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洋服のお直しで今あるものを大切にする気持ちを共有

ヒアリングを大切にする洋服の直しとリメイクの専門家

山本直紀

山本直紀 やまもとなおき
山本直紀 やまもとなおき

#chapter1

縫製技術はあって当たり前。対話を通じて、困り事を明らかにした上で細やかに提案

 「いくら縫製がうまくても、お客さまの話を聞かずして希望をかなえることはできません。技術はあって当たり前。お客さまの声に耳を傾けることを何よりも大事にしています」と話すのは、「グラン・ママ奈良」を営む山本直紀さん。自宅で縫製業をしていた母の姿を見て育ち、大学を卒業後は洋服のリペア会社で6年半修行し、グラン・ママ奈良へ入社、37歳で家業を引き継ぎました。現在、奈良、和歌山の直営店をはじめ11店舗を展開しています。

 「お客さまは、『サイズが大きくてダボッとする』『どこかしっくりこない』などの理由で当店を利用されます。私たちの役割は、いわば洋服に対する違和感や悩みを解消すること。『こんな風に仕上げてほしい』といったイメージを言葉にするのは意外に難しいので、丁寧に対話を重ねることで困り事を明確にしていきます。齟齬がないようにコミュニケーションを深めることで、より良い解決策を導き出しています」

 ほつれや破れに関しては、どこで、どんな時に起きたのかヒアリングした上でメンテナンス方法を提案しているとか。「手当てするだけだと、また同じ問題が再発する可能性があります。例えばパソコンを日常的に使う方なら、手首やひじの辺りが擦れて生地が薄くなり、補強する必要がありますから。みなさんのライフスタイルなどを理解するように努めています」

 山本さんにとっての喜びは、「明日からさっそく着られる、ありがとう!」と言ってもらえること。直した洋服できれいに装い、見せに来てくれることもあるそうです。

#chapter2

自分の体に合った洋服を身につけることで洗練された雰囲気に

 これまで、数々の相談に応えてきた山本さん、「母のウエディングドレスで私も結婚式をあげたい」「家族の形見の洋服を仕立て直してよみがえられたい」「妻が臨月ギリギリまで働きたいと言っているので、うちの工務店の作業服をマタニティー仕様にしてほしい」など、さまざまな要望が舞い込みます。

  「ある日、ヴィンテージの洋服を修理してほしいと依頼がありました。若いお客さまで、聞くと『高い服やブランド物は店に行けば買えるけど、ヴィンテージ品はなかなか手に入らない。お気に入りをまとうと元気が出る』とおっしゃっていました。験(げん)を担ぐ方もいて、『この服を着ていたら調子が良くて、自分がやりたいことができる。大切な人に会えたり、大切な場所に行けたりするから長く愛用したい』と何度もお手入れする方もいます。それぞれに思いがあって面白いですね」

 小さい頃からリフォームの現場を見てきた山本さん。上着の袖が長い、ボタンが一つ取れているだけで清潔感がなくなったり、パンツの裾を引きずっているとだらしなく見えたり、少しの違いで印象が変わると言います。

 「体にフィットしたものを着ることで洗練された雰囲気になり、『すてきだね』と褒められ笑顔になれます。自分に自信が持てれば心が前向きになり、生活も、仕事も上向いていくでしょう。服は毎日身につけるものです。リフォームを通して、人生をより快適に楽しく過ごせるお手伝いができればと考えています」

山本直紀 やまもとなおき

#chapter3

布だけでなく、米袋からファッション雑貨やおもちゃを制作

 コロナ禍で店がオープンできない状況になり、自ら発信していくことの重要性に気が付いたという山本さんは、新たな取り組みにも力を入れています。

 「私たちは、以前から今あるものを活用して価値を与え、次につなげていくことを生業としてきました。いまさらSDGs(持続可能な開発目標)を声高に叫ぶつもりはありません。ただ捨てられてしまうものを『縫う』ことによって再生できるのなら、何かできないかと。布ではない何かを…と思案し、思いついたのが紙、それも米袋。30キロ用の袋は紙が三重になっていてとても丈夫です。Instagramで呼びかけるとたくさんの米袋が届きました。それでベスト、帽子といったファッションアイテムや、ブーメラン、フライングディスクなどのおもちゃを制作しました」

 そして、米袋を扱うのなら、自分たちで米を育ててみようとひらめきます。米屋や農家とも連携できればと、手掛けたベストや帽子を着用しInstagramで呼びかけました。賛同した人が集まり、田植え、かかし作り、稲刈りと次々にイベントを開催しました。

 「モノを大事にする気持ちを共有できればうれしい」と山本さん。子どもたちを対象にした“お仕事体験”のワークショップも人気を集めているそうです。

 「コロナをきかっけに、ネット上でお直しを賜るECサイトも始めました。おかげさまで徐々に問い合わせが増えています。たくさんの方に興味を持っていただけるように、もっと認知度を上げていきたいですね」と全国展開の夢を語りました。

(取材年月:2022年3月)

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専門家プロフィール

山本直紀

ヒアリングを大切にする洋服の直しとリメイクの専門家

山本直紀プロ

洋服の直しとリメイク

株式会社グラン・ママ奈良

「少し大きい…」「何かしっくりこない…」そんな声をしっかりとヒアリングし困っていること、こんな風にしたいというイメージを明確にして生活スタイルを考慮した、より快適な着心地を提案します。

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