ご愛犬のケアについてお話していきます
私は「噛むから」という理由で、来店をお断りすることはありません。 ※画像の子は、とても怖がりさんです。
犬が全力で「噛むほど嫌だ」と言っている。その目の前の事実は、絶対に無視しないと心に誓っています。
「嫌だ」という主張を尊重し、本当の必要性を精査する
噛む理由は様々ですが、言葉を話さない以上、それは推測の範疇を出ません。しかし私の経験上、その主張の多くは「正当な理由」があると感じています。ならば、その「嫌だ」はできる限り尊重したい。
だからこそ、噛む犬を受け入れるとき、私はまず何よりも先に考えます。 「そのシャンプーやカットは、本当に今、必要なのか?」ということです。
そのお手入れ、実は「やらなくてもいいこと」かもしれません
「やってあげたい」「やらないと不安」というご家族の愛情の解像度を上げるお手伝いを、カウンセリングで丁寧に行います。
もし、犬にとって必要のないことを押し付け続けた結果として噛んでいるのなら、その部分をもう一度よく精査すべきだと思うのです。
例えば、柴犬のシャンプードライ、ボーダーコリーの爪切り、トイプードルのテディベアスタイルなどは、「噛むほど拒絶する犬」にとって、実はそれほど重要ではないこともよくあります。
目の前の「個」を観察し、将来を見据えた判断を
現状、その子の歩行や皮膚、被毛や心がどうなっているか。まずは目の前の子をよく観察します。
すぐに改善が必要なことか?
将来的に(介護や病気の際に)必要になることか?
それだけでも結論が出せれば、今日どこまでやるかの判断はしやすくなります。その延長線上に、数ヶ月後、数年後を見据え、必要でないことをやめるという具体的な行動に移ります。
「石が詰まったリュック」を背負わされた犬たち
判断基準としてアニマルウェルフェア(動物福祉)などは分かりやすいかもしれませんが、私は自身の倫理観や価値観を整理し、店の方針として明確な基準を持っています。
世の中には、噛んでも無理やりやり遂げるサロンや、制御スキルの高いグルーマーもいます。しかし、そのことと【犬に本当に必要なことを提供できるプロ】であることは、必ずしもイコールではありません。
人間が押し付けてきた「重荷」を降ろせるのはご家族だけ
「噛む犬だとしてもプロがやらねば誰がやるのか?」という問いがあるとしたら、私はこう答えます。
『 人間がたくさんの石を詰め込んだリュックを、今この子に背負わせています。これまで誰もこの荷物を、軽くしたり、降ろしたりしてくれなかった。だからもう進めない、重くて辛いと、この子は言っています。
この荷物を減らし、降ろす許可を出せるのは今はもうご家族だけです。実際に減らして降ろすお手伝いをすることは、プロである私たちに出来ます。 』
私たちは、本当にこの子が背負える荷物だけにしてあげたいのです。この子の犬生でこの先、本当に必要なことだけを頑張ろうね、と約束したい。
そのためにはご家族のご理解が必要不可欠です。もしご理解頂いて、おまかせ下さるのであれば、今どんなに噛み付くとしても、最期まで当店でお受けいたします。
グルーミングの目的は、犬と家族の「QOL」を上げること
私は、マズルコントロールや主従関係が必須だと言われた時代にグルーマーになっています。その効果も悪影響も、身をもって知っています。
犬は「犬」である次に、その子という「個性」があります。それは心も身体も、生活もすべてです。そして私はグルーマーとして、彼らにグルーミングを施す目的がハッキリしています。
最後に……もう一度、優しく手を添えられるように
できる限り本人の生活の質(QOL)を上げ、それによってご家族の生活の質も上げる。バランスの良いところで「清潔に、快適に」にし、人間社会の中で犬が自然に共存できることを目指しています。
もし、どこかのわんちゃんとご家族が、石がパンパンに詰まったリュックの重さに立ち尽くしているのなら、もうこれ以上、誰が背負うかなんて悩まなくていいと思います。
「これ、本当に要る?」と一緒に中身をひっくり返して、いらないものは、その辺にポイっと捨ててしまいましょう。
身軽になったその子の背中に、もう一度、優しく手を添えられるようになるために。



