アマゾンと軽貨物配送業者の未来──関税政策下での共存と地域密着型物流の価値

テーマ:時事トレンド 日本

軽貨物配送業の現場から見えるアマゾンとの向き合い方と地域物流の可能性


2025年8月、アマゾンが公表した決算は、関税強化という不安定な国際情勢の中でも「通販部門で11%増収」という堅調な結果でした。一方で、トランプ政権による新たな関税政策が発動され、今後の物流・配送分野に大きな影響が及ぶと懸念されています。これらの動向は、日本の軽貨物配送業者にも少なからず波紋を広げています。

私たちのような地域密着型の軽貨物業者は、アマゾンをはじめとする大手ECプラットフォーマーとどう向き合い、どう共存していくべきなのか──。今回は、アマゾンと軽貨物配送の未来について、現場視点からの提言をお届けします。

アマゾンの物流体制と地域配送の「すき間」

アマゾンは今や、自社で物流網を構築し、配送の大半を自社管理で賄う体制を整えています。しかし、地域の細やかな配達ニーズ──たとえば高齢者宅への時間指定、商店への個別納品、小規模イベントへのスポット配送などには、まだまだ“すき間”があります。

私たち軽貨物配送業者の強みはまさにそこにあります。大手では対応しきれない柔軟性とスピード、そして地域ごとの関係性を活かした配送品質。これこそが、アマゾンと共存しながらも独自の市場価値を発揮できるポイントです。

グローバル不安の中で見直される「地場配送力」

今回のような関税強化や輸入規制は、世界的なサプライチェーンに依存する企業にとって大きなリスクです。アマゾンでさえ、「今後のコスト増は誰が負担するか分からない」と、ジャシーCEOが懸念を示しました。

こうした不透明な国際情勢の中で、地場の物流リソースが見直されつつあります。私たちのような地域密着型の配送業者は、国内仕入れ・国内流通に対応する柔軟な体制を持ち、海外に依存しない「安定したラストワンマイル」を提供できます。

軽貨物配送業者としての具体的取り組み

アマゾンと完全に競合するのではなく、補完関係を築いていく。それが私たちの基本スタンスです。そのために、以下のような取り組みを行っています。

1. ラストワンマイル特化のBtoB配送


店舗向けの定期ルート配送や、アマゾンでは対応しきれない「午前中必着・午後回収」など、企業間ニーズへの対応力を高めています。

2. 地域企業との直接契約の強化


アマゾンに依存しないためにも、地場スーパーやドラッグストア、飲食チェーンとの直契約を増やし、物流インフラの一翼を担っています。

3. 自社開発のクラウド契約システム導入


配送契約を電子化し、即日稼働できる体制を整備。これにより、急な物流ニーズにも迅速に対応できるようになっています。

アマゾンの成長が示す「配送品質」の重要性
アマゾンは、コスト増加が見込まれる中でも、売上と純利益を大きく伸ばしています。裏を返せば、それだけ消費者が「即日配送」「確実な納品」といった物流サービスに価値を見出しているということです。

この流れは、軽貨物業界にも大きなチャンスをもたらします。大手が担う幹線輸送の“あと”を私たちが担う──いわば「都市部の毛細血管」として機能することが、物流の多様性を保ち、エンドユーザーの満足度を高める鍵となるのです。

共存のカギは「役割分担」と「連携」
アマゾンのような巨大プラットフォームは、グローバル規模での最適化を目指す存在です。一方、軽貨物配送業者は、地域単位での最適解を提供するプロです。この“階層の違い”を理解したうえで、役割を分担し、うまく連携していくことが共存への第一歩です。

私たちは今後も、アマゾンの流通網を補完しつつ、地域の中小企業や個人商店の物流パートナーとしての立場を強化していきます。

最後に──不確実な時代こそ「人の手」が価値を持つ

AI・関税・グローバル競争……変化が激しい今だからこそ、「顔が見える物流」「信頼でつながる配送ネットワーク」が見直されています。

アマゾンのような巨大企業と敵対するのではなく、それぞれの得意分野を活かして支え合う未来を私たちは目指しています。

私たち軽貨物配送業者の役割は、単なる荷物運びではありません。「地域の経済を支える血流」として、これからも地道に、そして確実に社会インフラを担ってまいります。

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川上絢一郎
専門家

川上絢一郎(軽貨物運送業)

ハウンドジャパン株式会社

総売上30億円の軽貨物運送会社が、独自に構築した「持たない経営」のノウハウ&人脈で、在庫・人材・コストを抑えて成功に導く。業界知識のない個人・新規参入の法人が続出し、各年商の2年目平均は1億円を達成。

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