高い技術力で世界に一つだけの立体造形を創るプロ
山崎誠喜
Mybestpro Interview
高い技術力で世界に一つだけの立体造形を創るプロ
山崎誠喜
#chapter1
ササキプラスチックの山崎誠喜さんは「オリジナルフィギュアのプロ」と呼べる存在です。フィギュアづくりを社業としている会社は、岩手県はもとより、全国でも珍しい存在です。それほどの希少価値を持つ会社が、なぜ岩手県大槌町にあるのか、そこから紐解きます。
1991年に創業したササキプラスチックは、メーカーから依頼を受けて、プラスチックなどの加工を専門にしている会社です。現社長である佐々木弘樹さんは、創業前東京に本社を置くメーカーで働いていました。あるとき、その会社が大槌町へ工場を建てる計画が上がりました。その時、周りからのアドバイスもあり、佐々木さんは独立を決意したのです。
「創業当初は、ほとんどが東京のメーカーから依頼される樹脂製の試作品を作っていました。当時はバブルが終わった頃でしたが、自動車、家電、医療機器など、勢いのある会社ばかりでした」
試作品は、販売前の段階で製作されるもので、設計図面から細かく改良を重ねて作ります。大きさ、重さ、手に持った感触などを実感できるように、この試作品を使って、商品化に向けて試行錯誤するのです。実際の製品を作る際は金型を作りますが、試作段階でこの方法をとると時間も、コストもかかります。だから、樹脂製の試作品が重宝されていたのです。
ササキプラスチックは、開発意欲も強く、順調に成長を遂げていましたが、リーマンショックを機に仕事が激減してしまいました。さらに、3Dプリンターの普及により、職人の技術を必要としなくても、手軽に試作品を作ることができる時代になったのです。
会社の将来を考えると、新しい柱となる事業を考えなければならない時期に差し掛かっていたのです。そんな折、「オリジナルフィギュアのプロ」と呼べる存在の山崎誠喜さんが、ササキプラスチックの扉を叩きました。入社試験を受けた時の山崎さんは、55歳でした。
#chapter2
ササキプラスチックは、2016年の希望郷いわて国体で聖火ランナーが持つ炬火トーチ製作を担当するなど、技術には定評がありました。佐々木社長は、その技術を生かした自社製品に力を入れていこうと思ったものの、それを具体的に推進していく人材が社内に見当たりませんでした。
そんな折、入社面接に現れたのが山崎誠喜さんです。山崎さんは事務職の経験があったものの、「ものづくり」の仕事は未経験でした。しかし、子どもの頃から手先が器用で、自分の特技を生かした職人仕事に憧れていたのです。そして、偶然見つけたササキプラスチックの求人を見て興奮を覚えました。面接では、その熱意を示すために、趣味で作っていた魚のブローチのフィギュアを持参しました。
佐々木社長は、その日のことを、ありありと覚えています。
「山崎さんは年齢もいっていたので、お断りしようと思っていました。ところが、作品を見せてもらい、これは本当に素晴らしいと思いました。そこで、その日のうちに採用を決めました」
山崎さんは、「今思えば、フィギュア作りを趣味でやっていた頃は、仕事からの『逃げ場所』にしていた気がします。今は仕事になり、責任感が生まれましたが、何よりも楽しくなりました。今では家に帰っても、仕事のことばかりを考えています」
55歳で入社した山崎さんは、佐々木社長との運命的な出会いにより、ササキプラスチックの新規事業に二人三脚で動き始めました。それが、オリジナルフィギュアの製作事業です。
しかし、立ち上げた当初はまだ知られていないため、岩手県内のイベントに出展して宣伝しました。釜石大観音で開催されたイベントに出展したときは、大観音に因んだフィギュアを展示するなど、イベントの特製に合わせて創ったオリジナルフィギュアの販売を地道に続けてきました。こうして、ササキプラスチックが手がける商品は、岩手県に因んだフィギュアが多くなりました。
この活動が功を奏し、「こういうものは、作れますか?」という問い合わせが徐々に増えてきました。フィギュアのモデリングを担当する山崎さんの仕事が忙しくなってきました。
#chapter3
オリジナルフィギュアは、地方自治体、学校からの依頼が多いそうです。地方自治体からは、関係者へ数多く配布する記念品。学校からは、教育用に使う海洋生物の精密さを再現する「一点もの」などです。時には、加工が難しい注文を受けることもありますが、山崎さんはそういう難題に挑むことが楽しいと言います。ササキプラスチックは、「できませんはございません!」をモットーにしています。どんなことでも依頼してください!という強い意志と自信が伝わるスローガンです。
さらに、樹脂製のオリジナルフィギュアを短い期間で納品することを得意としています。造形の製作は、極端に難しいオーダーでなければ、4~5日で完成します。また、3Dスキャンをかければ、量産体制に入るタイミングも早められます。企画・デザイン、ペインティングまでを一貫して、誠意を込めて作るササキプラスチックだからこそできることで、このスピード感が大きな魅力となっています。
最近は樹脂だけでなく、木材の加工も手掛けるようになっています。お店の看板などを作っていくうちに、多くの人の眼に触れる機会が多くなり、会社のことを知ってもらえるようになりました。
「製造業は、一見どんな事業をしているかわかりづらいです。『ササキプラスチック』と聞いても、どんな仕事をしているのか想像がつかないですよね。それが、イベントで展示したオリジナル製品を見た学生が、入社を志願するようになったのです」ササキプラスチックの佐々木社長は、もっとオリジナルフィギュアを発信して、「三陸って、おもしろそうだな」という空気を作り、故郷大槌町の魅力アップにつなげたいと言います。
ササキプラスチックは、企業のノベルティだけでなく、個人からの依頼も受け付けています。「自分の趣味をカタチにしたい」「世界でたった一つのオリジナルフィギュアでお祝いしたい」など、話してみてください。
山崎さんは、こう答えます。「できませんはございません!」
(取材年月:2020年2月)
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Profile
高い技術力で世界に一つだけの立体造形を創るプロ
山崎誠喜プロ
オリジナルフィギュア製作
株式会社ササキプラスチック
立体造形を専門とし、創り出す商品のほとんどはオリジナル。地元岩手県に因んだものへ加工するのも得意とします。温かみのある仕上げが、高い評価を集め、静かなヒット商品となっています。
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