顧客は「神様」ではない時代へ──オリエンタルランドに学ぶ、カスタマーハラスメント対策と中小企業の備え
2023年に世間を揺るがしたビッグモーターの保険金不正請求問題。
その余波はいまだに色濃く残り、企業名は新しくなったものの、販売台数は不祥事発覚前の5割にとどまっています(2025年4月時点)。
これは、信頼の失墜が数字に直結することの生きた証拠です。
ビッグモーターがたどった道のりは、私たち中小企業にとっても他人事ではありません。
社員ひとりの過ちが、会社全体の評判や取引先との関係を一瞬で壊しかねない時代。今こそ企業は、「不祥事が起きない体質づくり」に本気で向き合うべきです。
なぜビッグモーターは「取り返しがつかない」と言われるのか?
ビッグモーターの不祥事は、単なる不正行為の発覚にとどまりませんでした。
- - 顧客の車に意図的に傷をつける
- - 組織内で物が言えない風土
- - インセンティブ重視で過剰な成果主義
など、構造的な問題が連鎖し、長年の経営姿勢が裏目に出た形です。
そして現在、新会社「WECARS」は伊藤忠の支援を受け、
- 組織風土改革(即一報制度の導入)
- 報酬制度の見直し(インセンティブ廃止)
- 自律型組織への転換
などを進めていますが、信頼回復には長い年月と多大なコストがかかっています。
中小企業にこそ求められる「人と組織のコンプライアンス教育」
大企業と違い、中小企業では
「1人の不祥事=会社の存続危機」になり得る現実があります。
では、私たちはどう備えるべきか?
以下に、実際の事例と照らし合わせながら、今すぐできる社内対策を提案します。
1. 【即時報告制度】を整備する
WECARSが導入した「即一報制度」は、不正の芽を摘む仕組み。
中小企業でも、たとえば以下のような運用が可能です。
- トラブルや違和感を感じたら、**即日報告できるフォーム**を社内チャットに設置
- 月1回のミーティングで「ヒヤリ・ハット事例」を共有
“言いにくい空気”が企業の最大のリスクです。まずは風通しを整えるところから始めましょう。
2. 【成果主義の暴走】を抑える制度設計
旧BMの問題の一因は「成果主義の暴走」でした。
「売れば給料アップ」だけでは、無理が生まれ、不正を助長する結果に。
顧客満足・仕事への姿勢・チーム貢献なども評価軸に入れ、社員の「長期的な成長」を支える報酬制度を構築することが、不正を生まない文化づくりに繋がります。
3. 【教育は“当たり前”から再構築する】
「そんなこと社会人なら常識でしょ」
この油断が命取りです。
新入社員・中堅社員・管理職、それぞれの階層に応じた
コンプライアンス研修**を年1回でも定期実施しましょう。
たとえば:
- SNS投稿による炎上リスクの事例
- 接待や贈答のライン引き
- 顧客との契約・請求時の注意点
これらは、毎年の社会情勢や法改正に応じてアップデートが必要です。
4. 【外部チェックの導入】も視野に
WECARSは監査部門の人員を増やし、全国の店舗を3回巡回するなど、ガバナンスを徹底しています。
中小企業では、たとえば:
- 顧問社労士や弁護士による年1回の業務監査
- 外部講師を招いたコンプライアンスセミナー
など、外部の視点を入れることで、盲点を防ぐことができます。
社会貢献も“姿勢”が問われる時代
社会から選ばれる企業であるためには、透明性・誠実性・教育投資が不可欠です。
まとめ:不祥事は「他人事」ではない
中小企業にこそ、組織風土を育てる「教育・制度・対話」が必要です。
- - 言いやすい職場づくり
- - インセンティブの健全化
- - コンプライアンス教育の常設
- - 外部の視点を積極的に活用
これらは、決して大企業だけの話ではありません。
小さな組織こそ柔軟に導入でき、変われる力を持っています。
あなたの会社は、社員が“声をあげられる組織”ですか?
不祥事を未然に防ぐ一歩は、まず「聞く姿勢」からです。



