「3280円カレー」が突きつける現実と、軽貨物業界が生き残るための視点

テーマ:時事トレンド 日本

~選ばれる価値とは何か?中小企業が進むべき“集中と選択”~



「ココイチのカレーが3280円になっていた」
この見出しを目にした時、あなたはどう感じたでしょうか?「高すぎる」「強気すぎる」「時代が変わった」。そのどれもが正解かもしれません。

この話題は、単なる外食チェーンの価格設定ではなく、現代の物価高・顧客心理・企業戦略の縮図です。
そしてこの変化は、我々軽貨物配送業を含む、すべての中小企業にとって他人事ではありません。

■ 薄利多売から厚利少売へ――「勝てる企業」だけが生き残る



「ホロ肉ドカンとガーリック&ペッパーカレー(3280円)」は、まさにココイチが進める「高付加価値路線」の象徴です。以前は“庶民的”なカレー店の代表格だったココイチが、意図的に「高くても来るお客様」に向けて舵を切りました。

背景にあるのは、原材料費の高騰、人件費の上昇、店舗維持コストの増加。これらは、私たち軽貨物業界も例外ではありません。

例えば、以下のような実例が横浜市内でも増えています。

  • 荷主企業からの配送単価が据え置きのまま、燃料費・保険料・車両整備費が上昇
  • 未経験ドライバー確保のための求人広告費が月額30万円を超える
  • 取引先が淘汰され、月の配送件数が突然30%減少


このような中で、「価格を維持して数をこなす」という戦略が破綻し始めているのです。

■ 価格競争ではなく「選ばれる価値」を設計せよ


今こそ、軽貨物業者自身も「付加価値の創出」を真剣に考えるべき時期です。

ココイチが示したのは、「値段を上げても、その価格に納得できる商品・体験があれば人は買う」という現実。これは軽貨物業界にも応用可能です。

例えば:

「時間帯別・温度管理付き」などのプレミアム配送プランの提供

「ただ運ぶだけ」では、いずれAIや大手に飲み込まれてしまいます。中小企業だからこそ、「顧客の声を拾える距離感」と「柔軟な対応力」を強みにしなければなりません。


■ 中小企業が目指すべき「選択と集中」


壱番屋(ココイチ)は、2025年2月期に営業利益を前年比+2.1億円に伸ばした一方で、客数は8カ月連続で前年割れ。しかし、彼らは「過去の客」を切り捨て、「未来の顧客」に焦点を絞りました。

これは私たちにも通じる話です。

  • 「安い仕事」ばかりを取って疲弊していないか?
  • 「いつか安定する」と信じて赤字案件を受け続けていないか?
  • 「この企業と長く付き合うべきか」を見直す時期ではないか?


軽貨物業界もまた、「選ばれる側」と「選ぶ側」の両方に立たなければなりません。

■ 最後に:配送は“最終接点”であり、“企業の顔”


配送ドライバーは、取引先の「商品を届ける最後の存在」であり、時に「ブランド体験の一部」となります。

一件一件の荷物を丁寧に扱い、心を込めて届ける。その積み重ねこそが、価格競争から抜け出す第一歩です。

物価高の時代に生き抜くには、「安いから使う」ではなく、「信頼できるから頼む」という関係性を構築すること。
それこそが、私たち軽貨物配送業者が目指すべき“新しい標準”なのではないでしょうか?

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川上絢一郎
専門家

川上絢一郎(軽貨物運送業)

ハウンドジャパン株式会社

総売上30億円の軽貨物運送会社が、独自に構築した「持たない経営」のノウハウ&人脈で、在庫・人材・コストを抑えて成功に導く。業界知識のない個人・新規参入の法人が続出し、各年商の2年目平均は1億円を達成。

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