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大切な思い出が宿る時計を情熱の技術で再生

時計をこよなく愛する修理のプロ

栗林英法 ・

栗林英法 ・ くりばやしえいほう
栗林英法 ・ くりばやしえいほう

#chapter1

手間を惜しまない徹底した修理作業

 親から受け継いだもの、初任給で購入したもの、大切な人からもらったもの・・・恐らく多くの人にとって、時計には様々な物語が詰まっているのではないでしょうか。しかし毎日働き続ける時計は、長く使ううちに不具合が起きるもの。そんな時、頼りになるのが別府の「フジヤマ時計店」。手間を惜しまない徹底した修理作業で思い出の品に再び魂を吹き込んでくれます。

 「フジヤマ時計店」には、掛時計、腕時計それぞれを専門とするふたりの修理職人がいます。ウエストミニスター、ハト、からくりなどの掛時計を見てくれるのは古野博己さん。栗林英法・さんが、手巻、自動巻き、電池式、クロノグラフ、クオーツ式など腕時計の修理を手がけています。簡単な電池交換から難易度の高い修理まで、どんな依頼でも請け負うという栗林さん。その仕事には、職人としての誇りと時計への並々ならぬ愛情が込められています。

 例えば電池交換。裏蓋を開けて電池を入れ替え、蓋を閉めるという単純な作業のようですが、フジヤマ時計店では「当たり前のことですがまず外側、蓋を開けてから内部を徹底的に掃除します」と栗林さん。パッキンの洗浄やグリースの塗布を施し、テスターなどを用いて消費電力を測った後、機械に負担がないか、電池が何年持つかをチェック。電池を入れ替え、蓋を閉める直前までホコリが入らないよう再び丁寧に掃除をします。

 「電池交換が遅い、と怒られることもありますよ」。それでも妥協できないのが、時計を愛する職人ならでは。オーバーホールの際も、ケースやブレスを超音波洗浄器を用いてクリーニング後、ポリッシュ、ヘアラインの仕替え作業を行うなど可能な限り新品に近づけた状態でお客様へお渡しします。

#chapter2

勇気と希望をくれたアンティーク時計に恩返ししたい

 栗林さんが時計に興味を持ったのは20代のころ。町の時計屋で話を聞くうちに魅力にとりつかれ、機械式時計を収集するようになりました。次第に趣味では収まらなくなり、別府市で時計販売店を4年ほど経営。その後、栗林さんは生命を脅かす大病を患ったり、友人から依頼されて経営に携わった会社が倒産するなど、次々と大きな困難に直面します。心身ともに疲れ果てた栗林さんは、「どうせ色々ある人生なら、好きなことをして生きよう」と決意。真っ先に思い浮かんだのが、苦しい時に心の支えとなってくれたアンティーク時計へ恩返しをすることでした。
 
 時計修理職人を目指して、専門書で理論を学びながら、自宅で分解、組み立てを繰り返すこと数年。過度の作業が原因で網膜症にかかってしまうほど、日夜研鑽を積んで技術を習得しました。腕のいい職人がいると聞けば県外まで出向き、勉強させてもらったこともあるそうです。同時に懇意にしていた時計店で、下請け作業をしながら修行を重ねた栗林さん。職人不足で困っていた時計店の修理を、無償で請け負うこともありました。そして2009年、「フジヤマ時計店」をオープン。店名には「地域で一番の店になりたい」という思いを込めました。最初は赤字続きでしたが、「技術さえあればいつか仕事がくる」という信念のもと腕を磨き続けたといいます。

栗林英法 ・ くりばやしえいほう

#chapter3

たくさんの時計とお客様の笑顔に出会えることが最高の報酬

 手間や採算にとらわれず、どんな依頼も断らない姿勢が評判となり、次第に顧客を増やしていった「フジヤマ時計店」。年代物でメーカーに部品がない場合も大阪や東京まで問い合わせたり、アフターパーツやジャンク品の中から移植したりと、とことん解決策を探します。また修理の工程をすべて写真に収めてお客様に渡すなど徹底して丁寧、誠実に対応することも、この店のこだわりです。

 「割に合わない仕事もありますが、お客様の笑顔が自分にとって何よりの報酬」と微笑む栗林さん。ある日70代の女性が、1950年代の腕時計を持って訪れた時のこと。その時計は4軒の店で修理不能と診断されましたが、女性は諦めきれずに栗林さんの店を訪れたのでした。
 「手間はかかるが修理は可能」と判断した栗林さんは依頼を受理。時計を見事に復活させました。聞いてみれば、その時計は女性が初めての賞与で購入した思い出の品。再び時を刻み始めた時計に感動する姿を見て、自分の仕事への誇りと喜びをかみしめたといいます。

 「きちんとした手入れをしていなければ止まる。時計は正直です。ここで手がける修理は、過失の場合を除いて、オーバーホール時期まで不調が出ないようしっかり手入れしています。他店では通常、保証期間は6ヶ月程度。うちでは1~2年後でも見ますよ」。職人魂を語る栗林さんの手元には、今日も何本もの腕時計が再生の時を待ちわびています。
(取材:2012年3月)

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