日本の伝統技法「曳家工事」を得意とする建築工事のプロ
緒形徳栄
Mybestpro Interview
日本の伝統技法「曳家工事」を得意とする建築工事のプロ
緒形徳栄
#chapter1
新潟県胎内市を拠点に、住宅や施設、事業所などの新築やリフォームを請け負う「曳栄建設」の代表・緒形徳栄さん。建物を持ち上げて基礎を作り変える「土台上げ」、地盤沈下を修正し、再発を防ぐ「アンダーピニング」などの工事を手掛け、中でも「曳家(ひきや)工事」を得意としています。
「曳家は、家屋や蔵、倉庫といった建造物を基礎と切り離し、水平方向に移動させる日本古来の建築工法です。私どもは1965年の創業以来、6800件以上もの曳家・土台上げ工事を承り、うち390件は神社仏閣が占めます。風格あるたたずまいを損なうことなく移転したり、基礎を補強したりしてきました」
建物を解体せず、修復する技能を備えたプロフェッショナルを率い、北陸や東北地方で活動。地域に愛され、親しまれてきた姿をそのまま温存する企業として豊富な実績を有しています。
「増改築に伴い建物の配置を見直したい、基礎をかさ上げして水害のリスクを回避したいとお考えの際も、ご相談ください。また、工場の精密機器や重量物、神社の鳥居や樹木を動かす特殊な依頼もお受けしています。長年にわたり培ってきたノウハウを生かし、皆さまの要望に応えます」
緒形さんにとって印象深いのは、東日本大震災の後に宮城県東松島市で行った「ブルーインパルス格納庫」の曳家工事です。「津波で被害を受けたため、1000坪ある格納庫を4メートル持ち上げた上で横に62メートル移動させ、新たに築いた3メートルの基礎の上に据え直しました。全ての工程を終えるまでに4カ月も要しましたが、綿密な計画のもと無事に完工しました」
#chapter2
緒形さんは1959年に胎内市で生まれました。地元の高校から建築関係の専門学校へ進学。卒業後は修行のために埼玉の建設会社へ就職しますが、2年後に帰郷し、父が立ち上げた「曳栄建設」へ入社しました。
「父から突然『戻ってこい』と呼ばれたのです。おそらく、勤めが長くなると埼玉に腰を下ろし、帰ってこないかもしれないと心配したのでしょう」
家業に入り3年間は実践を学ぶため現場に立ち、経験を積んだのち営業を担当。1987年からは専務を務めます。
「経営の中枢を担うようになってからは、少しずつ事業領域を広げました。解体工事では多くの廃材が発生するので、自社で処分する体制をつくりたいと考え、産業廃棄物処理業に参入。他の事業者さまからの回収要請も受けるようになりました」
緒形さんが2代目に就任したのは2004年、50歳のとき。75歳になった父親の惣栄さんから経営のバトンを受け取りました。実は45歳のころ、自ら社長として跡を継ぐことを打診。父の意思決定を待たずに申し出た背景には、世代交代の流れがありました。
「当時、周囲の会社が次々と若返りを図っていました。当社でも、銀行以外の対外的なやり取りは全て私が引き受け、取引先との折衝などにある程度の自信もあったので、自分がトップになって会社を切り盛りしたいと思ったんです。ただ、父は『75歳になるまでは自分が続ける』と決めていたようでした。古希を迎えたのを機にきっぱりと一線を退き、かじ取りを任されました」
#chapter3
緒形さんのもとでは、軟弱な地盤を強化する地盤改良工事、道路拡張といった土木工事も展開。地盤沈下や地震、台風などにより、ゆがみや傾きが生じた建物を垂直に戻す「建起こし工事」も行い、災害復旧にも取り組んでいます。
「地域密着の企業として責任を果たせるよう、資格取得をサポートするなど社員教育を推進し、多様な工事に対応できる多能工として成長できる環境を整えてきました。公共事業にも参加し、インフラ整備などを通じて地域のお役に立ちたいと思っています」
各方面から引き合いがあり、土台上げなど文化財の修復にも従事。歴史を未来につなぐことが重要な役割と心得ています。
「壊して新しくするのではなく、古い家を直して住みつないだり、震災などで被害を受けた際はかつての姿を取り戻したりすることが、私どもの務めだと自負しております。『ご先祖さまが建てた家を守りたい』『思い出がつまったわが家を子や孫に残したい』といった望みをかなえ、ご家族の記憶を紡ぐお手伝いをしたいですね」
会社の将来を託すべく次世代の育成にも注力。最年少は高校卒業後に入社した20歳の若者だとか。
「強みとする曳家をはじめ、技術を継承していくことが目標です。先人の英知を受け継ぐ仕事はやりがいが大きく、若い皆さんに興味を持ってほしいと願っています」
若手からベテランまで幅広い世代が日々切磋琢磨。伝統工法を身につけた職人衆とともに地域社会に貢献していきたいと思いを語ります。
(取材年月:2025年8月)
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Profile
日本の伝統技法「曳家工事」を得意とする建築工事のプロ
緒形徳栄プロ
建設業
曳栄建設株式会社
建物をそのままの形で残しながら家屋の移転や増改築、基礎工事を可能にする日本の伝統技法「曳家工事」を得意とする。災害時の沈下修正工事等1965年の創業以来社寺380件を含め6800件もの曳家工事実績有り
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