つらい痛みを軽減し、心身の健康を導く鍼灸のプロ中田和宏

つらい痛みを軽減し、心身の健康を導く鍼灸のプロ

中田和宏

豊富な経験と知識で、さまざまな症状に鍼灸を役立たせる

　「腰や肩がつらいけれど我慢するしかない」とやり過ごしていませんか。2021年に開業18年を迎え、金沢市で長く親しまれている「トキの森鍼灸院」。院長の中田和宏さんは、足腰の痛みや神経痛、肩こりなど慢性的な痛みに対する鍼灸ケアを数多く行っています。

　開業以来のべ6000人の施術を経験し、向き合ってきた主な悩みは、腰の痛みなどのほか、めまいや耳鳴り、目の疲れ、ストレスによる疲労感、気分の落ち込みなど多岐にわたります。「体と心の不調に対して、多くのケースで鍼灸が役に立ちます。体がラクになると、心にも良い変化をもたらします」

　はり・きゅうを行うツボ（経穴）を決めるには、細やかに話を聞いて問題の原因を探り、手を当てて全身の状態を知ることが重要です。体を触り「痛いのはここ？」と声をかけるだけで、表情が明るくなる人もいるとか。肩こりでもほかに調子の悪いところがあったり、ぎっくり腰の引き金が以前からの生活習慣だったりすることもよくあるとか。

　体のメンテナンスのため、月1回など定期的に通う人もいます。「はり・きゅうで体に適切な刺激を与えることで本来の機能を取り戻し、免疫力アップなどが期待できます。健康的な体づくりの基本である運動・食事・睡眠に、鍼灸の優しい刺激を加えた4つの要素を意識することを提案しています」

　また不妊の悩みにも対応。「女性の体のリズムを考慮しながら、冷えなどをやわらげ、妊娠しやすい体づくりを目指します。産婦人科の不妊治療と併用して当院で鍼灸を受け、子どもを授かった方が複数おられます」

東洋医学の研究機関を経て、地域で一人一人に寄り添う

　父から手に職をつけることを勧められ、当時、日本で先がけて開設された鍼灸の専門科を持つ大学で鍼灸師を志した中田さん。「それまで知らなかった東洋医学や臨床医学などを学ぶことが楽しかったです」

　人体を自然の一部ととらえる東洋医学と、科学的根拠に基づいた西洋医学との違いに驚くことも。「例えば、寒い時期は体温が正常でも足先が冷えると腰が痛くなる、雨が降るとひざがこわばるなど、東洋医学の生活と気象に即した考え方に興味がわきました」

　大学の臨床実習で印象深かったのは、初めて施術を行った相手から「ラクになりました。ありがとうございました」と言われたことだそう。「お礼を言ってもらえる仕事なんだと胸を打たれました。痛みの訴えを理論立てて分析し、原因を突き止めていく過程に充実感を覚えるようになりました」

　卒業後は、漢方・鍼灸など東洋医学の臨床研究を行う機関で16年間勤務。附属の鍼灸院での施術のほか、関連病院で医師と連携し、入院患者の鍼灸ケアも行いました。

　勤務時代、鍼灸に造詣が深い内科・漢方医から大きな影響を受けました。「『施術を行う相手を家族と思いなさい』との教えが心に残っています。『何が何でも良くする！』という強い気持ちで最善を尽くします。また、『特定の分野や特殊な技術を極めるスペシャリストより、広い知識と経験をもとに臨床にあたるジェネラリストであれ』とも教わりました」

　一人一人に、丁寧に寄り添うため地域の鍼灸院として独立しました。

日本人に合わせて発展してきた伝統技術を広く知ってほしい

　「はりは痛そう、お灸は熱そう」と先入観を抱く人も多いでしょう。鍼灸を受ける人が減りつつある現状に、中田さんは危機感を募らせます。「特に若い方の、仕事・家事での疲れや不快な痛み、ストレスによる体調不良など、体に異常が見つからないようなつらい悩みに鍼灸が役立ちます。気持ちよくコリをほぐし、緊張から解放します」。はりで痛みを感じることはほとんどなく、慣れると途中で眠ってしまう人も。施術後は「体が軽くなった」との声が寄せられるとか。

　伝統的な鍼灸の良さを広く知ってほしいと話す中田さん。「鍼灸療法は、6世紀頃アジア大陸から伝わったと言われています。中国や韓国では国民医療として認知されており、日本では、細いはりや小さなお灸など日本人に合わせて独自の発展を遂げました。家庭で使われていた時代もあるので、身近に感じてほしいですね」

　業界全体の底上げを目指し、はり師・きゅう師に向けた研修会などの講師も務めています。

　中田さんのもとに通う高齢者は、長年にわたる常連がほとんどとか。「グラウンド・ゴルフでボールが打てた」「しゃがんで畑仕事ができた」など、年のせいとあきらめていたことができたと報告が届くことも。「よくなった成果を見せてくれることが、一番うれしい瞬間です」と中田さん。

　鍼灸を活用すれば、健康寿命を延ばすことにつながると力を込める中田さん。つらい痛みなどをそのままにせず、笑顔で毎日を過ごすためにまずは相談してみませんか。

（取材年月：2021年9月）

体と心の不調に悩む人を鍼灸で笑顔に

豊富な経験と知識で、さまざまな症状に鍼灸を役立たせる

東洋医学の研究機関を経て、地域で一人一人に寄り添う

日本人に合わせて発展してきた伝統技術を広く知ってほしい

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