「若さの“弱点”を知れば、人材育成も経営も変わる」~令和の雇用と育成を考える視点~
2025年5月2日、フジテレビは「ハラスメント根絶宣言」を公表しました。発端は元タレントの性暴力問題ですが、これは単なる個人の問題ではなく、企業としての体質や組織文化の問題でもあります。同社は「ハラスメントを一切許容しない」と明言し、全社員に対し宣言書への署名を求めるという徹底した姿勢を見せました。
このニュースはメディア業界の改革として大きなインパクトを与えましたが、これは他人事ではありません。むしろ、私たち運送業界においても、極めて重要な示唆を含んでいます。
長らく放置されてきた「運送業界の古い体質」
運送業界には、かつて「長時間労働」「怒号が飛ぶ現場」「新人潰しの風習」など、昭和の働き方が色濃く残っていた時代がありました。ドライバーの労働環境や人間関係の悪化によって、人材が定着しない、事故が増える、心身を病んでしまう――そんな悪循環が業界全体に影を落としていたのです。
しかし今、その空気が確実に変わり始めています。背景には法規制の強化、IT化、そして「人が集まらない時代」への突入があります。つまり、「企業が人を守る姿勢を示さなければ、人が来ない・続かない」という、当たり前の現実が突きつけられたのです。
ハラスメントを「しない・させない・見過ごさない」体制づくり
フジテレビの宣言の中で注目すべきは、「しない」「させない」「見過ごさない」という三つの約束です。これはまさに、運送業界においても求められる姿勢です。
ドライバー間のパワハラや指導名目の過剰な叱責、さらには委託契約を盾にした不当な扱いなど、「見て見ぬふり」が蔓延する業界体質を変えるためには、経営側が明確に「許さない」という意思を示す必要があります。
企業のトップが「変える」と宣言し、管理職や現場責任者がそれを徹底し、全員が「見過ごさない」体制をつくる。そうでなければ、誰も安心して働ける職場にはなりません。
「人を守る企業」が選ばれる時代へ
私たちの会社でも、近年はハラスメント防止研修の実施や匿名通報制度の導入、クラウド契約システムによる透明性確保などに取り組んでいます。これらの改革を進める中で実感しているのは、働く人々が「人として尊重されている」と感じられる環境が、採用力にも定着率にも直結するということです。
従業員も業務委託者もパートナーも、すべてのステークホルダーが「安心して仕事に集中できる場所」を求めています。もはやこれは福利厚生ではなく、企業の“最低限の責任”として捉えられるべきなのです。
「人に優しい業界」こそ、次のスタンダード
運送業界は今、物流2024年問題や人手不足といった大きな転換点を迎えています。そこで求められるのは、単なるコスト削減でも業績向上でもありません。「人に優しい業界」であるという信頼と評価です。
フジテレビのような大手企業でさえ、聖域なく改革を進めている今こそ、中小運送会社や個人事業主が「古い体質」を脱却し、「働く人を守る」企業として一歩を踏み出すチャンスです。
安心して働ける環境こそが、業績向上の土台になります。そしてそれは、ハラスメントを許さない姿勢からしか始まりません。



