コロナ以降の物流動向 軽貨物配送を活用するメリット
「人が足りない」「人がすぐ辞める」「良い人材が来ない」——。
これは、運送業界をはじめとした多くの中小企業にとって長年の悩みです。
中でも軽貨物業界は人手不足が慢性化し、採用コストは年々増加、それでも定着率は低いという悪循環に陥っています。
「人材(人財)」の定着に成功している企業には、ある共通の工夫があります。
今回紹介するのは新潟の旅館業での取り組みですが、その本質は業界を超えて、軽貨物を含むすべての中小企業に通ずるものでした。
(参照:1人3役の旅館、売上高は8倍 多彩な経験積ませ人材定着
「1人3役」「1人6役」が定着率を上げた?
新潟県のある古民家ホテルでは、76歳の女性従業員が朝食作り・民謡披露・料理教室の講師という3つの役割をこなしています。
系列のホテルでは若手スタッフがフロント・物販・SNS運用まで担当。「え、それってブラックなんじゃ…?」と思われたかもしれません。
しかし、彼女たちが長く働き続けている理由は明確です。
- 業務が多様で飽きがこない
- 自分の強みを活かせる機会がある
- 評価されるスキルが増え、他業界でも通用する人材に育つ
つまり「こき使う」のではなく、「成長させる」ための多能工化。
結果として、この企業はいまや売上が20年で8倍。
給与水準も業界平均を上回っています。
軽貨物業界にも導入できる「多能工化」
これは決して宿泊業界に限った話ではありません。たとえば軽貨物業界でも、下記のような「多能工化」は十分に可能です。
- ドライバー+SNS発信:現場のリアルを発信、求人にもつながる
- ドライバー+営業補助:荷主との軽い折衝や提案
- ドライバー+教育係:新人育成、横のつながり強化
単に「荷物を運ぶ」だけで終わる仕事ではなく、自分のスキルを活かし、将来の選択肢が広がる業務環境こそが、若手やシニア層の定着につながります。
「人がいない」時代、残るのは“育てる”企業
2025年、いよいよ「団塊の世代」が全員75歳に。就業者数は減り続け、労働市場では今後「人手不足」ではなく「人手不在」という新たなステージに突入します。
特に中小企業では「人がいないから雇えない」ではなく、「人を育てられないから辞めていく」ことが深刻な問題になりつつあります。
だからこそ重要なのは…
- 採用より育成:即戦力探しから脱却し、成長を支援
- 業務の多様化:単純作業に閉じず、やりがいを提供
- 環境の柔軟化:女性・シニア・障がい者など多様な人材が活躍できる場づくり
この3つを意識することで、企業としての持続性が大きく高まります。
成長したいのは会社か、人か。それとも両方か。
企業の成長を支えるのは、間違いなく“人”です。そして、その“人”が成長できる職場でなければ、企業もいずれ成長の限界を迎えます。
軽貨物業界においても、これからの主戦場は「荷物を運ぶ力」だけでなく、「人を育てる力」に移っていきます。
大企業にない柔軟性こそが、中小企業最大の武器です。
“人が辞めない会社”は、“人が育つ会社”。
この当たり前のことを、今こそ本気で考えるときです。
まとめ:軽貨物・中小企業の人材定着のために今すぐできること
- 多能工化で仕事に広がりを持たせる
- やりがい・成長機会を意識的に設計する
- 固定観念を捨てて多様性を受け入れる(シニア・女性・外国人も戦力)
- 「教える文化」を根付かせることで、人が人を育てる組織へ