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Mybestpro Interview

人間として弁護士として、相談者の気持ちに寄り添う共感派

被害者救済、弱者を救う法律のプロ

今枝仁

今枝仁さん
大切なのは依頼者との信頼関係を築くこと。話にじっと耳を傾ける今枝さん

#chapter1

引きこもり、高校退学…。回り道したからこそ見つけたもの

 広島市中区の縮景園前に位置するアーバンビューグランドタワーの11階に「今枝仁法律事務所」はあります。開設したての事務所は眺望も素晴らしく、活気に溢れています。事務所の主である弁護士の今枝仁さんは、ちょっと変わった経歴の持ち主です。著書や自身のホームページにも紹介されている少年時代から法曹界を目指すまでの経緯は、今枝さんの弁護士としての姿勢に大きく影響しています。
 幼い頃から優等生で、私立広島学院中に進学。しかし周囲との環境の違いや親との確執などが原因で、いつのまにか引きこもるようになり、高校も留年した挙句、退学してしまいます。「あの数年間で精神的にどん底まで落ちました。社会に対して劣等感を感じていました。心に傷を負った時間があるからこそ、今があるんだと思います」。その後、フリーターをしながら大学入学資格検定を取得、人より4年遅れて上智大学法学部に進学し、社会正義を実現する検事を目指します。「学校も行かず、仕事もない…。将来の見えない時間を過ごし、あとは自分のやる気が芽生えるのを待っていた気がします。不思議なことに『司法試験に受からなかったらどうしよう』という不安はまったくありませんでした。検事を目指したのは、『被害者に寄り添い、弱い人を助ける正義の職業』というイメージが強かったからです。弱者の気持ちが分かるからこそ検事になりたい、という一心でした」
 司法試験には見事合格。晴れて検事の道に進むこととなりました。が、今枝さんにとって、検事という職業は激務であるばかりか、必ずしも弱者の味方を貫ける職業ではなかったとのことです。「被害者の立場ばかり考えてもいけない。検察官はあくまで公正中立の立場、犯罪から社会を守る国家の機関なんだと現実を知りました」

#chapter2

交通事故、医療過誤、弱者救済のために奔走する日々

 そんな中、今枝さんが弁護士に転身するきっかけとなった事件がありました。赤信号を無視した乗用車が、横断歩道を歩行中の女子高生をはねた業務上過失傷害事件です。当初、被害者のけがが軽いということで被疑者は逮捕されず、在宅事件に。でも、今枝さんが女子高生の状態を確認すると、実は前歯6本を歯茎ごと失うという重傷でした。驚いた今枝さんは、起訴事実を実態に即した重傷に訴因変更し、事件を甘くみて保険を渋っていた保険会社にインプラントの治療代を支払うように働きかけ。その結果、被疑者には、在宅から実刑判決が出されました。最終的には控訴審の情状立証のため、被害者にはインプラントの治療代が出たということですが、そのような被害者の利益のための活動は、本来、弁護士の方がより自由にでき、検察官の立場では行き過ぎになることもあります。
 こうして、今枝さんは、一人の人間として検察官として、紆余曲折の末、「弁護士の立場で弱い人を救いたい」という思いをますます強く抱くようになりました。現在、今枝さんは公益社団法人広島被害者支援センター監事を務めながら、被害者救済を軸に活動中。さまざまな分野で弁護活動を行っていますが、中でも得意としているのは交通事故や医療過誤の被害者弁護です。医療過誤は、専門知識を必要とする難しい領域。情報の開示が少なく、裁判に必要な証拠をそろえにくいため、人によっては諦めてしまうことも多い事案です。しかし今枝さんは「粘り強く交渉することで和解金が支払われることもあるので、思い切って手続きしてみることが大事」と呼びかけます。

後身の指導にも力を入れます

#chapter3

安心して暮らせる社会をつくるために、新しい世界にもチャレンジ

 さまざまな凶悪事件や悲惨な事件を担当し、被害者、加害者、その周辺の人々の苦悩や悲しみを数多く見てきた今枝さん。特に子どもが被害に遭う事件には心が痛み、子どもが理不尽に死なない社会づくりにも貢献していきたいといいます。「子どもが安心して暮らせる街づくり、命を失うような事件や事故を未然に防ぐ街づくりを推進していきたいんです。安全を保障される社会を確保するためには、司法だけでなく、政治の力が必要」と今年4月、広島市議を目指して統一地方選に出馬しました。自民党が主催する政治塾に東京まで1年間通い、勉強を重ねました。残念ながら落選しましたが、確かな手ごたえを感じ、これからもじっくりと取り組んでチャレンジを続けるそうです。
 選挙では多くの人の支援に励まされた今枝さん。選挙をきっかけに、中退してしまった広島学院時代の友人が集まってきてくれたことも収穫でした。将来は弁護士と政治家の両輪での相乗効果のある幅広い活動を目指しています。事件だけではなく人間を見る、相談者としっかり信頼関係を築く―。常に人に寄り添う今枝さん独自のスタイルは、相談者の心をとかしてくれる温かさがあります。もしもの場合、今枝仁という人を思い出してみてはいかがでしょうか。きっと力になってくれるはずです。
(取材年月:2011年9月)

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専門家プロフィール

今枝仁

被害者救済、弱者を救う法律のプロ

今枝仁プロ

弁護士

今枝仁法律事務所

今枝仁は、東京地方裁判所刑事部事務官、東京地方検察庁検事、弁護士となってからも公益社団法人広島被害者支援センターの監事を務めており、いろいろな角度から数多くの事件や当事者を見てきました。

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