歩き回りますので、ちょっとした運動にもなりますし、子どもから高齢者まで、幅広い世代が和気あいあいと楽しんでいますよ。駒の素材はポリウレタンフォームで、安全性にも配慮しています」
ジャンボ将棋を大きく広めるため、ジャンボ将棋の規格化やルール作り、意匠登録などを事業として行うこととしました。プロ棋士がルールを説明する動画を制作するなど、すそ野を広げるべく奔走しています。

 「小学校や公民館といった施設に、ジャンボ将棋のセットを置いていただき、地区対抗戦、いずれは全国大会も開催できたらと構想しています」と、笑顔で語る杦本さん。大阪を、日本を元気にしたいという思いから、多方面にわたって精力的に活動を展開しています。

(取材年月:2023年12月)

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専門家プロフィール

杦本日出夫

「社員を主役に」で企業を成長に導く人材育成コンサルタント

杦本日出夫プロ

人材育成コンサルタント

株式会社まいどスペース

「まいど1号」のプロジェクトリーダーであり、電子通信機器会社を一代で築き上げた実業家が、人材育成のノウハウを伝授。「育てる・育つ・育てられる」のサイクルで社員のやる気を引き出します。

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