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多様なリスクから会社を守るために、今できることは

危機管理やコンプライアンスを強化する社会保険労務士

田中直才

田中直才 たなかなおとし
田中直才 たなかなおとし

#chapter1

万が一を想定したBCPの策定で、危機的状況に対処できる体制づくりを

 コロナ禍を経験し、改めて感染症や自然災害などに備えることの重要性を実感した企業は多いでしょう。「HK人事労務コンサルティングオフィス」代表の田中直才さんは、社会保険労務士および企業危機管理士として、危機管理に強い体制づくりを支えます。

 重点を置くのは、BCP(事業継続計画)の策定です。BCPでは、緊急事態に際し、事業の継続や早期復旧を実現するための行動や方法を取り決めます。
 「そこまで手が回らないという中小企業は多いですが、いざというときに損害を最小限にとどめるためには、事前の備えが大切です。コロナの感染拡大時に在宅勤務を指示するも、準備不足でテレワークが進まず、休業でもないため雇用調整助成金の対象にならず、大きな損失を被った例もあります」

 企業に応じた対策を講じるため、ヒアリングを重視。優先的に維持する事業の選定や、人員配置など、具体的な場面を想定して検討します。
 「医薬品など人の命に関わる商品や、企業の存続を左右する商品・サービスについて、供給がストップしない手だてを考えます。人の配置では、例えば震度6の地震が起きたときに、〝出社できる社員はいるか〟〝通常は認めていない車通勤を可とするか〟など、細かく確認しておくとスムーズに実行できます」

 田中さんは、独立以前、武田薬品工業で約25年勤務しました。東日本大震災の発生時には、労働組合の実務責任者として、現地調査や事後処理にあたり、その教訓をもとにBCP策定に取り組んだ経験があります。「中小会社の危機管理がわかる本」(セルバ出版、2021年)も上梓し、企業の啓発に努めています。

#chapter2

コンプライアンスや外国人採用など、幅広い分野でサポート

 コンプライアンス対策のコンサルティングや研修でも豊富な実績を誇る田中さん。前職の製薬会社で、営業向けの教育に携わった経験から、利益追求とコンプライアンスの両立が可能な体制づくりを提案します。
 「コンプライアンスを徹底すると、社内の活気が失われ、業界内での競争力も下がると心配する経営者は少なくありません。ルールで縛るのではなく、『おかしい』と感じたことは言い合える風土を醸成し、違反が生じる前にリスクの芽を摘みます」。顧問先から「自社に合うやり方だ」と喜ばれるとか。

 研修テーマとして最近ニーズが高まっているのは、カスタマーハラスメント(カスハラ)です。
 「理不尽なクレームを受けても、『カスハラなのか判断できない』『顧客が減る』などと我慢する人が多く、離職の要因になっています。一人一人の理解を深め、相談できる仕組みを整えます」

 近年力を入れるのが、外国人の採用支援です。在留資格によって就労が制限されるなど、制度への知識が必要となります。
 「『外国人は安く雇える』という意識は捨てましょう。賃金や社会保険・雇用保険といった労働条件は日本人と同等であることが必須で、国への報告義務など雇用手続きや労務管理も煩雑です。求人に応募が来ず、コストや手間をかけても人手がほしいという悩みに応えます」

 さらに、ベトナムの企業と共同で、現地の送り出し機関と連携し特定技能労働者の人材紹介も行います。
 「パートナー企業が現地送り出し機関と緊密な関係を構築できており、優秀な人材をマッチングできます」

田中直才 たなかなおとし

#chapter3

プロセスを大事に、企業ごとの価値観に合わせた解決法を提案

 田中さんのキャリアは、MR(医薬情報担当者)からスタートしました。9年間大学病院を担当し、医師との信頼関係を構築。その後異動となった労働組合では、専従役員として組合員からの苦情や要望に対応する機会が多かったと言います。
 「大学病院の先生方はとにかく忙しく、限られた時間内で効果的に伝える力が鍛えられました。一方、労働組合では、組合員と上司・部下のような関係性ではないため、彼らが言いたいことを粘り強く聞き、自ら動いてもらえるように心を配りました」

 ゆくゆくはコンサルタントとして独立したいと考えていた田中さん。コンプライアンスの担当部署で、支店長や営業所長向けにマネジメント研修を手掛けたことが、今につながっているとか。
 「伝えたいことが相手に伝わる実感が得られ、好意的な反応だけでなく、『そんな考え方もあるのか』という新鮮な視点に気付かされることも多く、楽しかったですね」。労働組合で得た知識や経験を生かせると考え、社労士資格を取得しました。

 田中さんがコンサルティングで大事にするのは、解決までのプロセスです。
 「同じような課題に対しても、企業文化や風土によって価値観や考えは異なります。現場の方々と話し合い、反対意見が出たとしてもお互いの納得を引き出しつつ、組織全体で一つの方向に向かえたときに、やりがいを感じます」。多様な意見を尊重しながら、それぞれの企業に寄り添った解決策を導いてくれるでしょう。

(取材年月:2022年8月)

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田中直才

危機管理やコンプライアンスを強化する社会保険労務士

田中直才プロ

社会保険労務士

HK人事労務コンサルティングオフィス

BCP(事業継続計画)策定をはじめとした危機管理や、コンプライアンス対策を得意とし、コンサルティングや研修で多数の実績があります。外国人の採用支援にも注力し、ベトナムの企業と共同で人材紹介も行います。

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