障がい者の「働きたい」を支える就労支援のプロ
三上智史
Mybestpro Interview
障がい者の「働きたい」を支える就労支援のプロ
三上智史
#chapter1
「ご本人のやりたいことから始めることを大事にしています」。そう話すのは、札幌市で就労継続支援B型事業所を運営する「dispo.」代表の三上智史さん。精神保健福祉士として、精神障がいのある人やその家族を長年支援してきました。
就労継続支援B型事業所「charabanc at dispo.」では、所内の軽作業に加え、希望に応じてデザインや縫製などにも挑戦できます。さらに、職員が同行し、企業内で実践的な経験を積む施設外就労にも取り組んでいます。
施設外就労では、紙器製造工場や精肉工場、飲食店やマンションの清掃業務、オフィス機器の設定など、多様な企業と連携。自社で運営する青果店「やっちゃば市場」での接客や農作業など選択肢も多彩です。丁寧な仕事ぶりが評価され、人手不足の企業や新規事業立ち上げのパートナーシップなどの相談が寄せられることもあるといいます。
「やりたいことがなければ、一緒に創り出します」と三上さん。あんまマッサージ指圧師の資格を持つ視覚障がいのある利用者と鍼灸院とをつなぎ、就労プログラムを構築した例もあり、希望に寄り添ったオーダーメードの支援を心がけています。
「自分の適職がわからない。何がしたいのかもわからない」という人も、まずは安心できる居場所として通うことからスタート。簡単な作業をきっかけに興味や意欲を育み、企業との連携によって段階的にスキルを身に付けています。定員20人のうち、毎年1~2人が一般就労につながっています。
#chapter2
高校生の頃、精神障がいのある人の苦労や、その人たちに寄り添うカウンセラーの姿を追ったドキュメンタリー番組に感銘を受けたことをきっかけに、支援の仕事に関心を持った三上さん。専門学校で精神保健福祉士の資格を取得後、小規模共同作業所で約10年間、就労支援の現場に携わってきました。
「生活習慣や人間関係をすぐに変えるのは難しい。しかし、働くことは自信や回復につながる大きな力になる」。そう実感し、就労支援を軸に独立します。精神障がいの多くが中途障がいであり、社会とのつながりを失った喪失感を抱えている人が多いことも、起業の背景でした。
「訓練中であっても、『会社で働いている』と胸を張れる場にしたい」。福祉施設での就労に誇りを持てず、自分を責めてしまう利用者の声に向き合い、株式会社として設立しました。
社名の「dispo.」には、自分を縛る「こうあるべき」や過去を手放し、これからに目を向けてほしいという思いを込めています。会社のために働くのではなく、自分の人生を豊かにするために会社を利用してほしい──そんなメッセージです。
「立ち上げ当初は実績もなく、仕事づくりには苦労しましたが、企業と協力しながら経験を重ねてきました。特化したスキルを持たない中で、技術やノウハウを提供してくれるのがパートナー企業の存在です。その分、私たちは利用者のサポートに徹する。利用者の工賃を高めるには、まず企業が利益を出せる関係性を築くことが必要だと考えてきました。企業の成長が工賃向上につながり、対等な立場で費用交渉をする自信を育ててくれたのは、利用者だと思っています」
#chapter3
就労継続支援にとどまらず、三上さんの活動は多岐にわたります。2022年には、閉所の危機にあった市内のグループホームの運営を引き継いだほか、大学や専門学校で精神保健福祉士養成課程の講義も担当しています。
また、ひきこもりの子どもを持つ親の会とも協働し、セミナーを定期的に開催。親向けに、認知行動療法をベースにしたストレスケアを伝えています。
「セミナーをきっかけに親御さんとつながり、そこから子ども本人とも関係が生まれ、進学や就労体験につながった例もあります。支援者が何かをしたというより、子ども自身が将来を考え、きっかけを待っていたのだと思います」
親は子どもを思うあまり自分を責めてしまいがちで、子どももその姿を見て自分を追い込んでしまうことがあります。同じ悩みを持つ保護者同士が交流し、まずは親自身が元気になることが大切だと三上さんは話します。今後も地域とつながり、居場所づくりに取り組んでいく考えです。
「利用者だけでなく職員の『やりたいこと』を応援する風土があります。出張販売や商品開発など、職員の声から生まれた事業も多くあります。一人一人の声を大切にしていきたいですね」
最後に、悩みを抱える家族に向けて、三上さんはこう語ります。
「『利用の対象かわからない』『本人にその気がない』と、家庭の中だけで抱え込まず、まずは外部とつながってみてください。利用を前提としない相談も歓迎しています。地域の声によって、私たちの事業の必要性が出てきます。一緒に暮らすこの地域の困りごとに何ができるか、一緒に考えていきましょう」
(取材年月:2026年1月)
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Profile
障がい者の「働きたい」を支える就労支援のプロ
三上智史プロ
メンタルヘルスソーシャルワーカー
株式会社dispo.
「利用者のやりたいことから始める」を軸に就労継続支援B型事業所を運営。地域企業や自社青果店など多様な施設外就労を通じて働く意欲を育み、ひきこもりの子を持つ親の支援にも幅広く取り組んでいます。
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