京都らしい暮らしの提案、耐震診断、空き家再生などに取り組む

京に似合う建築を提案するプロ

山本豊

#chapter1

格子戸の奥には、気軽に寄れる『住まいの相談スペース』が広がる

　山本豊さんが代表を務めるARCO TETTO株式会社は、京阪祇園四条駅から約3分、建仁寺のすぐ北にあります。「1階には、さまざまな方がセミナーやディスカッションに使えるように7～8人が集えるテーブルを置いています。皆さんで集まるサロンのようなものができないかという思いからです」

　事務所がある東山界隈には、築60年以上の木造住宅が多くあり、街並みを形成しています。「京町屋耐震診断士でもある私は、建築に関する無料相談を定期的に行えないか行政とも検討しています」。2階部分に床の傾きがある場合は基礎部分が傷んでいる場合があり、床下の通風が悪く湿気がこもっていれば、土台部分の腐食や蟻害の可能性がかなりあります。建物に潜むリスクを見抜き、柱の根継ぎ、土台の据えかえ、壁の増設を早期に行い、現代の生活にあった平面を考えるなど、建物を健全化する提案をしています。

　「空き家が非常に目立つ東山区の現状も変えなくては」との思いも強く持っています。「企業による空き家の再生事業も、地域にふさわしいものばかりとは限りません。この祗園の佇まいの中にいるからこそ地域住民の目線でできる再生に取り組みたいと、常々考えて動いています。そのためには、まず近隣にお住まいの方に家のことなら、なんでも気軽に相談してもらえる、近所の方々のためのオープンな設計事務所でありたい。いろいろな方との意見交換や、コミュニティーの提言ができる場所をつくりたいのです」

#chapter2

京都らしい街並みを残し、気持ちの弾む暮らし方を提案したい

　「設計の仕事を30年しています。その間、時代と共に変わる暮らし方、家族の在り方、いろいろな『家』の型を見てきました。住宅を考えるのは、楽しい仕事です」。マンションリノベーション、商業空間プロデュースなどに数多くの実績があり、インテリジェンスリノベーション(賢い改装)の提案にも力を入れ、施主のニーズに応えています。

　山本さんは宮川町のほど近くに生まれました。京都らしい風景やライフスタイルを体感して育ってきたからこそ「京都らしい街並み」「京都らしい暮らし」の提案をしていきたいと思っているのです。「京都の特徴は、道幅3mほどの道と、路地文化。戦災を免れて残っている木造建築や町屋が細い路地に面し、味わいのある街並みを形成しています。ところが現行の法律は耐震性能や防火性能の面で厳しく、完全な再生は難しく、残すべき建物も壊されてしまうのは仕方がないことかもしれません。本当に京都らしいものを残すには、知恵を出し合い、うまく建て替える必要があるのです。私の知恵と、建築の仕事全般に取り組んできた経験を生かし、さまざまな提案ができるのではないかと考えています」

　京都には祭りや地蔵盆などによるコミュニティーの形成もあります。そのため隣人とのコミュニケーションがとりやすい家づくりや、近隣の方の人間関係が良好になるような道づくりについても重要視しています。「単に住む家を作るだけでなく、どんな暮らし方をするのか、何を買い、何を食べる、何を楽しむのか。特に若い方に向けて魅力ある提案をすることで、街を活性化していけるのではと考えています」

#chapter3

プロ同士が連携し、新しい暮らしづくりを応援する仕組みづくりを

　「私の仕事は、住む方の思いを考慮しながら、建築物を通じて豊かな暮らしを提案することです。たとえば、日々の生活のそれぞれの一場面が、楽しく思える連続である生活。緑を取り込み、それを眺めて自然の移り変わりを感じる生活。普段から少しだけ襟を正しているかを気にしながら、自分にも周りの方にも、気配りする余裕が生まれる生活。住む方が大切にされている時間をより多く取り込むことが重要だと思います」

　「家そのものは、街を形成するひとつの点です。その点が他の点と結びつくことによりそこから派生する関係を生かして、この京都のコミュニティーづくりを進めたいと考えます。この場所に住めば、このような暮らし方ができるという提案やご紹介がしたいですし、私がご案内する建物探訪などの企画を考えています」

　「今後は弁護士、司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士などとチームを組み、総合的な目線で皆さまに貢献できればと思います。皆さまのお住まいの家を起点に、京都らしいライフスタイル提案や京都らしいコミュニティーづくりを行いたいと考えています」

（取材年月：2015年4月）

Profile

専門家プロフィール

京に似合う建築を提案するプロ

山本豊プロ

一級建築士

ARCO TETTO株式会社

京都市東山区にスタジオを構え、建築で30年のキャリアを持ち、住まいの相談スペースをつくるなど、親しみやすい存在をめざす。京都らしい景観を創造し、気持ちのいい暮らしやコミュニティーづくりまでを提案。

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