ロボタクシー時代の到来と軽貨物配送業の未来──人を大切にする企業が生き残る理由

テーマ:法人向け軽貨物新規事業

近年、物流や交通インフラの世界において「自動運転技術」の進化は目覚ましく、社会の構造そのものを変えようとしています。

2025年4月、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで発表されたニュースは、その最前線を象徴するものでした。ドバイ道路交通局(RTA)は、中国IT大手・百度(バイドゥ)の傘下でロボタクシーを運行する「Apollo Go(蘿蔔快跑)」と基本合意書(MOU)を締結し、年内に50台の無人タクシーを導入、2026年には1000台規模へ拡大する計画を発表。同社の安全走行距離はすでに1億5000万キロを超え、完全無人運転の技術は実用段階に突入しています。

このような技術革新の波は、当然ながら私たち軽貨物配送業界にも大きなインパクトを与えます。
「いつかトラックドライバーはロボットに取って代わられるのではないか?」そんな不安の声も、現場では多く聞かれるようになってきました。

しかし、私は「すべてがAI・ロボットになる未来」は到来しないと確信しています。
なぜなら、物流の本質には「人の手」でなければ届けられない価値が、まだまだ数多く残されているからです。


国内の自動配送技術の現状



日本でも、ドバイに追随するかのように、自動運転やロボット配送の実証実験が各地で進行しています。

たとえばヤマト運輸や楽天は、自動配送ロボットやドローンによる実証実験を積極的に行っています。
2021年には、楽天と西友が共同で、自動走行ロボットによる生鮮食品の配送を実施。さらに、2022年からは東京・千代田区の公道での無人配送ロボットの試験運用が本格化しています。

また、国土交通省も2023年度から「レベル4自動運転(特定条件下での完全自動運転)」の実用化に向けて規制緩和を進めています。日本郵便も「ラストワンマイルの配送の効率化」を掲げ、自動運転車両による配達実験を長野県で行いました。

こうした取り組みが増える中で、「近い将来、人手がいらない物流が実現するのでは」と思われがちですが、現実にはクリアすべき課題が山積しています。

自動化が難しい「配送現場」のリアル



自動配送車やドローンには、まだまだ大きな制限があります。

天候や地形への対応力の限界


大雨や積雪、狭い道、坂道など、日本の住宅地や地方都市では、想定外の事態が頻繁に起きます。

高齢者や障害者対応などの人的サポート


荷物の手渡し、会話、配慮が必要なケースには、機械では代替できない“心”が必要です。

建物ごとの配送対応の多様さ


マンションのオートロック、エレベーターの操作、宅配ボックスの使い分け。これらの判断を即時に行うには、まだAIの壁は厚いと言わざるを得ません。

つまり、配送現場は想像以上に「臨機応変」が求められ、人間の判断力や気配り、柔軟さが必要な場面が圧倒的に多いのです。


「人ありき」の価値が残る軽貨物配送業



軽貨物配送の魅力の一つは「人と人の接点」です。単にモノを運ぶのではなく、そこには人間同士の信頼関係や気遣いが存在します。

例えば、お客様に「ありがとう、助かったよ」と直接声をかけていただける瞬間。その“感謝の交換”こそが、私たちがこの仕事を続ける大きなモチベーションであり、ロボットには絶対に実現できない体験です。

さらに、法人間取引(BtoB)の現場でも、「このドライバーなら安心して任せられる」という“人的信用”が、業務委託や継続契約を支える根幹となっています。


人を大切にする企業こそ、未来に生き残る


AIや自動化の進展を恐れる必要はありません。それらは、私たちの業務の「補助」や「効率化」にはなるものの、本質的な価値を置き換えるものではないのです。

むしろ、これからの時代に企業が生き残るためには、「人を大切にする姿勢」こそが最大の差別化要因になります。

  • ドライバーの労働環境を整える
  • 荷主とのコミュニケーションを丁寧に行う
  • 地域に密着したサービスを地道に継続する


このような“人中心の配送文化”を支え続ける企業だけが、どんな技術革新の時代にも適応し、顧客に選ばれ続けるのです。


最後に──人間の価値が消えない時代に


ドバイのように最先端技術を導入する国もあります。もちろん、将来的には一部の配送やタクシーサービスは無人化されていくでしょう。

しかし、それは「物流のすべてがロボットになる」ことを意味するわけではありません。むしろ、自動化が進むほど、“人間らしさ”の価値が際立つ時代が来るのです。

私たち軽貨物配送業者がすべきことは、「技術の進歩を受け入れながら、人が担うべき領域を再定義すること」。そして、「人間ならではの価値を提供し続けること」です。

これからの未来においても、“人にしかできない仕事”は確実に残り続けます。その領域を守り育てることで、私たちはAI時代でも必要とされる企業であり続けることができるのです。


【まとめ】

ドバイでロボタクシーが本格導入へ。物流や交通は急速に自動化へ向かっている。
日本国内でも自動配送の実証実験が進行中。ただし、現場ではまだまだ人の判断力が不可欠。
軽貨物配送は「人間の対応力」が要。人との信頼関係が価値を生む。
人を大切にする企業だけが、技術革新時代を生き抜ける。

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川上絢一郎
専門家

川上絢一郎(軽貨物運送業)

ハウンドジャパン株式会社

総売上30億円の軽貨物運送会社が、独自に構築した「持たない経営」のノウハウ&人脈で、在庫・人材・コストを抑えて成功に導く。業界知識のない個人・新規参入の法人が続出し、各年商の2年目平均は1億円を達成。

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