『噛む』のは、犬の悲鳴。――その重いリュックを、一緒に下ろしませんか?
「もう、うちの子を預かってくれる場所なんてない……」
そうやって一人で抱え込み、出口のない暗闇に立ち尽くしている飼い主さんに、まず伝えたいことがあります。
大分でグルーミングサロン「HUG,DOG」を営み、プロの育成にも携わる私、MISAKOのもとには、噛み癖やハイシニア、持病などで「お断り」を経験されたご家族が数多くたどり着きます。
なぜ、私はあえて困難と言われる子たちを受け入れ、向き合い続けるのか。
それは、ハサミを持つ私たちが提供すべきなのは、単なる「カットの技術」ではなく、その子が最期の一息を引き取るまで、家族が手を離さずにいられるための『伴走』だと信じているからです。
今回は、私が活動の根底に置いている「救済」と「支援」の違い、そして孤立を防ぐための哲学についてお話しします。
「救済」と「支援」の決定的な違い
「救済」とは、溺れている人を引き上げること。
「支援」とは、溺れないように一緒に海図を広げ、泳ぎ方を伝え、時には隣でボートを漕ぎ続けること。
多くの場合、犬が「噛む」「暴れる」「病気で手がかかる」となったとき、飼い主様は社会から孤立し、追い詰められた末に「救済(レスキュー)」を求める状態になります。
でも、本当はその手前で食い止めたい。
私が「支援」という言葉にこだわるのは、家族と犬がバラバラになる前に、その手を繋ぎ直したいからです。
「孤立」が殺処分への入り口になる
「うちの子は他所ではお断りされるから」「病気だから迷惑をかけるから」
そうやって飼い主様がサロンや社会との繋がりを絶ってしまうことが、実は一番のリスクです。
孤立した部屋の中で、一人で愛犬の困りごとに向き合い続けるのは限界があります。
その限界が来たとき、不幸な選択(殺処分やネグレクト)の引き金が引かれてしまう。
私はグルーマーとして、ハサミを持つ技術を使って、その「限界」が来る前に介入し、ご家族を支える「伴走者」でありたいと考えています。
機能的な優しさ:プロができる「具体的な伴走」
私がご家族やプログルーマー育成の現場で伝えているのは、単なる精神論ではありません。
状態の分析
なぜ噛むのか? 痛いのか、怖いのか?
環境の調整
どうすれば、この子が安心して身を任せられるか?
未来の予測
シニアになったとき、どんなケアが必要になるか?
これらを論理的に組み立て、ご家族に共有すること。これを私は「機能的な優しさ」と定義しています。
感情論や情熱はエネルギーにはなりますが、実際にプロが知識と技術をもって伴走するには「機能」は重要だと考えているのです。
このように機能的な支援をすることで、ご家族は「この子とまだやっていける」という自信を取り戻せるのではないかと思っています。
すべてのレイヤー(段階)で、私を頼ってほしい
「もうダメだ」となる前に、もっと手前の、元気で悩みがないうちから繋がっておくこと。それが、結果として最も確実に命を守ることに繋がります。
すでに困っている子を救うのはもちろんですが、今後困る可能性があるすべての子と家族を、それぞれの段階(レイヤー)で支え続けたい。その輪が広がることで、犬が粗末に扱われない、孤立しない社会が作れると信じています。



