訳ありの車も高価買い取り・無償手続きする中古自動車査定のプロ鈴木光

訳ありの車も高価買い取り・無償手続きする中古自動車査定のプロ

鈴木光

走行可能な車は売却、難しい場合は部品などを回収して資源のリサイクルへ

　「長らく乗車せず車検も切れてしまった、古くて動かないので廃車したいという方は当方にお声掛けください」と話すのは、群馬県前橋市の「ビップスタイル」代表の鈴木光さん。過走行車や故障車、事故車、放置車両など“訳あり”の自動車の買い取りを行っています。

　「処分費用が発生して当たり前と考えられている車も、余程の状態でない限り高価買い取りします。お預かりした車両は適切に廃車・名義変更し、証明書を発行いたします」

　鈴木さんのもとでは、個人だけでなく、企業破産案件・相続案件に携わる弁護士や所有者不明の車両を持て余す不動産会社など、多方面から依頼を請け負っています。「走行可能なものは状況に応じて修理を施し、専門業者が参加するオークションに出品するなどして売却します。不動車であれば解体して、部品を取り出したり、鉄やアルミ、レアメタルなどを回収したりします。自動車は約3万点のパーツから成り、貴重な資源が豊富にあります。再利用につなげることで、どんな車でもお引き受けできるのです」

　例えば、まだ走れるものの車検証がない場合は、同社で再発行手続きをし、印鑑証明など必要な書類を顧客に提出してもらってから一時抹消の廃車手続きをします。ナンバープレートも車検証もなく、自宅に数十年以上眠ったままであれば、車台番号を確認して適正に解体し、自動車リサイクル促進センターへ報告します。

　「車の状態や書類の有無によって踏むべき手順は変わってきます。いずれのケースでも、法律にのっとり適正に進めてまいります」

在庫を抱えず、国内外で部品の需要がある廃車の扱いに狙いを絞り創業

　1972年に前橋市で生まれた鈴木さん。大学卒業後は地元自動車ディーラーで営業として従事。三期連続で優秀セールススタッフ表彰を受賞しました。その後、地方議員の秘書を経て、親族が経営する会社に入社します。

　「親族の会社は不動産賃貸業や飲食業、ホテル業などを手掛けており、私は役員として現場全体を仕切る立場に就きました。経営者としての視点や事業の運営手法、従業員らのマネジメント力などを身に付けることができ、今に生きています」

　学び得た知見と人脈をもとに、2008年に個人事業主として「ビップスタイル」を立ち上げた鈴木さん。当初から、訳あり自動車に狙いを絞っていたと言います。

　「運転資金が潤沢でないため、大金をはたいて、いつ売れるか分からない商品を抱えることは難しい。在庫を持たない業容であれば、売れ残りによる資金繰り悪化などのリスクを回避できると考えました。高額品の売買ではないため利幅は薄いものの、同業他社が手を出しにくい領域である分ライバルが少ない。部品も国内外で需要があるため、こつこつ頑張ればうまくいくと踏んだのです」

　廃車に際し、費用負担を覚悟していた人にとって、無料で手続きしてくれるのはもとより、さらに高値で買い取りまでしてくれるのは魅力的ですが、過去には「だまされているのではないか」と疑われることもあったとか。

　「解体車両の不正取引問題もあり、業界に対して否定的なイメージを持つ方はいらっしゃいます。不信感をぬぐうため、私はお客さまとお会いする際は必ずスーツを着用し、誠実で丁寧な対応を心掛けてきました」

自動車の売買を生業としたい人の独立を支援し、自動車業界を変えたい

　努力のかいがあって業績は順調に伸展。独立から10年がたった2018年に法人改組し、現在は顧客の8割がリピーターだといいます。

　「『対処に困っていたので助かった』など、お客さまからいただく感謝の言葉が何よりのやりがいになっています」と笑顔を見せる鈴木さん。事業を軌道に乗せた経験をもとに、自分と同じように自動車の売買を生業としたい人の独立支援にも力を入れていきたいと考えています。主な対象は、ディーラーや中古車の販売・買い取り業者に勤めている経験者だとか。

　「ビジネスを始めるにあたり、『店舗探しがうまくいなかい』『どんな設備をそろえるべきか』『マーケティングの仕方が分からない』など、悩みは尽きないでしょう。2年間私と一緒に行動してもらいながら、事業用地の確保や集客など、実践的なノウハウを伝えていきます。これまでに3人が私から卒業して、創業を果たしました。今、4人目が修行中です」

　鈴木さんにとってライバルを生み出す取り組みではありますが、独立起業をサポートする理由が、大きく二つのあると語ります。「私自身、車置き場を貸してもらったり、顧客獲得を手伝ってもらったり、さまざまな方に支えていただいたおかげで今があります。恩に報いるためにも、志を持つ人たちを応援していきたいのです」

　もう一つが自動車業界を変えること。「昨今、車業界に不祥事など嫌なニュースが飛び交っていますが、現状を変えるには、お客さまのために真摯（しんし）に仕事に励む人を一人でも増やすことだと信じています」

（取材年月：2024年3月）

故障、放置など“訳あり”の車も高価買い取り。手続きも無償で対応

走行可能な車は売却、難しい場合は部品などを回収して資源のリサイクルへ

在庫を抱えず、国内外で部品の需要がある廃車の扱いに狙いを絞り創業

自動車の売買を生業としたい人の独立を支援し、自動車業界を変えたい

専門家プロフィール

Other Interview