子どもたちに料理の楽しさを伝える野菜ソムリエ高崎順子

子どもたちに料理の楽しさを伝える野菜ソムリエ

高崎順子

健康によい野菜を通じ、料理教室、講演やセミナー、メディア対応など、多岐にわたる活動を展開

　「消費社会」ともいわれ、お金を出せばいろいろなものが手に入る時代。その一方で、自分で何かを作る機会は減少しているのかもしれません。
　「野菜ソムリエ上級プロ」の高崎順子さんは、健康によい野菜を使った料理教室を開いています。野菜果物を心から愛し、大学では農学部に在籍。その後、食に関するさまざまな資格を取得し、3000人以上の子どもたちの食育活動に携わってきた専門性と経験が高崎さんの大きな強みです。

　料理教室以外にも野菜を通じて、講演やセミナー、コラムの執筆、雑誌・新聞・テレビなどへの取材対応、農業高校の非常勤講師など、幅広く活動しています。
　野菜と生活者をつなぐため、講演やセミナーの依頼も喜んで引き受けています。セミナーや講演では、野菜の魅力を引き出し、生活者にもっと野菜を食べることを納得してもらえるように工夫を凝らした話題を提供しています。
　神奈川県内の野菜ソムリエ有志の団体「野菜ソムリエコミュニティかながわ」の代表も務めている高崎さん。県内の野菜を紹介し、野菜の摂取量をアップしたい方向けの社員教育やセミナーにも積極的に取り組んでいます。野菜不足の社会人の健康問題に取り組むことは、未病対策だけでなくワークライフバランスの向上にもつながると高崎さんは考えています。
　
　「野菜とさまざまな世代の食育に長く携わってきて気づかされたのは、これからの子どもの生きる力は『自炊力』と深く関わっているということです。さらに、旬の野菜を知り、上手に取り入れれば、その自炊力は倍増します。“野菜力×自炊力＝生きる力”なのです」と高崎さんは力説します。

子ども向け料理教室で、野菜力と自炊力をかけ合せながら、一人一人の生きる力をはぐくむ

　高崎さんが主宰し、現在、最も力を注いでいるのが、「野菜で伸ばす、生きる力」をコンセプトに、横浜市内で子どもたちに料理を教える「親子★横浜野菜キッチン」です。
　「親子★横浜野菜キッチン」では、地元・横浜の新鮮な旬の野菜にこだわり、子ども向けの料理教室、親子向けのワークショップ、そして、大人向けのレッスンを開いています。野菜嫌いな子どもは野菜好きに、野菜好きな子どもはもっともっと野菜が好きになるように、野菜と子どもとをつなげる活動を展開。そして、野菜力と自炊力をかけ合せながら、一人一人の生きる力をはぐくんでいます。
　子ども向けの料理教室は少人数で行われ、幼児クラスと小学生クラスとがあります。
　「子どもは何にでも興味を示します。すり下ろす感触、炒め物をしているときの音、調理中のにおい……五感を使うことで好奇心が生まれていきます」と高崎さん。五感から受ける、子どもたちの“楽しむ気持ち”を大事にしているそうです。
　一年中、野菜果物を販売しているスーパーでは、あまり季節感は感じられません。身の回りにある旬の野菜を素材にしているのも、子どもたちが地元の野菜を知るきっかけになればという思いからです。

　子どもたちがケガをしないよう、子ども向けの持ちやすい包丁、ストレスを感じずに包丁を構える高さになるように2種類の踏み台を用意するなど、常に細心の注意を払っています。安全、安心に料理をするために、例えば包丁の持ち方、置き方、手の添え方など、ケガをしにくいポイントも教えているそうです。事前にしっかりと安全面について伝えていれば、慎重な子でも怖がることなく、しっかりと包丁を扱えるようになっていきます。
　「子どもにとって難しいことを、集中しがんばってやり遂げるということを大切にしたい」と目を細める高崎さん。その子なりに成長し、きちんと身につくように指導していくように心がけています。

子どもたちの反応に喜び！　料理作りは子どものときからの習慣が重要だと実感

　「横浜市在住の皆さまは、地元で農業が行われているという実感があまりないので、いろいろなとれ立て野菜を使うととても驚きます。また、鮮度がよいことで、シンプルな調理法でもおいしく仕上がるので、子どもたちもたくさん野菜を食べてくれます。とくに『野菜が嫌い』『ピーマンは食べたことがない』といっている子どもたちが『今日は食べられた！』『初めてピーマンを食べた！　おいしい！』というような変化が目の前で起こると、うれしいです。また、イベントや定期レッスンで『調理体験』をした子どもたちが、家でもリピートして作ってくれる様子はとても励みになります。今の時代、「情報」はあふれていますが、『実体験する』大切さを痛感します」
“野菜力×自炊力＝生きる力”をモットーとする高崎さんの経験談です。

　手を動かして、作って食べるという子どものときの楽しい記憶――その後、部活や受験勉強などで忙しく、しばらく料理を作ることから離れたとしても、気持ちが向いたときにハードルを感じずに料理を楽しむには、子どものときからの習慣が必要だと高崎さんは、笑顔でそれでも力強く語ってくれました。

（取材年月：2019年8月）

「野菜力×自炊力＝生きる力」をモットーに子どもたちに旬の野菜の魅力を伝える

健康によい野菜を通じ、料理教室、講演やセミナー、メディア対応など、多岐にわたる活動を展開

子ども向け料理教室で、野菜力と自炊力をかけ合せながら、一人一人の生きる力をはぐくむ

子どもたちの反応に喜び！　料理作りは子どものときからの習慣が重要だと実感

専門家プロフィール

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