足と靴に悩む人が“履きたい”と思える靴を作るプロ
富澤文雄
Mybestpro Interview
足と靴に悩む人が“履きたい”と思える靴を作るプロ
富澤文雄
#chapter1
「交通事故の後遺症で足に不全麻痺があり、履きたい靴が履けなくなった妻。妻が履きたい靴、安心して履ける靴を作りたい。それが靴職人としての一歩でした」
靴工房「株式会社マルエ」代表の富澤文雄さんは、奥様と同じように後遺症で足が不自由な人や、リウマチ、極度な外反母趾、ケガ、疾患に悩む人のために一足一足手作りの靴を製作。これまでに延べ3000人以上の顧客にオーダーシューズを提供してきました。富澤さんは、オーダーシューズの製作を続けるうちに、全ての顧客に共通の悩みがあることに気付いたと話します。「それは、“履ける靴は売っているけれども、履きたい靴は1つも売っていない”というものでした」
もっと多くの人に“本当に履きたいと思える”靴を届けたいと考えた富澤さんは、奥様と共に一人ひとりの悩みに耳を傾けます。「足に疾患があるためお洒落な靴を履けない方も少なくありません。でも、どんな方も入学式や卒業式、お祝い事など特別な“時”には、お洒落をしたいのではないでしょうか」。富澤さんは、そのような願いに応えるため足と靴に悩みを抱える人が“履きたい”と思える靴のシリーズ化を計画しています。
#chapter2
靴は、足に合わないものだと思い込んでいる人が多いと話す富澤さん。「自分の足のサイズを誤解されている方が多いです。自称23.5cmのお客さまの足を測ってみると22cmだったことも。その原因は、『きつくない、痛くない』という観点で靴を選び、足に合わない大きめの靴を選んでいることにあります」。足に合わないゆるい靴ばかり履いているため、本当の靴の履き心地を知らない人が多いと嘆く富澤さん。
「歩くとすぐに疲れてしまう人は、体力面に問題があるのではなく、靴が合わないために体の機能が出し切れていないのかもしれません。そんな方に、ベストサイズの靴を提供して、歩いても疲れない感覚を覚えていただきたいですね。履き心地の良さがわかれば、次からはそれを基準にして、市販されている靴を選べるようになりますよ」
ハイヒールを履いた時の歩き辛さは、女性ならば体験したことがあるはず。富澤さんはその原因についても説明してくれました。「歩き辛いのは大きめのハイヒールを履いているから。かかとが浮いて自然に前傾姿勢になり、歩く姿も不自然になる。足に合ったハイヒールを履けば颯爽と歩けるようになりますよ。合う靴を見つける第一歩は、自分の足のサイズを把握することです」合わない靴を履き続けると足を傷めるだけでなく、外反母趾や巻爪の原因になることもあると注意を促します。「そのような弊害を予防するためにも、ぜひ靴の知識を増やし、足に合った靴を選べるようになってほしいです」
#chapter3
富澤さんは、家業の靴メーカーに21歳で入社。商品の企画や開発、サンプル作成、工場でのものづくりなどに携わってきました。ベテラン靴職人の元で靴の作り方を学んだ後、2000年に顧客対応型のネット通販を開始。オリジナルブランドを立ち上げ、靴のカラーオーダーを始めたところ大きな反響があったと振り返ります。
オリジナルの靴を求める顧客が素材を手に取って確認できる環境を提供したいと考えた富澤さんは、2005年にオーダーメイド靴工房「株式会社マルエ」を開設。以来、年間約400足のオーダーメイド靴を提供し続けています。「後遺症のある妻に、無理をしないで歩けるお洒落な靴をプレゼントしたことが私の原点。一定の規格に基づいた靴を量産するのではなく、一人一人の足に合わせた靴を作りたいのです」
靴の先進国ドイツで研修を重ねるなど、富澤さんの靴への探求心は留まることがありません。「ヨーロッパは靴の歴史が長いので学べることが多い」と目を輝かせます。「体重を支える靴は、時には人の命を左右することもある。これからも足の運動機能や構造についての勉強を積み重ね、お客さまの悩みと向き合い、安心して履いていただける靴を提供していきたいですね」
(取材年月:2017年3月)
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Profile
足と靴に悩む人が“履きたい”と思える靴を作るプロ
富澤文雄プロ
靴職人
株式会社マルエ
足と目に障害がある妻をリアル介助中。足に合う靴がない・オリジナルの靴が欲しい・痛くて既成靴が履けないなど、さまざまな靴と足の困り事に対応。1人1人とじっくりと向き合い、個々の悩みを改善します。
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