家族のように愛情を持って犬を育てるブリーディングのプロ山口明美

家族のように愛情を持って犬を育てるブリーディングのプロ

山口明美

ドッグショーで受賞できる優良犬を育てるブリーダーとして活動

　「愛情を注いで育てた犬を、家族のように迎え入れてくれる飼い主さまにお渡しすることをポリシーにしています。こちらにお越しいただければ、のびのびと育つ犬たちの様子を見てもらえます。ご見学に来ていただくのをお待ちしています」

　そう語るのは、岐阜県安八郡にあるブリーダー「BULLD（ブルド）」の代表、山口明美さん。フレンチブルドックやパグ、ブルドッグ、ゴールデンレトリバーを中心に飼育をしています。小型犬は併設された大きなドッグランで自由に遊ばせ、大型犬は毎日の散歩を欠かしません。滋養を促す栄養素が高い鹿肉のオリジナルフードを提携先から仕入れ、様子を見ながらメニューを変えて体づくりをしています。

　「獣医師さんとも連携し、ここの子は全て家庭犬と同じように慈しんでいます。この思いだけは誰にも負けません」と力を込める山口さん。例えば、妊娠をした場合は目が届くリビングで注意深く見守り、出産前後に手厚いケアを施します。

　また、犬の姿形を審査する品評会・ドッグショーにも積極的に出場しています。
　「犬種ごとに理想像を定めた『犬種標準（Standard：スタンダード）』が評価の基準になっています。いろいろな交配がありますが、私はドッグショーで入賞するような血統にこだわっています。純粋犬種を育成するために他のブリーダーさんと信頼関係を構築して、いい犬と交配させてもらうことも必要なんです」

　犬が苦手な暑い時期を避けて、年に数十回はドッグショーに出場しさまざまな賞を受賞。優良犬のブリーダーとして着実に成果を上げています。

飼い主と対面し、命の重みを伝えることもブリーダーの役割

　山口さんは幼い頃から犬がいる環境で育ち、愛犬が亡くなり喪失感にかられます。
　「小学3年生の時でした。あまりに悲しくて1週間学校に行くことができなかったんです。慌てた父が新しい犬を買ってきて、元気を取り戻しました」

　飼っていたのはフレンチブルドックやパグのように、家の中で一緒に過ごせる犬たち。ある日、ブリーダーの元を訪れた時に「そんなに犬が好きならやってみないか」と勧められました。

　「寝るときも犬が側にいる生活なので、犬舎で飼うことに寂しさを覚えました。複数頭の世話をすることで愛情が分散することも心配でしたね」と現職に就いた頃の葛藤を振り返ります。また、手塩にかけた犬を販売することをつらいと感じました。

　「ちゃんと飼い主は見つかるのか気がかりでしたから、当方では大事にしてくれる飼い主さまに直接お渡しする方法にしています」

　飼い主と対面し、犬種それぞれの特長や、どんな育て方をしないといけないかを分かりやすく説明。初めて犬を飼う人には、餌やりや排せつ物の処理、病気になることや旅行に行きにくくなることも細かく伝えます。
　「『大丈夫、簡単に飼えますよ』と言うことはありません。暑い場所が苦手な犬を『外で飼うつもり』と話された方がいたので、やんわりとお断りしたこともあります。命の重みを理解していただくことで、飼った後のトラブルが起こりにくくなると思っています」

誕生だけではなく亡くなった後の見送りまでサポートしたい

　「パピーミル（子犬工場）」と呼ばれる、営利目的で大量に繁殖させる業者が報道される現状にも心を痛める山口さん。「丁寧に育てているブリーダーがいることを知ってほしい」と口調を強めます。

　「『動物の愛護及び管理に関する法律』で、メスの生涯出産回数は6回までと定められましたが、当方ではだいたい3回まで。母犬に無理をさせないように徹底して配慮しています」

　山口さんが利用している「みんなのブリーダー」という子犬の販売サイトには、購入した飼い主から「不安もありましたが人懐っこくてかわいく、わが家に迎えてよかった」「子犬を大切に育てている事が伝わりました」といった感謝のコメントが寄せられます。
　「良い飼い主さんが多く本当にうれしいです。グループLINEで成長を報告したり、みんなで誕生日のお祝いをしたりするんです。ブリーダーを始めた頃は、世話が大変で睡眠不足になっていましたが、今は犬好きの同級生に協力してもらい私らしいやり方ができています」

　今後の夢は「この世を去る際に、しっかりと見送ること」と話します。
　「私も飼い犬の旅立ちに何度も立ち合っていますが、ちゃんと送ることができると温かい気持ちになり救われるんです。天命を全うした後のお手伝いもさせていただき、手を合わせてあげることができればいいですよね」

　犬との豊かな毎日を届けたいと願う山口さん。「困ったことがあればいつでもサポートします。ワンちゃんと暮らす幸せをご提供したいですね」と笑顔を見せます。

（取材年月：2023年10月）

家庭犬のように大切に育てた犬を愛情あふれる飼い主に託したい

ドッグショーで受賞できる優良犬を育てるブリーダーとして活動

飼い主と対面し、命の重みを伝えることもブリーダーの役割

誕生だけではなく亡くなった後の見送りまでサポートしたい

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