500年の歴史ある伝統工芸技術を未来につなぐプロ
山田晃輔
Mybestpro Interview
500年の歴史ある伝統工芸技術を未来につなぐプロ
山田晃輔
#chapter1
「当方では、加賀百万石の文化の中で育まれた金沢仏壇の製造と販売を行い、寺院用や各宗派に合わせた仏壇や仏具を手掛けております」
そう話すのは、慶応年間(1865〜1868年)に創業した「山田仏具店」の専務取締役・山田晃輔さん。150年余りの長い年月の中で培われた技術力で、仏壇の新調や修理、洗濯など、幅広い業務に対応しています。
「昔ながらの荘厳な仏壇だけでなく、昨今の住宅に合わせ、現代的で洗練されたデザインも扱っております。修復や洗いについては、お仏壇を丁寧に分解し、細部に至るまで手当てを施し、当時の輝きを取り戻します」
近年は、リサイズしてほしいといった声もあるそうです。「例えば、年配の方が、今使っているお仏壇を子どもに譲りたいので、コンパクトに作り直してほしいといったご相談です。かつての日本家屋には大きな仏壇を設置する仏間がありましたが、近年ではマンションが増え、専用スペースないことがほとんどです。リビングなどの一角に置くために、サイズダウンを希望する方が少なくありません」
また、お仏壇のリメイクをご検討される方もおられ、「お手持ちの仏壇の装飾をご要望に応じて置物や、小物入れなどのインテリア用品に作り替える事にも対応致しております。先祖代々、大切に受け継いでこられたお仏壇を、生活スタイルに合わせた形に変えて、次代に引き継ぐお手伝いをさせていただきたいと考えております」
他にも、美しい蒔絵のボールペンや自然の木目を生かす拭き漆の名刺入れを製作するなど、漆工芸の技法を用いた工芸品づくりにも力を入れています。
#chapter2
1976年に、経済産業大臣により国の伝統的工芸品として指定された金沢仏壇。その歴史は古く、15世紀に蓮如上人の北陸巡化により浄土真宗の教えが広がり、御講(読経、説教)の場が設けられると共に仏壇が求められるようになり、優秀な職人が多く育ちました。
「金沢仏壇の主な特徴として、磨き蒔絵が挙げられます。仏壇製作の工程は壮麗な美しさを実現するために細分化されており、少なくとも7人の職人が必要です。分業にすることで各工程の精度を高めてきたのです」と山田さん。
「木地師」「宮殿師」「塗師」「蒔絵師」「金具師」「木地彫師」「箔彫師」の7職で、それぞれの緻密な手仕事によって仏壇が形作られると言います。
「当社は、塗りと蒔絵工程を中心としておりますが、各職人との強い連携により、ご要望に応じた質の高い商品をお届けできると自負しております」
脈々と息づく技を体得し、現代に伝える山田さんは、幼い頃から、家業を継ぐことを漠然と認識していたそうです。
「特に家族から強制されたわけでもなく、自分が継ぐことはなんとなく子どもの時から感じていました。私も父も漆にかぶれたことがありませんので、生まれながらに漆塗り職人としての適性は持っていたのかもしれませんね」と笑顔を見せる山田さん。金沢仏壇漆塗部門の伝統工芸士に認定されていることからも実績の高さがうかがえます。
#chapter3
山田仏具店の強みは、腕のある職人と共同していることに加え、自社工場を持ち、さまざまな顧客からの要望を一貫して請け負えることです。
「個人のお客さまだけでなく、県内外の寺院や様々な事業者さまからもご依頼をいただきます。内容は仏壇づくりにとどまりません。寺院の本堂を施工する内陣工事や、お祭りに使う山車(だし)の修復などの大規模なご要望にも応じています」と山田さん。次代に向けて、さらに間口を広げていきたいと力を込めます。
「どんな注文がきても『できない』とは言わず、『やってみよう』という気持ちで取り組むようにしています。お客さまには喜んでいただきたいですから」と熱く語ります。
「今後はインターネットも活用して、より広く多くの方に向けて金沢仏壇の技術を発信したいと考えています」と話す山田さん。新しい展開をすると同時に、受け継いできた技術を未来につなぐことも考えるようになりました。
「金沢仏壇」の歴史と技法は先人が築いてきた貴重な財産なので大切につないでいきたい。
山田さんは「金沢仏壇」という伝統工芸を、未来に適した新しい形で残す道を常に探求しているのです。
(取材年月:2022年5月)
リンクをコピーしました
Profile
500年の歴史ある伝統工芸技術を未来につなぐプロ
山田晃輔プロ
仏具店
有限会社山田仏具店
室町時代から引き継がれてきた「金沢仏壇」の製造過程を最初から完成まで網羅できる職人ネットワークと、自社工場を持つ仏具店。オーダーメイドの仏壇製造から大規模な寺院の内陣工事まで幅広く対応できる老舗企業。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
プロの執筆コラム
掲載専門家について
マイベストプロ石川に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、または北陸放送が取材しています。[→審査基準]