PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

目的地に送り届けるだけでないタクシー、看護師が買い物・病院・旅行をお手伝い

高齢者・障がい者に寄り添う、移動から介助までを支えるプロ

四位純徳

四位純徳 しいすみのり
四位純徳 しいすみのり

#chapter1

一人一人に寄り添ったサポートで、利用者・家族の想いをかなえたい

 買い物や病院に付き添ってほしい。遠くにいる家族に会いに行きたい。
 乗客を目的地へと送り届けるというタクシーの基本業務を超え、移動に不自由を抱える一人一人に合わせたサポートを行うのが、「福祉タクシーきずな」を営む四位純徳さんです。

 「お客さまのほとんどが、車いすや寝たきりの方、心身に障がいがある方です。看護師としての知識や経験を生かし、出先で車いすを操作したり、診察に同席して医師の話をかみ砕いて説明したりしています。ご希望の場所までお連れするだけでなく、その先まで介助できるのが強みです」

 大型の福祉車両2台を備え、宮崎県小林市を中心に営業。医療・福祉に関する専門性を身に付けていることから、長距離の移動や旅行の同行を依頼されることもしばしばです。
 「これまで最も遠いところで名古屋がありました。また、障害のある方に『看護師の四位さんに付いてきてほしい』と頼まれ、兵庫県の日本海側まで4泊5日の旅をしたこともあります」

 四位さんが大切にするのは、利用者に「寄り添う」ということ。「病院で働いていた時は、『病気を診るのが医師の役割、患者の一番近くにいるのが看護師の役割』と肝に銘じてきました。今もその考えに変わりはなく、お客さまの心情や事情に配慮したサービスを心掛けています」

 何事にも親身な四位さんを信頼し、中には10年来の利用者もいると言います。「その方とは、いっぱいお出掛けしましたから、食事も服も好みがわかります。コロナ禍で買い物代行も頼まれるようになりました」と笑顔で語ります。

#chapter2

93歳の男性からの依頼でお墓探しの旅へ。温泉に入り交流を重ねたことも

 四位さんが看護師を志したのは小学校高学年の頃。「夏祭りで病院を訪れたとき、看護助手をしていた父が患者さんと気さくに話をしている様子を見て、『いい仕事だな』と興味を持ちました」

 高校卒業後の進路として看護師が頭にあったものの、当時はまだ「女性の職業」だった時代。いったんは建設会社に勤めますが、かねての夢をあきらめきれず、24歳で転身しました。
 「病院や施設では、患者さんの思いをかなえることを常に意識してきました。しかし、組織では自分が理想とするケアを実現するのに限界があると感じ、2010年の50歳の誕生日に『きずな』を立ち上げました」

 開業して半年ほどたったある日、「先祖の墓を一緒に探してほしい」と、90代の男性の後見人である司法書士から連絡が入りました。
 「おじいさんは『鹿児島県栗野町(現湧水町栗野)に墓がある』と言われたんですが、なかったんですね。近隣の方に聞くなどして鹿児島市にあることがわかりました。その過程で、おじいさんは生き別れになっていた親族とも再会することができました」

 その後も、男性とは数カ月に1度、墓参りに行くように。体調や薬を管理し、温泉で体を流したこともありました。1年半ほど交流を重ね、何度目かの旅行を予定していた朝、施設で亡くなりました。
 「『四位さんと墓も見つけたし、親族とも付き合いができた。おじいさんにとっては一番幸せだったんじゃないですか』。司法書士さんからのこの言葉が救いだったですね」と故人をしのびます。

四位純徳 しいすみのり

#chapter3

施設入居者が家族と気兼ねなく過ごせるよう、民泊事業をスタート

 長年の看護師経験を軸に、業務の拡充に力を入れる四位さん。2019年には、民泊事業をスタートさせました。

 「施設に入居している方は、地元を離れて暮らす子どもさんやお孫さんが帰ってきてくれても、ゆっくり過ごせる場所がないんです。自宅は車いすでは上がれなかったり、施設側が1~2時間の外出しか許可してくれなかったりするからです。そこで、ご家族で気兼ねなく団らんできるように『小林の実家 民泊きずな』を起業しました。私たち看護師が常駐して見守りますので、お泊まりして思い出話なんかを語り合っていただきたいですね」

 新型コロナウイルス感染症の心配がなくなった際には、民泊を拠点にしつつ、福祉タクシーで家族旅行ができるような企画も検討しているそうです。

 また四位さんは、地域における福祉活動にも精力的です。高齢者向けサロンの会長として、体を動かしたり、レクリエーションをしたりして楽しめる場を主催。認知症の人やその家族を支える「認知症サポーター」養成講座の講師や、家族の集いの世話人も務めています。

 「看護師は寝たきりの方を起こしたり、車いすに移したりするから『大変でしょう』って、みなさんから言われるんです。でもね、ぜんぜん苦になりません。『できないつもりだったのに、できてうれしい』。利用者の方のそんな一言を聞くことが喜びであり、やりがいだからです。これからも、みなさんのお役に立ち、いただいたご縁を大事につむいでいきたいですね」

(取材年月:2022年5月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

四位純徳

高齢者・障がい者に寄り添う、移動から介助までを支えるプロ

四位純徳プロ

福祉タクシー運転手・看護師

福祉タクシーきずな

看護師としての長年の経験から、医療・福祉への知見が豊富。車いすや寝たきりの方、心身に障がいがある方の移動を支えるのはもちろん、買い物先で車いすを操作したり、診察に付き添ったりといった介助もできる。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ宮崎に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、またはテレビ宮崎が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO