農業法人化におけるメリットデメリット
かつて、私が日本政策金融公庫に就職し、農林水産業の融資や債権回収の仕事を担当していた時に目にしたのは、幅広い知識や技術を持つ農業経営者の方たちが、こと経営に関しては“どんぶり勘定“を脱却できずに、資金繰りに苦しんでいる姿でした。
日本の農家のほとんどは家族経営です。そのため、家族の労働力や家計、その他の事業で得られた収入などが農業資金と混同されやすく、結果として資金繰りが自分でもわからなくなりがちなのです。
まずは、そうしたお金の流れをしっかりと見える化し、どんぶり経営から脱却することが
農業経営の課題解決において重要だと考えます。
現在の農業経営がかかえる課題
本日は、私が農業経営の支援をしようと思ったきっかけからお話を始めてみたいと思います。
私は祖父の代までの農家で生まれ育ち、大学では農業経済を専攻。大学卒業後は、農林漁業金融公庫(現:(株)日本政策金融公庫)に就職し、農林水産業の融資や債権回収の仕事を担当していました。
しかし、そこで目にしたのは、多くの農業経営者さんたちが、しっかりとした知識や計画などを持たないまま勢いでお金を借りてしまい、後で困ったことになるという事態でした。
農業は、幅広い知識や、技術、ノウハウ、環境づくりなど複雑な要素で成り立っている産業です。
生産者の方々の技術や知識は驚くべきものがあるにも関わらず、本人たちがそれをあまり意識せず、こと経営に関しては“どんぶり勘定“であることに気づきました。
そうした危険な傾向に歯止めをかけ、魅力ある農業の発展をお手伝いするために、行政書士の資格をとり、今の仕事に就いたという訳です。
農業経営がどんぶり勘定になる理由
農家の大部分は家族の労働力をあてにした家族経営です。
家族が働く場合、基本的には労働費としてそれぞれの仕事に対して費用が払われるということが少ないので、まずここでお金の流れが見えにくくなります。
さらに、農業資金とされているものを生活費やその他、諸々の経費として消費してしまったりすることも間々ありますので、資金繰りが混沌としてきます。
他に事業をされている場合、農業以外の収入/支出が加わってくるために、細かいことは無視して、ますますどんぶり勘定になっていく傾向があるのですが、こうした自分でも不明瞭な資金繰りのまま、そのときの気分や貸し手の都合に従って融資を受けてしまうと、後でとんでもないことになるのです。
まずは、自分の技術やノウハウ、ご家族や土地といった環境など、今まで“あって当たり前”だったものをしっかり組み込んだ“お金の流れ”を文字や数字にして起こすことで、どんぶり勘定からの脱却を目指すことが、農業経営の課題解決において重要な側面だと考えます。