人材不足を武器に変える!飲食・軽貨物に学ぶ持続成長の秘策
2025年4〜6月期の相鉄ホールディングスの連結決算は、純利益が前年同期比30%減の73億円と、厳しい数値で幕を開けました。注目すべきは、堅調な「運輸業」や「ホテル業」と対照的に、「不動産部門」が営業利益ベースで60%もの大幅減益となったことです。特にタワーマンション販売が一巡した横浜駅直結の「ザ・ヨコハマフロント」などの反動が大きく影響しました。
このニュースは、私たち軽貨物配送事業者にとっても、無関係ではありません。都市構造の変化、消費動向の変化、そして地域インフラへの期待といった複数の視点から、次なる一手を考えるヒントが詰まっているのです。
■ 都心部不動産の減速は「生活圏物流」への転換期
相鉄HDの不動産部門の失速は、都市型タワーマンションの開発が一巡したことによるものと分析されています。これはすなわち、都市再開発のピークを越え、住宅需要が「都心集中型」から「郊外・生活圏重視型」へと移行している兆候です。
この変化は、軽貨物配送業にとってチャンスです。なぜなら、大量の人が暮らすエリアに小規模な「個人需要」や「店舗支援型物流」が増えるからです。たとえば、
EC個人宅配の頻度増加
郊外店舗や個人飲食店への業務用小口配送
置き配・再配達対策の需要
マンション管理や修繕・資材配送の小規模対応
など、「近場のニーズ」に寄り添うラストワンマイル戦略が今後ますます重要になります。
■ 運輸業の好調は「地域間連携」の進化
相鉄HDの運輸部門は営業利益が36%増と大幅な増収増益を記録しました。中でも、東急やJRに直通する「新横浜線」効果によって輸送人員が3%増加した点は重要です。都市間・路線間の「接続性」が人の流れを活性化させているのです。
この「接続性」は、物流にも当てはまります。私たち軽貨物業者も以下のような視点で、ネットワークの再構築が求められます。
「神奈川発→都内着」の定期便構築
新横浜・町田・武蔵小杉など鉄道ハブ駅周辺への当日便・スポット便展開
複数業者との連携で「シェア便」「混載便」の地域展開
特に新横浜線のような新たなインフラに即応することは、スピードと柔軟性を武器とする軽貨物の特性と非常に相性が良いといえます。
■ インバウンド需要の復活と「観光地配送」の再活性
ホテル業の営業利益が59%増となった背景には、大阪・関西万博にともなうインバウンド回復があります。外国人観光客の割合も66%と前年同期比でさらに上昇しました。
神奈川県も鎌倉、箱根、横浜中華街など観光地を抱える地域。インバウンド回復と同時に再び脚光を浴びるのが、観光地内の物流支援です。たとえば:
観光施設や旅館への定時配送(お土産、食品、消耗品)
イベント・催事会場への当日納品・撤収便
外国人対応に特化した「多言語指示対応配送」などの新サービス
今後のインバウンド再成長期を見越し、観光業界との連携によるロジスティクス提供を一段と進めるべきタイミングです。
■ 軽貨物業は“都市の脈”を読む業界へ
相鉄HDの決算に表れたのは、単なる業績の浮き沈みではなく、「地域の構造転換」そのものです。不動産偏重から公共交通・観光・生活支援へ。これはまさに、軽貨物業界が持つフットワークの強みを最大限に発揮できる新時代の到来といえます。
すでに不動産開発で大きな利益を得られる時代ではありません。これからは人々の生活に寄り添い、生活圏を支える物流こそが都市の価値を保つ鍵となるのです。
■ まとめ:軽貨物配送業の次なる戦略指針
今後、軽貨物配送業が取り組むべき近未来の方向性を以下にまとめます。
都市中心から郊外・生活圏重視へのシフト対応
地域間・駅間を活かした接続型配送ネットワーク構築
観光・インバウンド業界との連携強化
不動産停滞後の「生活支援型サービス」への進化
地域の“今”を読むスピード感と柔軟性の維持
横浜・神奈川という地場の強みを活かし、私たち軽貨物事業者が地域経済の新たな“毛細血管”として機能する未来は、すぐそこまで来ています。



