激動の貿易環境下で中小企業が生き残るために今すべき5つの行動指針

「トランプ関税」調査結果から読み解く、日本経済の次なる備え―

2025年4月、アメリカのトランプ大統領が「相互関税」政策の導入を表明し、日本を含む各国に対する最大25％の追加関税が打ち出されました。東京商工リサーチが発表した調査によると、日本企業の52.3％が「業績にマイナスの影響がある」と回答しており、そのうち製造業では64.4％が「マイナス」との認識を示しました。

このような状況下、特に影響を受けやすい中小企業にとって「事が起きてから動く」のではなく、「今から備える」姿勢が重要です。ここでは、5年先を見据えた中小企業とビジネスパーソンが今後取るべき5つの行動指針を具体的にご紹介します。

1. “多国依存”からの脱却とサプライチェーン再構築

関税強化の矢面に立たされているのが「輸出依存型の製造業」です。
これまで中国や米国に頼っていた調達・生産体制は、もはやリスク要因となりました。

具体的なアクション
- 調達先をアジア圏内の複数国へ分散化（いわゆる「チャイナ+1」）
- 地域密着型のローカルパートナーとの提携（例：ベトナムやインドネシア企業とのOEM）
- 国内生産の部分回帰も視野に、地元経済との共生戦略を構築

これは単なる「移転」ではなく、“外部変化に柔軟に対応できる体質作り”を意味します。
中小企業でもDX化による可視化と在庫最適化により、サプライチェーンの強靭化は実現可能です。

2. 価格競争から価値創造型ビジネスへの転換

関税が引き上げられると、当然ながら価格転嫁が難しくなり利益圧迫に繋がります。安さを売りにした事業モデルは限界を迎えつつあります。

具体的なアクション

- 売るもの」から「伝える価値」へ転換：価格以外の「選ばれる理由」を言語化・明文化
- 小ロット多品種対応や、サブスクリプション型へのシフト（例：製品＋メンテナンス契約）
- BtoCだけでなく、BtoB×体験型商品（例：OEM製品の試用・テスト提供）への展開

“値段”で勝負する時代から、“ブランド”で評価される時代への準備が必要です。

3. インフレ・為替リスクに備える「変動費管理」と内部留保戦

今回の調査では、為替影響を「円高方向に見直す」企業が5.3％と、多くが慎重な姿勢を示しています。
一方で金融機関からの借り入れを減らす傾向が強まり、キャッシュポジションの重要性が高まっています。

具体的なアクション

- 為替リスクに備えた「変動費型の価格設定」や定期的な原価見直し
- 外貨口座の保有や海外資産の一部分散によるリスクヘッジ
- 社内ベンチャー的なスモール投資による“分散型経営”への移行

固定費を下げて変動費比率を上げる設計が、今後の事業存続において大きな鍵を握ります。

4. “日本国内の労働力資源”を活かす副業・兼業人材の活用

設備投資の見送り、賃上げ見送りといった動きは、人材不足の加速と表裏一体です。こうした局面においては、正社員一辺倒ではなく、多様な人材との連携が重要になります。

具体的なアクション

- 副業・兼業人材の業務委託導入（地域プロフェッショナルとの協業）
- クラウドソーシングやスキルシェアリングプラットフォームの活用
- 育児・介護世代へのリモートワーク求人打ち出す

企業側が「固定人件費から変動人件費へ」と考えることで、雇用の多様化とリスク分散が可能になります。

5. 行政・金融機関・同業他社との連携強化と情報収集体制

アンケートでは65.1％が「まだ対応を決めていない」と答えた背景には、情報不足と判断遅れがあります。
中小企業こそ、外部の知見や支援制度を積極的に活用すべきです。

具体的なアクション

- 商工会・地方銀行・地元自治体との定期的な情報交換
- 業界団体や異業種交流会への参加、共同仕入れ・共同販路の検討
- 中小企業庁・JETRO・中小企業基盤整備機構の支援メニューの確認と活用

経営は“孤独”ですが、生き残るには“横のつながり”が命綱になる時代です。

まとめ：危機は「備えた企業」だけが乗り越えられる

トランプ政権による相互関税の動きは、今後も世界経済に不透明感を与え続けると考えられます。しかし、中小企業にとってこの危機は“変化を先取りするチャンス”でもあります。