【コラム】スキマバイト時代の落とし穴──人材の質が企業の信頼を左右する時代に、軽貨物業界が今こそやるべきこと
2025年4月18日、東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド(OLC)が、顧客による迷惑行為、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)に対する対応方針を発表しました。
「お客様第一主義」を貫いてきたディズニーリゾートでさえ、「すべての要求に応えることが誠意ではない」との判断を下したことは、私たち中小企業経営者にとっても非常に重要なメッセージを含んでいます。
本記事では、OLCの対応方針を紹介しつつ、中小企業がどのようにカスハラに向き合い、従業員を守る体制を構築すべきかを、具体的な取り組みと共に解説します。
ディズニーリゾートが明示した「カスハラ対応方針」
今回、OLCが公表したカスハラに該当する行為は以下の通りです。
- - 威圧的な言動
- - 長時間にわたる拘束
- - 土下座の強要
- - 従業員への盗撮
- - SNSでの誹謗中傷
これらの行為をカスハラと判断した場合は、入園拒否や警察への通報、法的措置なども辞さない姿勢を明確にしました。
また、今後はカスハラに関する社内研修や従業員教育も強化していくとしています。
これは、単なるエンタメ施設運営会社の問題ではありません。私たちのような中小企業においても、同様の事案は日常的に発生し得る問題です。
なぜ中小企業にもカスハラ対策が必要なのか?
中小企業は大手企業に比べて、従業員一人ひとりの業務負担が大きく、顧客との距離も近い分、理不尽な要求やクレーム対応を任される機会も多いのが現状です。
例えば以下のようなケースが、私たちが携わる軽貨物配送業やサービス業、個人事業サポート事業でも発生しています。
実例1:軽貨物ドライバーに対する「置き配トラブル」での怒鳴り
荷主からの依頼で「置き配指定」に従って配達したにもかかわらず、受取人から「なんで玄関に置いたんだ!」と怒鳴りつけられ、長時間対応を求められた事例。録音記録を残していたため、事実関係が証明できたものの、ドライバーの精神的負担は大きいものでした。
実例2:事務スタッフへの「土下座要求」
電話での対応中に「上司を出せ!」「謝罪しろ!」「土下座しろ!」といった威圧的要求。録音と通話記録、社内対応マニュアルに従い、冷静に対応したが、長時間拘束されたスタッフは退職を検討するまで追い詰められました。
このような事案に対し、「お客様だから我慢しろ」では、もはや従業員を守れません。従業員が安心して働ける職場づくりは、企業の最重要課題の一つです。
中小企業が今すぐできる「カスハラ対策」の具体策
オリエンタルランドのような大企業と同じレベルのリソースは難しくても、以下のような基本的な対応フレームは中小企業でも導入可能です。
1. カスハラ対応ポリシーの明文化と周知
「どのような行為がカスハラに該当するのか」「その場合はどう対応するのか」を明文化し、**就業規則や社員ハンドブックに明記**することで、社員の不安を軽減します。
2. 録音・記録の徹底
電話対応や現場での会話を**録音・記録することを推奨**し、必要に応じて証拠として活用できる体制を整えます。
3. 相談窓口・上長エスカレーションの明確化
現場スタッフだけで抱え込ませず、「これは対応が難しい」と感じた時にはすぐに**上司や管理者へエスカレーションできる体制**をつくることが重要です。
4. 弁護士との連携体制の構築
社外顧問弁護士と契約し、「法的対応が可能であること」を従業員に示すことで、心理的な安心感が生まれます。
5. 顧客向けの注意喚起も積極的に
ホームページや店頭に「従業員の安全を守るため、不当な要求には応じられません」といった表記を入れるだけでも、抑止力になります。
「従業員を守る姿勢」が企業の信頼を高める
カスハラに対して毅然とした姿勢を取ることは、決して「顧客軽視」ではありません。むしろ、正しい顧客との関係構築を目指す企業としての責任です。
「ここなら安心して働ける」「スタッフが大事にされている」と感じてもらえることで、離職防止や採用力の向上にもつながります。
オリエンタルランドのような企業が先陣を切ってカスハラと向き合う時代、私たち中小企業こそが「小さくても強い会社」を目指し、人を守る経営を実現していく必要があります。
まとめ
- - オリエンタルランドの「カスハラ対応方針」は、すべての事業者にとって参考になる。
- - 中小企業でもポリシー明文化・記録体制・法的連携などの対策は導入可能。
- - 従業員を守ることが、長期的な企業の信頼と成長につながる。
「お客様の声に耳を傾ける」と「理不尽な要求に屈する」はまったく別の話。
あなたの会社は、従業員を守る準備ができていますか?



