虐待や困窮から子どもの未来を守る自立支援のプロ
村岡篤子
Mybestpro Interview
虐待や困窮から子どもの未来を守る自立支援のプロ
村岡篤子
#chapter1
「傷ついた子どもたちが心身を癒やし、明るい笑顔で未来へ一歩踏み出せるようにサポートします」と話すのは、「イメル」代表の村岡篤子さん。北海道旭川市で義務教育を終えた児童を対象に自立援助ホームを四つ運営し、子どもや保護者からの電話相談にも応じています。
「虐待やネグレクト(養育放棄)、貧困などにより、家庭で安心して暮らせない15歳以上の若者に衣食住を提供しています。掃除や料理、お金の使い方といった生活スキルやあいさつなどの礼儀作法を学び、自立に必要な力を身につけることを目指しています」
中には親から片付けなどを教わらず、散らかった部屋で育ち、掃除という概念自体がない場合も。食事もぱんやおにぎり一つで済ませ、家庭でおかずをほとんど食べたことがなく、ホームで野菜炒めを食卓に出すと「これは何?」と驚かれたこともあるとか。
「誕生日やクリスマスにケーキを囲んで祝ったことも、お正月にお年玉をもらったこともない子がほとんどです。将来、幸せな家庭を築き、自分の子どもにしてあげられるように、『普通の経験』を通じて自分を取り戻す時間を大事にしています」
子どもは暴力を受けても親が好きで、自分が置かれた環境が当たり前だと思い、殴られる様子を見た友人に虐待だと教えられて初めて気づくケースも。親自身も社会から孤立し、しつけだと思い込んでいる場合が少なくありません。
「手を差し伸べる場所があることを、一人でも多くの方に知っていただくことが願いです。自らを価値ある存在として認める自己肯定感も育み、通学や就労を後押ししたいですね」
#chapter2
留萌市で生まれた村岡さん。子どもの生き方を認めてくれる親のもとでのびのびと育ち、札幌市内の短大を卒業後に結婚し、夫の転勤で旭川へ移住しました。
「わが子が通う小学校の勉強会がきっかけで、虐待や不登校の実態を知りました。子どもの居場所を作りたい一心で企業に協力を求めましたが、自分事と受け止めてもらえず、行政には財政難で支援は難しいと断られました」
2006年、市民団体「子どもの権利条約旭川市民会議」を発足して代表に就任。推薦を受けて2007年に旭川市議会議員となり1期務めましたが、公的機関には届かない悩みをすくい上げるため、2016年に子ども相談室「きらきら星」と子どもの居場所「マイライト」を開設しました。
「虐待やいじめなどに苦しむ子どもから、逃げたい、助けてと悲痛な声が寄せられ、自立援助ホームを開く決意をしました。現在は、女子棟の『ぽっけ(温かい)』と『ラム(心)』、男子棟の『トム(光)』と『イコロ(宝物)』を展開しています」
旭川にゆかりの深いアイヌの言葉を用い、法人名には「明るいきらめき」を表す「イメル」を命名。地域に根差して活動し、光明を投じています。
「結婚や子育てを怖がっていた子が家庭を持ち、2人の子どもを連れて里帰りのように遊びに来てくれたり、入居当初は投げやりだった子が通信制高校に通い、就職先を自分で探して独立し、食事に誘ってくれて仕事についていきいきと語ってくれたり。ホームを卒業後も、『帰る家』として見守っています」
#chapter3
近年、村岡さんが危機感を抱いているのが、いわゆる「教育虐待」です。高学歴の親が自分と同じ進路を歩ませようと幼少期から過度に習い事をさせたり、十分な教育を受けられなかった親がプレッシャーをかけて追い詰めたりするケースが増えていると感じています。
「どちらも『あなたのため』という思いはあるのでしょう。でも、泣きながら勉強している子の話を聞くと、親の見栄や理想のために子どもを犠牲にしていないかと考えてしまいます」
幼い頃から先取り学習を続けた結果、小学校の授業が物足りなくなって教室を歩き回る、不満が蓄積して家庭内暴力へつながるといった事例もあるそうです。
「子どもの可能性は無限です。スポーツや音楽など、勉強以外の分野で才能を発揮するかもしれません。電車好きの子どもが駅名や列車名を夢中で覚えるように、自ら学びたくなる環境を整えることが大切です」
子どもの健やかな成長を保障する「子どもの権利条約」が「絵に描いた餅」で終わらぬよう、行政や教育機関、地域の団体と連携を深め、細やかな網の目で支援体制を強化することを展望。15歳未満から寄せられるSOSにも対応できる仕組みづくりを視野に入れ、学習会や講演を通じて子どもの人権に対する理解を広げたいと言います。
「子どもは親の所有物ではなく、一人の人間として尊重すべきで、親や社会の意識が変われば、救える子どもはもっと増えると信じています。誰もが安心・安全に、自分らしく生きられるように力を尽くしたいと思います」
(取材年月:2026年6月)
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Profile
虐待や困窮から子どもの未来を守る自立支援のプロ
村岡篤子プロ
児童福祉
一般社団法人イメル
虐待や困窮などで家庭に安心できる居場所を失った15歳以上の若者を対象に、自立援助ホームを運営。生活習慣や自己肯定感を育み、卒業後も「帰る家」として寄り添い、電話相談にも応じています。
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