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生活基盤の確保から社会参加まで、切れ目ない支援と揺るぎない信念で、罪を犯した障がい者の再犯を防ぐ

罪を犯した障がい者を支援し再犯防止に尽力するプロ

丸野由起子

丸野由起子 まるのゆきこ

#chapter1

更生の第一歩は罪に向き合うことから。福祉サービスにつなげて生活の安定を図る

 「罪を犯し、帰る場所のない障がい者を受け入れて3年がたちました。生活基盤の確保から社会参加までを切れ目なく支援できる体制を整え、利用者一人一人が安定した生活を送れるよう取り組んでいます」

 こう語るのは、2022年に一般社団法人「オリジン」を設立した丸野由起子さん。刑務所などを出所したばかりの障がい者が衣食住の提供を受けながら、生活基盤を整える「自立準備ホーム」、福祉サービスを受けながら共同で暮らす「グループホーム」、働いて報酬を得る「就労継続支援B型作業所」の3施設を運営しています。利用者は、自立準備ホームで2カ月ほど過ごした後、グループホームに移るケースが多いそうです。

 「更生には、本人が自らの罪と向き合い、心から反省することが欠かせません。そのため、罪を犯すに至った背景や生活環境を丁寧に聞き取り、立ち直りを妨げている要因を探ります。窃盗をした人には、大切な物を奪われたときの気持ちを想像してもらい、無銭飲食をした人には、食べた物に対価を支払うのが社会のルールであることを伝えます」

 丸野さんが更生支援の道を歩み始めたのは2010年。地域生活定着支援センターで、出所した高齢者や障がい者が困窮から再犯に至らないよう、福祉サービスにつなぐ支援に携わってきました。そのキャリアは15年以上に及びます。

 「利用者の中には、自分に障がいがあると知らずに生きてきた人もいます。療育手帳や障がい者手帳の取得、本人の権利や財産を守る保佐人の選任、生活保護の申請などを行い、少しでも安定した生活ができるよう支援しています」

#chapter2

日々の生活で成功体験を積む場を設け、自立への意欲を育む

 「ここでの生活自体が訓練の場です。日々の小さな成功体験が自信につながり、安定した生活を送れるようになっているのだと思います」と丸野さんは分析します。金銭管理が難しい人には、計画を立てて欲しい物を購入するよう指導し、買い物にも同行します。一人の利用者に最長で7時間付き合ったこともあるとか。月1回レクリエーションも実施し、みんなでホテルのランチを楽しんだり、日帰り旅行に出かけたり、利用者が息抜きできる時間も設けています。

 「家族と一緒に外出したことがなく、電車の乗り方や店での注文の仕方を知らない人もいます。スタッフが同行し、実際にやって見せることで、少しずつ身に付けていくのです。作業所で得た報酬で好きな物を買う。施設の玄関に花を植え、近所の人に『きれいね』と褒められる。誕生日をみんなから祝ってもらう。これまで味わったことのない喜びを感じているのでしょう」

 大学では心理学を専攻し、精神科の病院で心理検査やカウンセリングなどにも携わった丸野さん。精神保健福祉士の資格も持ち、服薬管理や医療機関への同行も行うなど、きめ細かなサポートが、利用者からの厚い信頼につながっています。

 丸野さんのもとに来るまで何度も入退院を繰り返し、そのたびにグループホームを転々としていた利用者が、生活が落ち着いたことで「ここで頑張りたい」という意欲が芽生え、病状が落ち着いたケースもあります。
 「本人の意思を尊重し、医師と薬の調整をし、何かあればすぐに病院に連れて行きました。そうして寄り添っていくうちに落ち着いていったのです」

#chapter3

優しさの裏にある「再犯者を一人も出さない」という揺るぎない信念

 「精神的につらいことがあっても折れないのが強み」と笑う丸野さんですが、その芯の強さの裏には、ある日突然夫を医療事故で亡くした悲痛な経験がありました。一人で子どもを育てる中、うつや睡眠障害に悩まされた時期もあったといいます。

 「前向きに生きていくにはどうすればよいのかと、7年ほど自問自答を続けました。その末にたどり着いたのが今の活動です。せめて自分が運営する施設から再犯者を出さない。そうすれば、悲しい思いをする被害者を一人でも減らすことができるのではないかと考えました」

 その思いは、支援の現場での姿勢にも色濃く表れています。利用者が規則を守れなかったり、犯した行為に向き合わず言い訳を重ねたりする場合には、あえて距離を取るような厳しさを示すことも。長年、孤立の中で生き、誰にも頼れないままつまずきを重ねてきた人々を数多く見てきたからこそ、人の弱さから目をそらさず、真正面から受け止めているのです。

 「障がいや厳しい環境があっても、本人の心の在り方によって、歩み直す道は開けると考えています。『他人でありながら、ここまで関わるのか』と思われるほど支援に力を注いでいる自負はあります。だからこそ、本気で更生に向き合いたいと願う人には、時間も手間も惜しまず、できる限り寄り添い続けたいと思っています」

 その覚悟を胸に、一人一人と向き合う日々。丸野さんの支援は、今日も現場で、静かに、しかし確かな熱を帯びて続いています。

(取材年月:2025年12月)

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丸野由起子

罪を犯した障がい者を支援し再犯防止に尽力するプロ

丸野由起子プロ

精神保健福祉士

一般社団法人オリジン

被害者を出さないという信念の下、衣食住から就労まで支援し、再犯ゼロを継続。罪に向き合うことを促し、必要な福祉サービスへ。日々の生活を通じて社会性が身に付くよう指導し、更生への意欲を育みます。

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