コロナ以降の物流動向 軽貨物配送を活用するメリット
「働く男の味方」として知られるワークマン。軽貨物業界も勿論お世話になってます。
現場で働く人々の“戦闘服”として長年愛されてきたこの企業が、いま再び“原点回帰”の経営戦略を打ち出しています。
2025年3月、ワークマンは新ブランド「ZERO-STAGE」を発表し、同時に一世を風靡した「#ワークマン女子」の展開を休止。男性向けの新業態「ワークマンカラーズ」に経営資源を集中させる方針を明らかにしました。
ファッション業界が“多様性”と“トレンド性”を求める中、なぜワークマンは「男臭さ」へと再シフトしたのか?そしてこの戦略転換から、中小企業が勝ち抜くために何を学べるのか?今回はワークマンの変遷と企業戦略をもとに、ビジネスの本質を紐解きます。
ワークマンが歩んだ「逆・ユニクロ戦略」
元々は作業着専門店だったワークマン。2018年以降、機能性と低価格を両立させたカジュアルウェアで「ワークマンプラス」や「#ワークマン女子」を展開し、ファッション性も兼ね備えたブランドへと進化しました。その姿は“地方発・低価格衣料ブランド”として成長したユニクロと重なります。
しかし、ユニクロのような巨額の投資によるブランド刷新ではなく、ワークマンは「省力型ブランディング」で着実に顧客を獲得してきました。
SNSとインフルエンサーを活用し、広告費を抑えたローコストな成長モデル。それが今、あえて原点である「男性向け作業着市場」への回帰に舵を切ったのです。
なぜ“女子”を捨てて“男”に戻ったのか?
背景には、アパレル業界全体の構造変化があります。日本繊維産業連盟の調査によると、衣料品の市場規模は2015年の約9.4兆円から2023年には約8.1兆円へと縮小傾向にあります。一方で、ワークマンは2024年3月期の売上高で過去最高を更新。これは、“トレンド”ではなく“実用性”を重視した戦略が、消費者の節約志向と一致していることを示しています。
つまり、ワークマンは「何でもかんでも売る」ユニクロ式を捨て、「誰のために」「何を提供するのか」を徹底的に絞ったのです。これはマーケティングの原理原則でもある“選択と集中”を忠実に実行した戦略とも言えます。
「吉幾三モデル」に学ぶ、中小企業の勝ち筋
ワークマンが新たに掲げたのは、「吉幾三モデル」。これは、かつて同氏が歌ったワークマンCMの歌詞にあるように、「小さな町で、働く男たちに寄り添う」ビジネスモデルです。
土屋専務は「人口3万人前後の地方都市に400店舗を展開する」と明言。競合が少ないマーケットで、あえて“男臭い作業着”を売るというニッチ戦略は、まさに中小企業が取るべきポジション戦略の教科書です。
特に軽貨物業界や建設、物流、小売のような現場系ビジネスでは、「尖ったブランディング」「価格と品質のバランス」「地域密着」が最も効果的な勝ちパターンであり、それを地でいっているのが現在のワークマンです。
中小企業に今こそ必要な“ポジショニング”と“撤退の決断”
多くの中小企業が「誰に向けて何を提供するか」を曖昧にしがちです。「何でもできます」「誰でも歓迎します」という姿勢は、むしろ顧客を遠ざけてしまう要因になります。
ワークマンが「女子」を手放したように、時には“手放す勇気”が成長に繋がります。全ての層を狙うのではなく、勝てる市場に集中し、ブランドの個性を徹底的に打ち出すこと。それが限られたリソースで勝ち残るための鉄則です。
まとめ:ワークマンに学ぶ、未来志向のローカル戦略
大手と同じ土俵で戦わない
自社の“原点”を活かしたブランド設計
顧客を絞り、コストを抑えた効率経営
「撤退」も戦略のうちとする決断力
これらは、規模では劣る中小企業が取るべき“戦術”であり、ワークマンの逆転劇はその好例です。
今後の日本経済は確実に「選ばれる企業」しか生き残れないフェーズに入ります。だからこそ、「誰に、どんな価値を届けるか」を明確にし、自社ならではの強みを再定義することが不可欠です。
小さくても、強い。
それが今、中小企業に最も求められる経営戦略ではないでしょうか。