樹木の保全・診断・治療を行う樹木医資格を持つ庭づくりのプロ
髙橋照夫
Mybestpro Interview
樹木の保全・診断・治療を行う樹木医資格を持つ庭づくりのプロ
髙橋照夫
#chapter1
株式会社セキショー代表の髙橋照夫さんは樹木医(tree doctors)です。読んで字の如く樹のお医者さんです。あまり聞き慣れない言葉かも知れませんが、樹木医は天然記念物のような巨樹・名木・文化財樹木から街路樹や庭木などの身近な樹木まで、傷んだり病気になった樹木の診断と樹勢回復、落枝や倒木等による人的・物的被害の抑制、さらには樹病の予防や後継樹の保護育成などに携わる専門家です。
「造園会社で樹木医がいるのは全体の数パーセントでしょうか。その資格を発揮しているところは少ないようです。知識も重要ですが、何よりも造園工事は現場での技術と経験がものを言います」と髙橋さんは淡々とご自身の仕事について話してくれました。
「最近では、個人が庭を持つことが少なくなってきました。家を新築しても庭を造らない方が多いです。とは言っても、当社の業務内容は庭の管理がメインで、剪定・冬囲い・木の移植・石組、そして庭づくりなどです。お客さまも、個人から地方自治体へと移り変わってきました」と最近の会社の業務傾向などを説明してくれました。
「和風洋風問わず庭造りにつきものなのが木の新植・移植です。一本一本にさまざまな思い出や記念があってお客さまが大切にしている木です。その木を移植する時には必ず根を切らなければなりません。現場によってはその仕事はとても難しい対応を迫れられることがあります。私たち作業する者にとっては枯らすことができないという責任があります。木にとってはいきなり根を切られ、土を落とされ厳しい環境に置かれるという最悪の事態になるということです。そこで、リスクを出来るだけ減らし、新しいひげ根をなるべくたくさん出させ、一日でも早く元通りに回復させることが一番大事なことです。そのための努力を惜しまず、木を植えた後が一番大事だということを常に意識して庭造りに取り組んでいます」と、髙橋さんの話を聞いて、樹が生き物であることをあらためて感じました。
#chapter2
髙橋さんが造園の仕事を始めたのは30代になってからです。若い頃は、車の整備・保険のセールス・スーパーの店長とさまざまな職業に就きました。スーパーに勤めていた当時、そのスーパーの社長が造園業も兼業していたことから造園会社に転職。営業や総務の仕事を経て、社命で造園工事の現場に出ることに。以来、現場一筋。生活のために始めた造園の仕事でしたが、「他の人と同じではダメだ、そのうちやっている仕事が手詰まりになる」と、1級造園施工管理技士、1級造園技能士、そして樹木医の資格を取得。「現場を熟知していることが他社との差別化につながる重要なポイントになる」と髙橋さんは語ります。
最近は市区町村などからの委託事業が多くなり、直近では平岸の大規模庭園の樹齢200年超の天神藤といわれる藤の管理や、新川の桜並木の調査事業などを行っています。新川の河川敷きには724本もの桜の木が植えられていますが、その桜を一本一本丁寧に見て回ります。新川の桜の中にはこぶ病にかかっている木があり、その病気が進行すると花、葉がつかずに枯れてしまうことになります。やっかいな事にこぶ病に効く薬はありません。春に満開の桜を楽しみにしている市民のためにも何とか助けたいと思うのですが、維持管理していくためには費用が掛かることでもあります。ここに限らず札幌の街路樹が抱えている問題は深刻ですね」と、髙橋さんは苦渋の表情を見せます。
#chapter3
どの企業も事業承継に頭を悩ましている昨今です。まして造園業に興味のある若者は少なく、造園業者の後継者づくりにも難しいものがあります。「若い人はさほど草木に興味がないように思います。造園業者は4月から11月いっぱいまで、花が咲き緑の多い時期が繁忙期になります。外での作業ですから暑い日もあれば雨の日もあり、作業環境には厳しいものがあります。先ほどもお話ししましたが、最近では新規で庭を造る方はほとんどいません。寺院や病院などが代々守ってきた庭園の管理や公共施設にある庭園、緑地、運動施設、街路樹の管理、これらの案件は入札になることが多いのですが、今はそういった緑の維持管理の仕事が非常に多く、これからも増えていくかと思います」と、現状を見つめつつ未来についても語ってくれました。
「一年365日、会社のこと、仕事のことを考えて気が休まることがない“仕事人間”ですね。還暦も過ぎたのでゆっくりしたい気持ちもありますが、幸い弊社には有望な若手社員がおりますので、彼らを育てていくことが社長としてのわたしの使命だと思っています」
「造園業は『樹木の命をあずかる仕事』で、人も木も愛情を持って育てることが大切だと思っています。もうしばらくは会社経営に全力ということでしょうか」と柔和な表情で語る髙橋さん。まだまだ造園の仕事、そして人を育てることから解放されそうにありません。
(取材年月:2020年3月)
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Profile
樹木の保全・診断・治療を行う樹木医資格を持つ庭づくりのプロ
髙橋照夫プロ
造園業
株式会社セキショー
植木・庭木の健康状態を庭全体の環境を調査・診断し、病害虫の駆除や土壌改良などの各種対策・治療を行い、植木・庭木の樹勢の維持回復を行います。
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