農業経営の課題はどんぶり勘定からの脱却
農業法人になった場合、税制でさまざまな優遇措置が受けられる反面、多くの法人の場合、利益のない場合でも税金の納付義務が発生するので、所得が少ない場合は負担が大きくなるというデメリットがあります。
一方、社会保障面では、雇用者が安心して働くことができるようになり、健康保険や年金保険の負担が法人と折半になるなど、雇用者にとってのメリットがあります。
また法人化することで、家計と経営が分離し、“どんぶり勘定”が減るメリットが挙げられますが、その分、コストなどの負担は覚悟しなければなりません。
こうしたメリットデメリットを把握し、自分の事業を具体的に振り返って見つめてみるということは、ご自身の経営にとって大きなプラスとなるはずです。
農業を法人化するために知っておきたいこと
前回のコラムでは、農業経営の根深い問題である“どんぶり勘定”についてお話ししました。今回はしっかりとした情報・知識を持たないままに取り扱われることの多い“農業の法人化”についてお話をしてみたいと思います。
まず“法人化”とは簡単に言ってしまえば、農業を個人や家族での事業から、会社での事業にすることです。
「法人化すると税金が安くなる」といった話をよく聞くことから、あまり考えずに目先の利益を求めて“法人化”してしまうといった人や、逆に「手続きが面倒だ」という理由で法人化した方が良い場合でも、個人経営を続けていく人などがいます。しかし、まずはそのメリット、デメリットを正しく理解して、そのうえで適切に選択することが重要です。
法人化におけるメリット、デメリット
まず「法人化すると税金が安くなる」というのは、「法人全体に所得が配分されることによって控除などの額が大きくなる」といった理由からです。
ただし、法人の場合、一般的には利益がなくても税金の納付義務が発生しますので、所得の少ない場合は負担が大きくなることも覚えておいて下さい。
社会保障の面では、各種の社会保険や労働保険が適用されることにより、雇用者が安心して働くことができるようになるほか、国民健康保険と年金が法人と折半になるなどの雇用者側のメリットがあります。
また、大きなメリットとして、法人になって家計と経営が分離することにより、前回お話ししたような“どんぶり勘定”が通用しなくなる、ということも挙げられるでしょう。
ただし、これは法人化の優遇措置というよりも「個人から法人になった結果、そうならざるを得ない」ということであり、自分でやる場合はそれ相応の手間がかかる、専門家に頼む際には費用がかかるといった負担が発生します。
法人にならなくても、各自の努力で家計と経営を分離することは可能です。
「法人にする、しない」という最終結論はともかく、こうしたメリット、デメリットを正確に把握し、自分の事業を具体的に振り返って見つめてみるということは、ご自身の経営にとって大きなプラスとなることは確かです。