日本の伝統を現代に生かす長寿住宅のプロ
森田清一
Mybestpro Interview
日本の伝統を現代に生かす長寿住宅のプロ
森田清一
#chapter1
岐阜県揖斐川町に事務所を構える株式会社空間工房森田の代表・森田清一さん。国産木材や自然素材を中心に、日本家屋の素晴らしを現代風に取り入れた新築住宅で、厚い信頼を寄せられる建築家です。そんな森田さんが説くのは、現在、主流となっている高気密・高断熱の危険性です。「時代の流れもあり、高気密・高断熱の長寿命住宅が注目を集めていますが、実は壁の中の建材が漏水や壁内結露などで腐り、長寿命住宅のはずが逆に寿命を縮める結果となってしまうことを一般の方は知りません」
では、なぜ弊害がある工法が一般的になりつつあるのか。要因の一つとして、建築基準法の基準数値の何倍もの強度が保てるという点があります。しかし、試験はほぼ全ての建材が新品の状態で行われ、年数の経過による劣化状態は加味されていません。もちろん、実際に経年劣化の再現が不可能ということもあるかもしれません。いずれにせよ、耐久年数が問題視されている中、森田さんは日本古来より伝わる材料と工法による新築施工を提供しています。中でも、近年の問題を解決するために重要な役割を果たすのが、「軒の出」の存在です。「重要なのは、家が濡れないようにすることではありません。昔から、日本の住宅は雨風にさらされてきました。例えば、約1400年前に建てられた法隆寺などの木造建築が今も健全でいられる理由は、軒の出があるからなんです」
近年、日本の住宅業界でも欧米化は著しく、昔はよく見かけた軒の出がある日本家屋も最近では少なくなりました。年間平均湿度、降水量が極端に少ない北米などでは当然かもしれませんが、日本のように高温多湿で雨量も多い国では、軒の出がなければ直接、外壁に雨が当たってしまいます。一方、軒の出があれば、雨は軒を伝って地面に落ちます。もちろん、台風などで雨が当たることもありますが、重要なのは家が雨に濡れない期間が長ければ、それだけ乾くための時間があるということです。そうした工夫がなされていたからこそ、昔の日本家屋は激しい劣化を避けて長く居住者の暮らしを守ってきました。森田さんが手掛ける住宅は、雨が侵入した場合でも、床下や屋外に雨水が抜けていくような構造で設計され、20年後でも30年後でも、家の強度が保たれ安全に暮らすことができる本当の意味での長寿住宅です。
#chapter2
また、高気密・高断熱住宅の場合、居住者がその劣化に気付きづらいという点も懸念されます。昔であれば、雨漏りなどで家の異変を感じ取れたものの、高気密・高断熱住宅はその気密性を保つために壁の中にまで建材が敷き詰められ、仮に雨が漏れていても表面的な変化はありません。内部の漏水はやがて木材を腐らせ、時間が経過するほど家全体に影響を及ぼします。また、常に水が滞留することで高い湿度が続き、普通は冬に冬眠するはずのシロアリの動きを活性化させてしまうことにもなります。
日本の住宅は昔から高温多湿を嫌い、高床式や軒の出などの設計、ふすまや畳などの通気性を重視した工夫を追い求めてきました。森田さんは寒さや暑さを忌み嫌い、住宅に深刻な問題を引き起こす工法や現状に疑問を投げ掛けます。暑い夏を避けるために縁側や夕涼み、寒い冬は炬燵の温もりが一家団欒の時間を創造する。そんな四季とともに育まれてきた日本の文化を大切にするためにも、文明の発達による技術の進歩にも一考の余地があるのかもしれません。
#chapter3
父親が大工だった影響もあり、工業高校の建築科に進学して将来志す道を若くして決めたという森田さん。その後、大手ゼネコンに就職し、現場監督などを務めて経験を積んだ後、設計事務所や工務店でさらに技術を身につけていきました。当時、会社と現場との隔たりを感じたことから独立を果たした今、自身の顧客には気になる点があれば、要望は遠慮なく伝えてもらい、すぐに対応するというスタンスを貫きます。
「どんなことでもメリット、デメリットがあります。それを理解した上で判断することが重要で、業界主導の状況は建築について無知な一般人にとって不利な状況にあります」と遠慮無く語る森田さん。そんな状況を是正するためにも、信頼できる専門家である森田さんのような存在を介して、本当に正しい情報を伝えていくことが重要なのではないでしょうか。
(取材年月:2015年6月)
リンクをコピーしました
Profile
日本の伝統を現代に生かす長寿住宅のプロ
森田清一プロ
建築家
株式会社 空間工房 森田
国産木材や自然素材を中心に、日本家屋の素晴らしさを現代風に取り入れ、真の意味での長寿住宅で厚い信頼を寄せられている。
\ 詳しいプロフィールやコラムをチェック /
プロの執筆コラム
掲載専門家について
マイベストプロ岐阜に掲載されている専門家は、新聞社・放送局の広告審査基準に基づいた一定の基準を満たした方たちです。 審査基準は、業界における専門的な知識・技術を有していること、プロフェッショナルとして活動していること、適切な資格や許認可を取得していること、消費者に安心してご利用いただけるよう一定の信頼性・実績を有していること、 プロとしての倫理観・社会的責任を理解し、適切な行動ができることとし、人となり、仕事への考え方、取り組み方などをお聞きした上で、基準を満たした方のみを掲載しています。 インタビュー記事は、株式会社ファーストブランド・マイベストプロ事務局、またはぎふチャンが取材しています。[→審査基準]