沖縄の気候風土に合った快適空間を作り出す建築設計のプロ
宜保良樹
Mybestpro Interview
沖縄の気候風土に合った快適空間を作り出す建築設計のプロ
宜保良樹
#chapter1
「沖縄の気候風土になじむ空間構成を大切にしています」と話すのは、沖縄県豊見城市で「建築設計事務所Atelier Gaia(アトリエガイア)」を主宰する宜保良樹さん。住宅を中心に店舗やクリニックなど幅広く対応し、リノベーションも行っています。
アトリエを構えるのは、自身がプランニングしたマンション。市松模様のようなリズミカルな外観が目を引きます。格子状の材料(グレーチング)を用いて、涼しげな琉球絣の文様を表現。沖縄の強い日差しを遮りながら、南風(ふぇーぬかじ)を柔らかく取り込み、住み手に木陰のような涼しさをもたらします。
コンクリートの打ち放しに深みのある赤瓦をモチーフにした外壁の色使いも、モダンでありながら沖縄らしさを演出しています。
「沖縄の建築と聞いて多くの人が思い浮かべる赤瓦をイメージしました。建物を下から見上げたときに、赤色が青い空に映えるようにデザインしています。」
室内にも同様の色を取り入れ、内と外を緩やかにつなぎます。また、壁には調湿性のある材料を施し、湿度の高い沖縄でも快適に過ごせるよう配慮しています。
「調湿性もさることながらコテによって、さまざまな表情を出せるのも魅力です」
料理好きの宜保さんは、家づくりの重要なポイントの一つ、キッチンのレイアウトも得意としています。
「調理の場面を想像しながら、特に収納を多くし動線を考慮し細かなところまで工夫しています」
#chapter2
建築士の父と、琉球舞踊家の母のもと生まれた宜保さん。ものづくりや芸術が身近で、子どもの頃から絵を描くことや工作をすることが大好きでした。美術大学絵画学科への進学を考えていましたが、いろいろと悩んだすえ、父と同じ道へ。
「絵を描く事と似ていて大学の建築学科で学んでみると、真っ白な何もないところから創造していく過程にわくわくしました。今もその気持ちは忘れていません」
大学在学中からアルバイトをしていたことが縁で、沖縄美ら海水族館をはじめ、公共施設やオフィスビルなどを数多く施工する「国建」に入社。時代はバブル期で、数々の大型プロジェクトが進行していました。宜保さんも寝る間を惜しんで仕事に没頭します。
勤務が7年を過ぎた頃、違った角度から建築に携わってみたいと、県内のアトリエ系設計事務所に転職。沖縄の風土に適した住宅や商業施設などを手掛けました。大規模な組織で培った多角的な視点と、建築家のもとで磨いた感性を糧に、2012年に自身のアトリエを設立します。
独立後は、存在している木々との調和を熟考したり、開口部の位置を決める時はそこから何が見えるかを入念にリサーチしたり。その土地で暮らすことをじっくりと考え、住まうほどに心地よさを感じる空間を提案しています。
#chapter3
宜保さんが設計に取り組む際に大事にしているのは、手を動かすことだとか。
「エスキスといって、紙にスケッチをしながら『こうしたら住みやすいかな』とか『こうしたらおもしろいんじゃないか』といったアイデアを練っていくのです。図面作成にはCAD(設計システム)を使いますが、コンピューターを最初から使用せず最初は手を動かす事を基本とし空間を創造するようにしてます」
そう語るように、鉛筆を握って生きた線を探しているうちに、どんな空間構成にしたらいいのか見えてくるそうです。
また、模型製作も重視していることの一つ。敷地とのバランスを含め全体像を把握する簡易的な外観模型や、屋根や壁を取り外して内部の様子を確認できる詳細な内観模型など、段階的にいくつも作ります。
「僕の場合は今のところ模型を製作し、立体模型で施主に説明していますが将来的にCGも空間を表現する手段として取り入れてみたいと考えます」
実績を重ねても、自ら「建築家」と名乗るのは恥ずかしいという宜保さんが目指すのは、さりげない建築です。
「若いときは、自分のデザインを見せてやろうという気持ちが強くありました。もちろんそういう作品もあっていいと思います。ただ、私自身はいろんな経験を重ねて、今は人に寄り添い、沖縄の風土に深く根差すさりげない建築を作っていきたいですね」
空や海のように「おおらかさ」を意識しながら、真っ白い紙に向かう宜保さんの心持ちは設計に表れ、形となり、住まう人を優しく包み込みます。
(取材年月:2023年5月)
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Profile
沖縄の気候風土に合った快適空間を作り出す建築設計のプロ
宜保良樹プロ
建築士
建築設計事務所 Atelier Gaia
オフィスビルやクリニック、商業施設など幅広い建築設計に携わり、今は沖縄の風土を考慮した家づくりを得意としています。柔らかな光と風を取り入れ、住むほどに心地良さを感じる空間を提案。
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