「誠実な対応」にこだわる骨董品・美術品のプロ
髙橋郁
Mybestpro Interview
「誠実な対応」にこだわる骨董品・美術品のプロ
髙橋郁
#chapter1
掛軸や屏風(びょうぶ)、刀剣、鎧(よろい)など、さまざまな骨董品を取り扱う「大徳美術」。大分県別府市で1973年に創業した同店の店主、髙橋郁さんは、美術業界に携わって50年近くになるベテランです。店内には明治初期の伊万里焼や江戸時代の甲冑(かっちゅう)など、珍しい品がずらりと並び、地域の愛好家が足しげく通います。
「古くから受け継がれてきたものには、生命力が宿っています。例えば、ここにあるのは今から450年前、戦国時代につくられた備前焼の壺です。でも、どこも欠けることなく、きれいな状態で残っているでしょう。この間には戦争も、大災害もありました。数々の苦難をくぐり抜けて今、私たちの目の前にある作品の生命力を感じ取ってほしいですね」
店頭などで販売するほか、買取も実施。持ち込みのほか、出張依頼にも応じており、県内はもちろん、希望があれば、近隣の県からの相談に対応することもあります。
「趣味で収集してきたものや家宝として守ってきたものなど、いずれもお客さまの大切な品物です。買取の際は、何よりも誠実な対応を心掛けています」と髙橋さん。また、近年は生前整理や遺品整理として、まとまった数の買取を希望する人も多いと言います。
「普通の人が見れば、『価値がない』と思って捨ててしまうようなものでも、実はものすごい値打ちのある品だったということも少なくないです。そうしたお宝を発掘し、救い出すことが私の役割。いわば、古美術品のレスキュー隊ですね」と笑顔で話します。
#chapter2
髙橋さんは鑑定する際、価格を提示するだけでなく、その作品の背景について解説しています。作者や製作年をはじめ、使われている素材や技法、どのような経緯でつくられたのかを分かりやすく説明し、納得してもらった上で買い取っています。
「中には、『そんなにいいものなら、売るのをやめます』と心変わりする方もいらっしゃいます。大事にしてくれる方のもとにあるのが一番ですから、それでも構いません」と朗らかに語ります。
長年に渡って磨き上げてきた審美眼で価値を見極め、丁寧に伝える髙橋さん。顧客からの信頼は厚く、日々、いろいろなリクエストが舞い込みます。常連客から、「こんなものを探しているんだけど」と言われれば、業者間のネットワークを駆使して見付け出すことも多いそうです。
「常連のお客さまが好みそうな品物が手に入った場合は、『こんな作品に興味はありませんか?』と、お声を掛けることもあります。お客さまとの距離が近く、時にはお茶を飲みながら美術の話で盛り上がることもあるんですよ」
さらに、「次の世代に財産として引き継いでいくことが使命」と考える髙橋さんのもとでは、刀剣の研磨や掛軸、書画の修復、漆塗り製品の修理なども請け負っています。
「湿度が高く、水害や地震の多い日本では、どうしても汚れやシミ、カビ、破損などが目立ってきます。きれいな状態を保ってもらうため、基本的なお手入れの仕方なら無料でレクチャーしていますし、保存方法に困ったら、どんなことでも相談していただきたいですね」
#chapter3
2023年で創業50年を迎える大徳美術。髙橋さんが13歳の時、会社勤めをしていた父親が独立して始め、髙橋さんも学生の頃からその仕事を手伝ってきたそうです。
「子どもの時、鑑賞石や化石などを集めるのが好きだったんです。それを見ていた父が、『そんなに好きなら、石の商売を始めてみるか?』と、当初は大徳銘石店としてスタートしました。子どもながら、父親と一緒に取引先を回ったり、買い付けに行ったり、大変なことも多かったけど楽しかったですね」
まだインターネットなどない時代、地道に販路を拡大していき、髙橋さんが大学を卒業した翌年の1983年に有限会社大徳美術として法人化。扱う品物も石から美術工芸品に変わり、現在の業態になったと言います。
「近頃は骨董品や美術品に興味を持つ人が減ってしまいました。古美術は決して特別なものでも、難しいものでもありません。例えば、玄関にお気に入りの掛軸を飾ったり、リビングに花器を置いたり、自分の生活の中にとり入れることで気持ちが癒やされますよ」
最近では、日本の古美術に関心を持つ海外の人からの問い合わせや購入希望が増えてきました。
「作品を愛し、大切にしてくださる方がいるなら、国内外を問わず、どんどん販路を広げていきたいですね。不用品として捨てられてしまったり、保存状態が悪くてボロボロになっていたり、残念な運命を迎えているケースも少なくありません。価値ある品を一つでも多く見つけ出し、未来へとつないでいくことが私の努めだと思っています」
(取材年月:2022年9月)
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Profile
「誠実な対応」にこだわる骨董品・美術品のプロ
髙橋郁プロ
古美術品商
有限会社大徳美術
大分県別府市で、掛軸や屏風、刀剣などの骨董品・美術品の買取と販売を行う有限会社大徳美術を経営。美術業界歴約50年の確かな知識と誠実な対応で、地域の骨董品や美術品愛好家からの信頼を集める。
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