PROFESSIONAL
STORIES

Mybestpro Interview

最先端のテクノロジーで一歩前へ。装着型サイボーグHAL®が「歩きたい」をアシストします

装着型サイボーグHAL®で自立歩行支援や介護問題に取組むプロ

安永好宏

安永好宏 やすながよしひろ
安永好宏 やすながよしひろ

#chapter1

装着者の運動意思を読み取り自立動作を高める、世界初の装着型サイボーグ

 超高齢社会で医療や介護、労働力の問題が高まる今、日本発のロボット技術が世界から期待を集めています。それが、装着型サイボーグ「HAL®」(Hybrid Assistive Limb®)。筑波大学の山海嘉之教授率いる「サイバーダイン」が開発した世界初の装着型サイボーグで、歩行が困難な人の身体機能のサポートや、介護者の動作負担軽減などさまざまな分野で活躍しています。

 人が動こうとする際、脳から神経を通じて筋肉に信号が伝わり、微弱な「生体電位信号」が体表に漏れ出します。HAL®はその信号をセンサーで検出し、装着者の意思とHAL®︎が同期して動作する。この流れを繰り返すことで脳や神経が学習し、外した後も同様の動作ができることを目指しているのです。

 「鈴鹿ロボケアセンター」は、HAL®を体験できる全国初のロボケアセンターとして2013年に誕生した施設。代表取締役社長の安永好宏さんは全国16施設を運営し、身体機能の改善を促すプログラム「Neuro HALFIT®」を提供しています。

 病気やけがの後遺症、加齢などで動きにくくなった体の動作をHAL®でサポートし、立ち座りや歩行運動を行います。「自分の意思で『動いた』という実感がモチベーションになり、運動に苦手意識がある人も楽しんでもらいやすい」と安永さん。「モニターで動きが可視化されるので、体の正しい動かし方が理解できた」「終わった後は体が軽く感じる」と好評だそうです。

 鈴鹿医療科学大学にある同センターは、2021年4月に理学療法学科のある千代崎キャンパス内に移転し、学生との連携が計画されています。「HAL®を活用して高齢者の歩行能力を維持したい。今後はフレイル(加齢による身体機能の低下)予防のプログラムにも力を入れます」と希望を語ります。

#chapter2

寝台列車にHAL®を乗せて全国を行脚。現在は海外15カ国で導入へ

 老老介護に関して強い問題意識を抱いていた安永さんは、ドキュメンタリー番組でHAL®を知り、2008年にサイバーダインに入社します。経営企画や総務人事を経て、営業としてHAL®の普及・販売促進に貢献。臨床データを蓄積し、2015年には医療用モデルが厚生労働省より医療機器として承認を得るまで尽力しました。

 もともと専門は会計学。それまで営業経験はなく、リハビリの知識もゼロからのスタートでした。「当時、たった2人の営業で全国の病院や施設を回り、寝台列車でHAL®と一緒に寝た日もありました」と笑う安永さん。次第に一般の人からも利用を求める声が増え、自らロボケアセンターの立ち上げを企画。第1号の専門スタッフとなり、利用者の「歩きたい」という思いに向き合い続けてきました。

 現場経験を生かし、安永さんは海外展開にも注力。現在、HAL®はアメリカ、ドイツなど15カ国の医療機関やリハビリ施設で導入されています。特に東南アジアからの注目が高く、タイでは首相官邸でプレゼン、インドでも講演を行ったそうです。

 「マレーシアでは政府主導でサイバニクス技術(人・ロボット・情報系の融合複合技術)を活用した治療施設も開設されました。海外事例から知見を得ることも多く、新しい風を感じます」と目を輝かせます。

安永好宏 やすながよしひろ

#chapter3

HAL®の力を最大限に引き出す「思いやりの心」

 HAL®は物流や災害支援活動での作業負荷の低減などでも幅広く活用されており、コロナ禍では在宅でHAL®︎が利用できる個人レンタルサービスも開始しました。さらに、安永さんは学生時代に自転車競技をしていた経験から、運動パフォーマンスの向上を目指すプログラム「MTX式Neuro HALプラス」を企画。アスリートからも「脱力と力を入れるべきタイミングがわかり、好パフォーマンスにつながった」との声が寄せられ、期待の高さがうかがえます。

 多くの利用者と接する中で、安永さんには見えてきたことがあります。

 「HAL®の力を最大限に発揮させるためには〝心〟のケアが大切だと実感しています。例えば、下肢に障がいを抱えた男の子に対し、大好きなお父さんがサッカーボールを見せたことで、『蹴りたい』という思いが高まり、プログラムが前進したケースもあるんです。そうした一人一人の心と体の動きに寄り添い、粘り強く方法を提案していくことが私たちの役割。介助する家族もご本人もHAL®の体験を通して笑顔を取り戻してもらい、癒やしとなる場でありたいです」

 「開発者に必要なのは人を思いやる心」とは、HAL®の生みの親である山海教授の言葉で、安永さんをはじめ、ロボケアセンターのスタッフにはその思いが浸透していると感じます。役員となった今も「自分の存在が利用者の支えになれば。最近はもっぱら笑わせ係です(笑)」と現場主義を貫き、全国を飛び回る日々。一方で、筑波大学大学院では疾患制御医学を専攻してHAL®活用の研究に取り組み、「介護の壁となる『立ち上がり』の改善を目指したい」と努力を惜しみません。

 目標は、テクノロジーの力で介護や医療にかかる人々の負担をなくし、長く自立して自分らしく生きられる社会。「行政や医療、教育機関、地域の人たちとロボケアセンターが連携し、社会に良い循環が生まれることを願っています」

(取材年月:2021年3月)

リンクをコピーしました

Profile

専門家プロフィール

安永好宏

装着型サイボーグHAL®で自立歩行支援や介護問題に取組むプロ

安永好宏プロ

ロボケアセンター代表

鈴鹿ロボケアセンター株式会社

筑波大学発のCYBERDYNEが開発した世界初の装着型サイボーグHAL®を活用し、加齢等で動きにくくなった体の自立動作支援やフレイル予防に注力。自転車競技経験を活かしアスリート向けのプログラムも開発。

\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /

掲載専門家について

マイベストプロ三重に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または三重テレビ放送が取材しています。[→審査基準

MYBESTPRO