伝統的な建築技術を受け継ぐ木造住宅のプロ
鈴木進一
Mybestpro Interview
伝統的な建築技術を受け継ぐ木造住宅のプロ
鈴木進一
#chapter1
「多くのお客さまにとって、家を建てるというのは一生に一度の大きな決断です。そして、家というのは、家族が生活を営むかけがえのない場所。10年、20年と快適に過ごしていただくためにも、お客さまの希望に寄り添い、納得していただけるものを作りたいと思っています」
そう語るのは、「鈴木工務店」の代表、鈴木進一さん。京都府京都市を拠点に、一戸建ての新築やリフォームをはじめ、マンション・店舗の改修、外構・エクステリアの施工など、幅広い工事を手掛けています。
「1934年の創業当時から和風の木造住宅を得意としており、木のぬくもりを大切にした、人にやさしい家づくりに力を入れています」と鈴木さん。職人歴30年以上を誇るベテランで、天然木を使った日本古来の建築技法で数々の案件を請け負ってきました。また、先人の知恵が詰まった伝統的な工法「込み栓」を現代に受け継ぐ、数少ない職人でもあります。
「込み栓は、柱や桁などの構造を組む際に使用する、いわば木でできたクギです。通常、木材を接合する時は部材に『ほぞ』という凸状の突起を施し、凹型に彫った受け手の『ほぞ穴』に差し込みます。この接合部分を固定するために打ち込むのが込み栓です。木材同士が強固に組み合うため、引き抜く力に強く、地震による建物倒壊を防ぐことができます」
床の間や茶室といった和の空間はもちろん、現代風の住宅にも対応。「世の中のニーズやトレンドにあわせ、幅広いオーダーに応じています。ぜひみなさんの夢をお聞かせください」と呼び掛けます。
#chapter2
「末永く、快適に住み続けてもらうため、現在の家族構成やライフスタイルだけでなく、将来のことも見据えて建築プランを構築します」と鈴木さん。使い勝手の良さにもこだわり、扉の向きや棚の高さなど、細かな部分にも配慮を欠かしません。
「近年、不安定な社会情勢や物価高から、建築にかかる費用も以前の2倍ほどに上がっています。お客さまのご負担を減らすためにも、仕様や設備などを見直して無駄を省いたり、長いお付き合いのある業者さんから安く資材を仕入れたり。コストを抑えながらも、『理想の家』を実現できるよう、プロの目線でプランを考えます」
さらに、打ち合わせから引き渡しまで、鈴木さんがすべての工程に携わるのも特長。工事が始まれば、自ら現地に赴き、現場全体を取り仕切っています。
「お客さまの要望を事細かに把握する私が工事も担当することで、『イメージと違う』といったトラブルが起きるのを防ぎます。また、何か問題が発生した場合も速やか代替案を提示するなど、スムーズに対処いたします」
施主の期待に応えるために日々尽力する鈴木さんを信頼し、家づくりに関してさまざまな相談が寄せられると言います。
「お父さまの代からお付き合いのあるお客さまから、『昭和の雰囲気を感じる、昔懐かしい流し台にしたい』という相談があり、木製のキッチンを提案しました。初めての試みでしたが、古民家風の温かみある雰囲気になり、とても気に入っていただけました」
#chapter3
鈴木さんの祖父が立ち上げ鈴木工務店は、八十余年の歴史を誇ります。2代目である父、そして3代目の鈴木さんと、こんにちまで木造建築の技を守り続けてきました。
「幼い頃から黙々と木を削る祖父や父の姿を見て育ち、『いつか自分も大工になる』と心に決めていました。中学、高校時代には父に連れられて現場に出掛け、仕事を手伝っていましたね」
そして、高校卒業後に職人の世界へ。30年以上がたった今、「ようやく楽しさが分かるようになりました」と話す鈴木さん。「一生ものの家をつくる」という大きな責任を感じながらも、一つ一つ個性の異なる木材と向き合いながら、木を触っている時間が1番好きだと笑顔を見せます。
しかしながら、工期が比較的長く、コストもかかってしまう木造住宅を注文する人は年々少なくなっているとか。加えて、鈴木さんのような職人も徐々に減っています。そんな状況に、現在50代の鈴木さんは危機感を抱いています。
「現役で活躍している60代、70代の先輩方が引退したら、職人の数は一気に減ってしまいます。確かな腕を持つ人がいなくなると、これまで受け継がれてきた大事な技術も途絶えてしまいます。日本伝統の木造住宅を後世に残すためにも、われわれの世代がもっと魅力を発信していかなくてはなりませんね」と鈴木さん。日本の風土に根差し、住む人に優しい木造住宅を次世代につないでいくため、これからも鈴木さんの奮闘は続きます。
(取材年月:2022年12月)
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住宅の新築やリフォーム・マンションの改修、外構・エクステリアなど、さまざまな工事を手掛ける。中でも、和風の木造住宅の建築を得意とし、伝統的な技法「込み栓」を行うことの出来る数少ない職人でもある。
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