テクノロジーに飲まれない会社になるために──軽貨物配送業の“人間力”再定義

川上絢一郎

川上絢一郎

テーマ:時事トレンド 日本

「ロボット時代」に突入しても、ドライバーの価値は消えない
〜軽貨物業界が今こそ見直すべき“人”への投資〜

近年、Amazonが進めるロボット配達の実証実験が話題となっています。サンフランシスコに建設中のロボット試験場では、人型ロボットが障害物を避けながら玄関まで荷物を届ける未来が現実味を帯びてきました。

確かに、物流におけるAI・ロボットの導入は、業界に大きな変革をもたらすでしょう。しかし、今後5年、少なくとも軽貨物配送業において“人間のドライバー”の存在は不可欠です。そしてこの時代の転換点において、私たち軽貨物事業者は、ドライバー対応と求人戦略を根本から見直す必要があります。

【1】「代替される職業」と思わせない、ドライバーへの“リスペクト"


■ なぜ今「待遇の見直し」が必要か


ロボットの台頭が話題になる中で、「この仕事はいずれ機械に取って代わられる」と感じた瞬間、人はやりがいを失います。
これは、現役ドライバーの士気低下に直結します。

特に若年層や未経験者は、配送業に将来性を見いだせなければ、求人に応募することすらしません。
だからこそ、今、私たち事業者がすべきは「軽貨物配送はこれからも必要不可欠な仕事である」と誇りを持たせることです。

▷ 具体例:「〇〇さん、いつもありがとう」を可視化する仕組み

例えば当社では、荷主からの「感謝のメッセージ」を社内SNSやLINEで共有する取り組みを行っています。
「顔が見えない仕事」だからこそ、人からの言葉が何より励みになる。こうした小さな積み重ねが、ドライバーの「辞めずに頑張る動機」に繋がっています。

【2】「自由」と「安心」が共存する働き方を提示する

■ 固定観念を覆す新しい求人像とは


これまでの軽貨物業界の求人は、「稼げます」「やる気次第で高収入」という表現が多く見られました。しかし、今求職者が欲しているのは、“稼げる”だけでなく“続けられる”という実感です。


副業希望者や子育て中の方、介護と両立したい人たちに向け、当社では週1日〜OK、1日3時間〜OKの求人を常時提示しています。「フルタイム=一人前」という古いイメージを壊し、“その人に合った働き方”を提示できる事業者が、これから選ばれていきます。

【3】ロボットよりも人間が選ばれる“心のあるサービス”を磨く

■ 人間にしかできない対応とは?


ロボットは無言で荷物を届けますが、人は「一言添える」「状況を見て判断する」ことができます。例えば:

玄関前に高齢者がいれば声をかける

雨の日に荷物が濡れないようカバーをする

小さなお子様のいる家では静かにインターホンを鳴らす

こうした「気配り」はロボットにはできません。だからこそ、ドライバーに“心配り教育”を施すことが、今後の大きな差別化要因となります。

【4】求人媒体だけに頼らない、ストーリーマーケティングの活用

■ SNSで「人間らしさ」と「夢」を伝える


軽貨物配送業は、ただの“モノ運び”ではなく、「生活を支えるインフラ」です。この価値を、SNSやブログ、動画などを通じて“物語化”していくことが求められます。

▷ 具体例:「1日密着Vlog」「女性ドライバーのリアル体験」「開業1年目の軌跡」

こうしたコンテンツがあることで、「未経験だけどやってみたい」「自分にもできそう」と感じる人が増えていきます。今後の求人戦略は、“企業が人を選ぶ”から“人に選ばれる企業へ”と変わっていくのです。

【まとめ】ロボットが進化しても、人間が残る道はある


ロボティクスの進化は止められません。しかし、“人だからできる仕事”を磨き、発信していくことで、軽貨物業界の未来はまだまだ明るいと確信しています。

ドライバーを「戦力」ではなく「仲間」として扱うこと

働き方の多様性を受け入れること

機械には真似できない“人情”を磨くこと

今こそ、“人”の価値を見直すタイミングです。

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川上絢一郎
専門家

川上絢一郎(軽貨物運送業)

ハウンドジャパン株式会社

総売上30億円の軽貨物運送会社が、独自に構築した「持たない経営」のノウハウ&人脈で、在庫・人材・コストを抑えて成功に導く。業界知識のない個人・新規参入の法人が続出し、各年商の2年目平均は1億円を達成。

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