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「街のかかりつけ薬局」として、薬を届け地域の人たちを見守る配薬サービスを展開

かかりつけ薬局として地域のQOL向上に取り組むプロ

尾花圭太郎

尾花圭太郎 おばなけいたろう
尾花圭太郎 おばなけいたろう

#chapter1

健康相談などに乗り「薬局=薬をもらうところ」というイメージを払しょく

 日本では都市部に経済機能が集まる一極集中化が進み、地域格差が拡大。過疎化が進む地方では、医療をはじめとしたインフラサービスの偏在が懸念されています。

 「人口減少により病院や薬局が廃業になる地域もあり、残された住民が適切な医療ケアを受けにくくなっているところもあります。また加齢により外出が難しくなり、薬をもらいに行けないご高齢者も少なくありませんので、当方では早くから配薬サービスに力を入れてきました」

 そう話すのは、鹿児島県日置市内で「伊集院調剤薬局」を運営する「げんろく」の尾花圭太郎さん。自身も薬剤師として患者の自宅や介護施設へ赴き、薬を届けています。

 「私どもは、日々の食事の栄養バランスや漢方を用いた養生、花粉などのアレルギーや感染症対策、有害物質の誤飲・誤食による中毒への対処、禁煙など、相談も広く承っています。当店でしか買えない一般医薬品(OTC)や健康食品も取り扱い、自分に合うサプリメントやスキンケア用品を知りたい若い方のご来店もお待ちしています」

 待ち時間を減らすため、LINEでの処方箋受け付けもスタート。2022年にオープンした「くすりや げんろく 伊集院店」ではドライブスルー式の処方箋窓口を設けるなど、あらゆる世代にとって便利な取り組みを展開し「地域のかかりつけ薬局」を目指しています。

 「『薬局=薬をもらうところ』というイメージを払しょくするのが目標です。育児や介護の悩みにも耳を傾け、誰もが気軽に足を運べる店づくりを通じて、地域の皆さまが健やかに過ごせる毎日をサポートしていきたいですね」

#chapter2

それぞれの住環境、生活スタイル、家族構成を把握できるのが配薬サービス

 鹿児島県で生まれ、薬剤師を務める母の背中を見て育った尾花さん。薬学部を卒業後は大学病院に就職するも、生活者の近くに身を置きたいと考え大手ドラッグストアに転職。その後は複数の調剤薬局で経験を積み、地域に求められる薬局の在り方を学んできました。

 転機となったのは、当時まだ珍しかった在宅訪問を開始するに伴い、40代のALS(筋萎縮性側索硬化症)患者を担当したことでした。

 「店頭では5分程度のコミュニケーションしか取れないのに対し、訪問では住環境や生活スタイル、家族構成が分かり、信頼関係も深まります。患者さまとはお亡くなりになるまでお付き合いが続き、葬儀にも参列。ご家族と悲しみを共有し、厚い感謝の言葉をいただいたのが印象的でした」

 患者の療養以外にも、薬局へ付き添う家族の負担や介護施設に入所した後の薬の受け渡しなど、服薬を継続してもらうにはいくつもの課題があることに気付いた尾花さん。

 配薬サービスは「誰かがやらなければならない仕事」だと使命感を抱き、2020年に伊集院薬局の経営を引き継ぐ形でリニューアル。現在は60人以上のもとを定期的に訪れ、薬を手渡しています。

 「訪問すると心の距離も近くなり、患者さんも『みかんでも食べていって』と親戚のように歓迎してくださいます。ああ信頼してくれるな、と感じられる瞬間がうれしくて。配薬は一種の見守りに近いので患者さんの変化に気づきやすく、より有効な調剤を検討するきっかけにもなります」

#chapter3

医師と連携し往診も 患者の希望と医師の意向をすり合わせ、減薬にも貢献

 近隣のクリニックの医師と往診に出向き、一緒に処方薬を検討することもある尾花さん。患者・医師・薬剤師がそろう利点は多く、その一つが、本人と医師の意向を加味した調剤ができることだと言います。

 「例えば、患者さんから副作用や飲みにくさを理由に薬の見直しを求められても、一般的には処方箋が出ている以上は受け入れられません。医師が患者さんの健康を守るために意図を持って指示したものですから当然です。しかし、医師・薬剤師が同席する往診では負担の少ない薬や薬剤の形状、飲み方の聞き取りができ、患者さんの意に沿う処方がかなう可能性があります。じかに希望のすり合わせができるのは大きなメリットです」

 二つ目は服薬状況を確認し、過度な処方を防げること。

 「薬の量が多くて管理が大変という声もあります。実際、自宅に伺うと飲み忘れた薬が大量に余っているのを目にし、医師と相談のうえ他科や他院からもらっている薬との相性や重複も加味して減薬を進める場合もあります。患者さんやご家族は服薬の負担が減り、国にとっても過剰な投薬を防げれば医療費抑制が図れます」

 現在、尾花さんのもとでは3店舗目となる薬局の立ち上げを計画中。在宅訪問専門の店舗という初の試みに挑みます。

 「今は元気な方でも免許返納で移動手段がなくなることもありますから、配薬サービスを定着させることは未来の備えだと思います。これからも地域に根を下ろし、生活に踏み込んだ支援でQOL(生活の質)の向上に貢献したいですね」

(取材年月:2024年12月)

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専門家プロフィール

尾花圭太郎

かかりつけ薬局として地域のQOL向上に取り組むプロ

尾花圭太郎プロ

薬剤師

合同会社げんろく

訪問配薬やLINE処方箋、ドライブスルー窓口など多様な取り組みを展開。健康相談サービスを提供するなど、地域のQOL向上にも注力。近年は医師と連携し往診を行い、過剰投薬の防止や服薬指導にも貢献している。

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