人をつなげ、地域の活性化に貢献する農業のプロ
谷村岳志
Mybestpro Interview
人をつなげ、地域の活性化に貢献する農業のプロ
谷村岳志
#chapter1
丹波の山々に囲まれ、豊かな水をたたえる保津川が流れる京都府亀岡市。作物をみずみずしく、健やかに生育する清らかな水と、うま味を凝縮させる昼夜の寒暖差から古くより野菜や米づくりが盛んで、「京の台所」と称されてきました。
盆地が織りなす豊潤な土地にUターンし、農業を通じて故郷を元気にしようと奮闘しているのは「京都エンジョイファーム」代表の谷村岳志さん。1.5ヘクタールの農地では、四季折々で出荷できるよう、また小規模でも始められるモデルになればと、少量多品目を生産しています。
「冬はキャベツや菜の花、夏はトウモロコシや甘長トウガラシなどが食べ頃。特に葉物が多く、ビタミンが豊富なサラダ用のケールも作っています。収穫物は地元の直売所やスーパーの産直コーナーで販売し、できるだけ生産者の顔が見えるように努めています」
作り手を明らかにして信頼感などを醸成するものの、農業を取り巻く環境は厳しい状況です。高齢化や都市部への人口流出で後継者が不足。経営が苦しい中で有機栽培や減農薬への対応にも迫られています。
谷村さんは、人材確保やオーガニック志向といった課題に立ち向かうべく、田舎暮らしに憧れて就農を志す人たちへのアドバイザーや、耕作放棄地を農地に生まれ変わらせるためのコンサルタントも務めます。
「ゆくゆくは日本中の農家さんと手を取り、地域を盛り上げていくことが目標です。『エンジョイファーム』の名前の通り、土に親しみものづくりをする喜びと、私自身が日々の作業を楽しんでいることを伝えたいですね」
#chapter2
谷村さんは、JR亀岡駅から歩いてすぐの場所に「KAMEOKA FOOD kitchen」をオープン。亀岡ならではの食の魅力を伝えようと2018年に開いたレストランで、地産地消にこだわった食事を提供しています。
「旬の味覚を堪能してもらえるように、季節ごとにメニューを考えています。近くにホテルがあることから旅行者や出張の方が多くご来店くださり、お客さまから直接『おいしい』と感想を聞けることがうれしく、やりがいを感じます」
ほかに古民家を利用したシェアハウスも運営。学生が農作業を体験したり、地元の野菜料理を味わったりする企画を手掛け、「今後は規模を拡大し、農業民宿にしたい」と展望を描きます。
亀岡市や近隣の町で新規就農する人を研修生として受け入れる谷村さんは、気候風土に適した品種や作付けのノウハウも共有しています。
「会社勤めから転身した若手農家さんには、技術を教えるだけでなくビジネスの視点からもやりたいことをしっかり聞くように心掛けました。独立後、京都市内へ軽トラックを走らせて移動販売をしており、自動車会社のコマーシャルに取り上げられるほど盛況です」
耕作放棄地を活用するコンサルティングでは、農村コミュニティーの立ち上げを目指す司法書士とコラボレーション。大阪府枚方市で新しい“村づくり”に取り組んでいます。
「奈良県境に近く、地元の方も『よう管理せんわ』と言うような険しい土地ですが、土を耕し、額に汗して働くことの素晴らしさを知ってもらうべく活動しています」
#chapter3
「社会人になる前から、仕事などをサポートすることで、その人を輝かせたいという気持ちがありました」と谷村さん。進学した大学で、経営について助言する中小企業診断士の資格を持つ指導者と出会い、事業や業務を後方支援したいという思いはますます強くなったと語ります。
「恩師から、自分からアクションを起こすには周囲を巻き込む力が必要とアドバイスをもらいました。大学を卒業後はいったん企業に就職し、あえて苦手としていた営業職で提案力を身に付けました」
帰郷後、京野菜の約7割が亀岡市内で生産されている一方で、農家の高齢化が進んでいる現状を目の当たりにし、田舎での幸せな生き方を伝え農業のすそ野を広げることを決意。2012年に専業農家で1年間研修を積んだのち、就農しました。
「当初は見た目がよくないと商品価値が出ない現実に直面し、売り上げも伸びず苦しかったですね。いびつでも味は申し分のない野菜を何とかしたいという思いが、レストランの開業につながりました」
谷村さんは畑を地域に開放し、食育の一環として市内の幼稚園や保育園の子どもたちを招き、種まきや収穫、餅つきなどを実施。引きこもりの人たちの就労を後押しするインターンシップの場にもなっています。
「自然と触れ合い感性を磨くとともに、自らの手で一から育てる経験で農業に関心を持ってくれることを願います。担い手を増やすことで亀岡ブランドの農産物を全国に広め、地域活性化に貢献したいですね」
(取材年月:2024年2月)
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人をつなげ、地域の活性化に貢献する農業のプロ
谷村岳志プロ
農業
京都エンジョイファーム
1.5ヘクタールの農地で季節の野菜を栽培し、JR亀岡駅前で農家レストランを運営。新規就農者を研修生として受け入れてアドバイスするほか、耕作放棄地の活用策を助言するコンサルティングにも力を入れます。
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