人と環境に優しい、清潔な寝具を提供するプロ甲斐聖士

人と環境に優しい、清潔な寝具を提供するプロ

甲斐聖士

「売りっぱなしではいけない」との思いから始まった布団丸洗いのサービス

　「人生の約3分の1といわれる睡眠時間を快適に過ごしてほしい」と話すのは、「トーフク」の2代目、甲斐聖士さん。布団や病院のマットレス洗浄、シーツ類の洗濯など、清潔な寝具を提供すべく宮崎市を拠点に活動しています。

　「元々、お布団の製造と卸業を営んでいましたが、『売りっぱなしではいけない』と商品のメンテナンスも始めました。『お布団丸洗い』のサービスは約40年と、県内では古参だと思います」

　同社は、甲斐さんの父で現会長の征夫さんが1977年に延岡市で創業した「十福商事」が前身。1979年に関連会社で寝具の小売り販売を開始し、1984年にはふとん丸洗い工場を立ち上げました。1995年から病院、福祉施設などへ寝具リースを行い、2003年からは福祉用具のレンタルに乗り出すなど事業は多岐にわたります。

　「マットレスは1枚1枚、汚れ具合を確認し、溶剤を使い分けながら手作業でシミを取り、きれいにお湯で洗い流します。また消毒する際は、薬品ではなく高熱の蒸気を用いて処理するなど、安全性には十分に配慮しています」

　以前は各市町村からの依頼で高齢者宅を訪ね、布団を引き取ってクリーニングしていました。
　「洗いをかけるとふわっと膨らみます。当社のモットーはお客さまの立場になって考えることなので、お届けした時、お客さまから『気持ちいいね、ありがとう』と言われるとジーンときます。現在、お布団は持ち込みのみですが、リピーターの方が毎年出してくださり、励みになります」。自身も、亡き母の布団を手入れしながら実家で使っているそうです。

経営者として、父の「時代を見通す力」「迅速な行動力」を学ぶ

　宮崎で生まれ育った甲斐さん。「外で遊ぶのが好きで、野球もしましたし、川へ泳ぎにも行きました。10キロくらいの距離なら自転車で出掛けていましたね」と当時を振り返ります。

　高校卒業後は経営学の専門学校に進学するものの、途中で心が折れて中退。21歳のとき、家業に入りました。

　「父は昔からは厳格な人で、会社でも自宅でもほぼ変わりませんでしたね。最近はかなり穏やかになりましたが」と苦笑い。静岡の管理者養成学校の合宿に行き刺激を受けた征夫さんは、小学生だった甲斐さんを同校の「子供版」へ参加させました。
　「礼儀や規律をたたき込まれました。家に戻ってからも朝5時起きで父と池の周りを走り、『営業マンの心得』を暗唱させられました」

　両親から厳しくしつけられたのはあいさつ。「見る人、すれ違う人に必ずするようにと。きちんと守っていたので、近所の方からは『いつも笑顔ですがすがしい』と評判だったようです。おかげで、人付き合いに欠かせないマナーが身に付きましたね」

　一緒に仕事をするようになってからは、「父は経営者として時代を見通す力にたけている」と実感。チャンスだと判断したら即座に動く行動力も備えていている征夫さんからバトンを受け、2008年に代表取締役に就任しました。
　「2020年には『今がその時期だ』と好機を捉え、新工場を建てました。父から『人生最大級の投資だから頼むぞ』と言われていたのでほっとしましたが、まだまだこれからです」と意気込みます。

従業員の幸せを考え事業改革にも着手。未来につながる会社を目指して

　新工場は機械化をはかり業務効率をアップ。その背景には「従業員ファースト」の思いがありました。
　「新たな人材を確保していくことが、当社の課題となっています。今後、採用を増やしていにあたって、まずは今いる従業員を宮崎で一番幸せにしようと。マンパワーに頼ってきたので、みんなが少しでも楽ができるように環境を整えました」

　新工場が完成し、時に早朝や深夜にまで及んだ作業も午後5時に終えられるように。誕生日の祝い金といった福利厚生も充実させました。

　「私が社長になる数年前に母ががんで他界しました。気落ちした父は自信をなくし、売ることも視野に入れ『会社、どうする？』と聞いてきました。『決めたことに従うけど、俺は続けたい』と言い切りました」

　いつも頭にあるのは、バスケットボールを題材にした漫画「スラムダンク（集英社出版）」で監督が発した「あきらめたらそこで試合終了ですよ」の名言。「これまで働いてくれた従業員のためにも、父が母と作り上げた会社のためにも、志半ばで断念するのは嫌だったんです」と力を込めます。

　世の中の動きを読む征夫さんを見習い、SDGs（持続可能な開発目標）に着目し、ソーラーパネルなど再生可能エネルギーで工場に電力を供給することも検討中。

　三男一女の子を持つ甲斐さん。「いずれ跡を継いで、お客さまと従業員を大切にする理念も受け継いでくれたらうれしいですね」と胸の内を語りました。

（取材年月：2022年2月）

人生の多くの時間を費やす睡眠を快適に過ごしてもらうため、清潔な寝具を提供

「売りっぱなしではいけない」との思いから始まった布団丸洗いのサービス

経営者として、父の「時代を見通す力」「迅速な行動力」を学ぶ

従業員の幸せを考え事業改革にも着手。未来につながる会社を目指して

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