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悩みを抱え込みがちな事業者と従業員の橋渡し役として

労使トラブルから中小企業を守るプロ

西野弘幸

西野労務士事務所 社会保険労務士 西野弘幸
西野労務士事務所 相談風景

#chapter1

「小さい企業こそ、就業規則の整備が必要になります」

 あなたの会社に『就業規則』はありますか?もちろんある、という事業主の方も、その内容すべてをきちんと把握していますか?そもそも従業員が10名に満たない事業所では作る義務もない『就業規則』。しかし、その不備が事業所を窮地に追い込む例が増えているといいます。

 「近頃、従業員側の権利意識が高くなってきています」
そう話すのは、十日町に西野労務士事務所を構える西野弘幸さん。お父様の代から続く顧客を含め、現在の取引先は140件以上。扱う業務は社会保険や労働保険、助成金の手続き代行をはじめ、労働問題に関する相談や従業員への説明会、セミナーの開催、労働基準監督署への対応まで。細やかな心配りで地域でも厚い信頼を得る社会保険労務士です。

 地元である十日町は、家族経営からスタートした会社など小規模企業も多い地域。それでも労使間のトラブルが起こりやすくなっている背景には、不況に加えてインターネットの普及も関係しているといいます。
 「4~5人から起業し、就業規則自体知らないまま会社を大きくしてしまった事業主がいらっしゃる一方で、従業員側の方がかえって有給休暇等の労働法に詳しい、といったケースが多々あります。もし、問題が起こって従業員を解雇しようとしても、従業員側が『不当解雇だ』と訴えれば8割以上の確率で事業主が敗訴しています。実は就業規則で規定がなければ、懲戒解雇はできないんですよ」
 さらに最も危険なのが、他社の就業規則をそのまま転用してしまうことだといいます。
 「就業規則にはよく退職金の規定が入っていますが、これは企業の裁量で入れなくてもいいものです。しかしうっかり転用してしまったことで、未払いのトラブルになりかねません。訴えられれば、賠償金や慰謝料など、原資の少ない企業には大きな痛手になります。これからは小さい企業こそ、就業規則の整備が必要になると思います」

#chapter2

従業員が一緒に『権利と義務』を考えるチャンス

 西野さんによると、就業規則の作成・見直しのきっかけで最も多いのは、労働基準監督署による指摘だそうです。しかし事業主の中には、有給休暇制度を明記しなければならないから就業規則など作りたくない。作っても、従業員には見せたくない、という方もいるとのこと。しかしいまの時代、有給休暇は多くの労働者が知る権利。隠しても意味がないといいます。
 「就業規則には、もちろん労働者の権利が書かれています。それと同時に、会社に対する労働者の義務もきちんと明示されるものです。就業規則としてきちんと明文化することで、従業員も安心して働くことができ、信頼関係も生まれます。互いが権利ばかり主張してトラブルにならないよう、権利と義務をうまく表現し、運用していくことが大事なのだと思います」

 就業規則は、作るだけでなくどう運用するかが肝心。これはいま大きなテーマとなっている解雇問題にも直結してきます。
 「たとえ就業規則に書かれていても、事業主さんが我慢して、我慢して、ある日突然『クビだ!』と叫んでしまうことがよくあるんです。でも、それだけは絶対に避けなければいけませんから」

 西野さんは現在、就業規則について事業主と従業員が一緒になって考える勉強会も企画しています。
 「事業主さんも従業員の方も、この土地の方は思っていることを一人で抱え込んでしまう傾向があるようです。トラブルがあっても自分で何とかしようとして、後で一気に爆発してしまったというお話をよく聞きます。そうなる前に、早く相談に来ていただけたら。私が両者の橋渡し役になれたらと思います」

西野労務士事務所 従業員集合写真

#chapter3

労働者が考える問題をリアルタイムで知る

 実は西野さんは、通常の社会保険労務士業務以外にも、もう一つ別の活動を行っています。それは、新潟労働局の総合労働相談。労働環境問題から求人・採用情報まで、労働に関するあらゆる相談を電話や面談で受け付けるというもので、西野さんは今年で4年目。基本的に社会保険労務士は、事業主側ばかりと会う機会が増えるもの。総合労働相談員として、労働者側がいま正に何を問題と捉えているのかを知ることは、労使トラブルを未然に防ぐといった本業面にも大きなプラスになるといいます。

 今後は労使間の個別紛争解決にも携わっていきたいと話すという西野さん。一方でメンタルヘルスの問題にも興味を持ち、現在勉強中です。
 「悩みを一人で抱え込みがちな事業主が多い中、最近はうつ病による従業員の自殺も問題になっています。ある程度の規模を持つ企業であれば、相談室を設けると言った提案もできると思います。しかし、家族経営の小さな会社の場合はどうすればいいのか…いろいろ考えなければならないことは多いですね」

 一口に事業主・従業員といっても、抱える事情は人それぞれ。その悩みに深く共感できる洞察と顧客に寄り添う心が、西野さんの労働問題への細やかな対応力に現れているように感じました。

(取材年月:2012年9月)

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西野弘幸

労使トラブルから中小企業を守るプロ

西野弘幸プロ

社会保険労務士

西野労務士事務所

新潟労働局の総合労働相談員としても勤務。労働者がいま正に抱える悩みを熟知していることで労使間問題を未然に防ぎ、また起こってしまったトラブルもスムーズに解決へ向かうようお手伝いすることができます。

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