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要介護の高齢者が自分らしく暮らすための賃貸住宅を運営

高齢者の暮らしをサポートするプロ

上田寿代

グローリー代表 上田 寿代(うえだ ひさよ)さん
日当たりのいいベランダ付きの居室

#chapter1

「自分の家族を預けても安心できるような場所」を提供

 近鉄・富野荘駅近く、京都府城陽市の閑静な住宅地の一角。ここに高齢者専用の賃貸マンション「グローリー」があります。運営会社の代表・上田寿代さんは、笑顔の絶えない気さくな女性。「グローリー」が生まれたきっかけは、上田さんの父親が命にかかわる大病を患ったことにあるそうです。「何もできないもどかしさと、人間にとって一人で亡くなることほど寂しいことはないと実感しました」

 当時は、介護保険法が施行(2000年4月1日施行)される少し前のこと。介護に関する情報を耳にするようになった上田さんは、認知症気味の祖母もいたことから、ヘルパーの資格を取ることに。
 やがてそのための講習会などに参加するうち、ボランティアで宅老所をしていた会の人たちと知り合い、その人たちをスタッフに迎えて、2000年に現在の会社を設立。デイサービスやヘルパー派遣事業を手がけ、2009年4月から「グローリー」の運営が始まりました。

 現在は、設立当初からの仲間も含め、ケアマネージャー、社会福祉士、介護福祉士、ヘルパー、看護師、機能訓練士などの専門資格を持つ約40人のスタッフが、高齢者の暮らしをさまざまな形でサポートしています。「忙しい時も“自分の家族を安心して預けられるような場所にする”という初心を忘れないよう、いつもみんなで話し合っています」

#chapter2

普通のマンション同様、自分の生活スタイルを楽しんでほしい

 マンション1階には、介護保険を使って利用するデイサービス施設「ほほえみの里」があり、入居者以外の高齢者とも交流できます。日常生活は、介護保険を利用してヘルパーにお世話してもらえるので安心。居住空間は1階に3室、2階と3階に各9室設けられています。
 「医療機関との連携はもちろんありますが、基本的には完全独立の個室で自由に生活できます。ご本人の健康状態次第で、晩酌も外出も旅行も自由。夫婦や親子、兄弟での入居も可能。2室借りて1室を寝室に、1室をリビングとして利用している方もいるんですよ。普通のマンション同様、ご家族がお泊まりに来るのも自由です」。これまでの人生と同じ生活をできるだけ続けられるように。ここには、そのための配慮が行き渡っているのです。

 建築の際には、上田さんのアイディアがたくさん盛り込まれました。「高齢の方が使いやすいよう、電気のスイッチは通常よりやや低い位置に、コンセント位置はやや高めに設置。体調が悪くなった時に押す呼び出しベルは居室、トイレ、浴室に設置し、事務所に直接つながるようにしてあります。トイレは、もし倒れそうになった場合にも壁で自分を支えられる広さに。また認知症気味の方のため、階ごとにエレベーターのドアの色と居室のドアの色を同系色にしてあります。建築士さんや施工業者さんの協力で、暮らしやすい空間を実現できました」

 空間の工夫に加え、スタッフの親身なお世話や看護師のゆったりとした声かけなども、居心地の良さを高めてくれるようです。病院からの退院後、意識レベル0(ゼロ)の状態で入居した人が、手厚い介護のおかげで入居時より状態が落ち着き、家族の声に反応したり、スタッフの動きを目で追ったり、笑ったりするようになり、安楽に過ごしているケースもあるのだとか。

1階のデイサービスのようす

#chapter3

入居者と地域の人たちとが楽しくふれあえる場所も

 宇治の花火大会も見える開放的な屋上では、2009年の夏に近所の人を招いて盆踊り大会が開かれました。またマンションの敷地内には、入居者と近隣の人々が一緒に楽しめるよう、昔の蔵を改装したカラオケ喫茶も用意。元気な人たちとふれあう機会があると、入居者も「自分も頑張ろう!」と生き生きしてくるのだそうです。
 そんな機会を設けたことで、近所の人から、デイサービスの雰囲気や高齢者用の住宅について聞かれることも多くなり、介護や高齢者の暮らしへの関心を持ってもらうきっかけにもなりました。「地域の方々にここの運営を温かい目で見守っていただけるのは、本当にありがたいですね」と上田さん。

 上田さんもスタッフも、この仕事に自信を持っていると言います。「もちろんご家族に代わることはできませんが、ここには特別な絆があります。毎日接しながら、頼られたり、お互いに笑ったり。その人の人生と“縁”を持てることがうれしいですね。スタッフはみんな、お世話させてもらっているという感覚ですし、楽しんでいます」
 上田さんの夢は、「グローリー」をモデルケースに、いろいろな地域で高齢者専用の賃貸住宅を展開していくこと。「このくらいの規模なら目も手も行き届くし、地域の人との交流も深められると思うんです」と目を輝かせて語ってくれました。

 高齢者や介護が必要な人にとっても、生き方のスタイルは一人一人違うはず。上田さんは、社会とつながりを持つ一人の人間として、すべての人に“自分らしく楽しい毎日”を過ごしてほしいと心から願っています。

(取材年月:2010年6月)

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