「音楽でつながる」瞬間、『en (2nd Edit)』12月28日リリース 〜楽曲ができるまで〜
「音声編集」と言われても音をどう扱っているのか?イメージしづらい方もいらっしゃると思うので解説します。
音声を扱う編集技術は様々なものがありその項目は多岐にわたるのですが、今回は音声編集の基本、音声波形の切り貼りについて記して行きます。
音声は波形〜音を波にビジュアル化〜
音声は耳で聞くものですが、空気を波の形で伝わっていくものです。
ということで、音声編集は音を波の形にビジュアル化して画面上で操作していくものになります。
画像が音声の波形データです。
この波形データを様々に切り貼り、加工していきます。
映像編集のように時系列で画像を加工しながらつなぎ合わせていくイメージに近いです。
音声の場合は、闇雲に切り貼りをしたりすると、とたんにノイズとなって不快な音になってしまいます。
音声編集のコツはこのノイズを発生させずに、いかに自然にきこえるように加工していくかということになります。
音声編集はどんなときに必要?
たとえば、楽器の録音のときにいい演奏は録れたのに、演奏者が何かににぶつかった音がはいってしまった、少し間違えた箇所だけ録り直したが、前後の音との大きさや質感が変わってしまって不自然になった、などの場合が考えられます。
歌の場合は歌詞を間違ったところだけ録りなおした、一箇所音程が気になって録りなおした・・・など
またBGM素材を映像の尺に合わせてカットしたいといった場合にも必要になります。
そしてナレーション録音の場合は、言い直しをカットしたり、10分録音したけど5分に内容をまとめたい・・・など
だいたい録音してそのまま素材を使用する・・・ということはありません。
様々な編集をほどこし、整えて、聞きやすいようにして出力をします。
楽器や歌声の編集
楽器や歌声の場合、一つの音程の音は単純化すると3つの部分に分けることができます。
次の画像はフルートの音の波形です。
音の立ち上がりの部分を「アタック」、持続する安定した音が出ている部分を「サステイン」、音の終わりの減衰部分を「リリース」
と表します。
アタックとリリースはその音を特に特徴づける部分になります。
ゆったりとした音なのか、鋭い音なのか、リズミカルなのか・・・
そして持続音のサステインの部分は波形が同じ形の繰り返しとなり、安定する部分です。
音の長さを変えたりという場合は、このサステインの部分を切り貼りすると、音の特徴には影響を与えることなく編集することができます。
こちらの画像は先程のフルートの音のサステインを拡大したものです。
左側がこのサステイン部分をカットして切り離したもの。
右側が切り離された波形を縮めて張り合わせたものになります。
(ステレオファイルなので上段が左チャンネル、下段が右チャンネルです
そして右側の白くクロスしている部分はソフト上の表現で、音を重ね合わせていますよという意味を表しています
また、縮尺は左右で違います)
この張り合わせのときに、段差なくスムーズに重ね合わせることが重要で、波形に段差ができると「プツッ」というノイズになって耳に届くことになります。
この編集方法が可能なのは、同じ振幅が繰り返される波形であるサステイン部分だからこそということになります。
厳密にはその他の部分にも適用する方法もありますし、波形そのものを書き換えるなども可能なので、あくまで一例ではありますが、このように波形の特徴をうまく掴んで、利用して音声を自然に編集していきます。
ナレーション、インタビューなどの編集
ナレーション、インタビュー、会話などの場合はまた編集の意味合いが変わってきます。
音を整えるだけでなく、話の内容がリスナーに届くように考えなければならないためです。
話の要約だけではなく「えー、あー」といった内容に関係ない部分をカットしたり、ラジオの放送に使用するもの等の場合は、収録のときにうっかりと発言してしまった不適切な内容をカットして差し障りのない内容にしたりなど・・・
ときには話の印象そのものを変えるような複雑な操作もします。
その際も無理やり切ったような編集ではなく、さも自然に話したものであるかのように編集することができます。
大切なのは、喋りのテンポ、間、ブレス(息づかい)も含めた、収録の雰囲気を壊さない編集です。
さて、次の画像は「さ」という一言の波形です。
この「さ」という短い一言も拡大すると子音部分と母音部分に分けることができます。
子音の部分のみ再生すると「ス」といった擦れたようなノイズに聞こえます。
そして母音部分のみ再生すると「ア」と聞こえます。
これを一瞬でまとめて聞くと「さ」になるというわけです。
例えばこの特徴をナレーションの編集に応用することができます。
特にカキクケコ、サシスセソなどの子音は擦れた音、ノイズに聞こえる部分であまり音程感がありません。
イントネーションを作るのは母音部分になります。
音声編集ではイントネーション、音程感は大変重要で、雰囲気が違うものを並べてしまうととたんに編集臭い、不自然な印象になります。
ですが、なかなか同じトーンの部分というのはないのが実際なのです。
そこで、子音と母音がはっきりと分かれて波形となるカキクケコ、サシスセソ(一部タチツテトも)を利用します。
編集ポイントの手前を子音で切り、編集ポイントの後の同じ行の母音をもってきてつなげます。
そうすると、前後のイントネーションもきれいに繋がる場合が多くなります。
ときには関係ないところから子音だけ持ってくる・・・なんていう操作もします。
これはテクニックのほんの一部になりますが、こういった音声の特徴を活かしながら、裏技を駆使しながら音声編集を行っていきます。
まとめ
以上、今回は「音声編集」に焦点を当ててみました。
作曲編曲といった音楽制作の場合も、この音声編集の技術は必ずといっていいほど使っています。
音を扱う様々な技術を使ってクリエイターは制作をしています。
いろんな音楽や、音声コンテンツに触れる際には、こういったクリエイター、エンジニアが関わっているということに思いを馳せていただけると、クリエイターの一人としてとても嬉しく思います。
こちらは音楽制作についての記事です。合わせて読んでいただけると、また嬉しいです。
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