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こども食堂の運営サポートを通じ、子どもたちの笑顔の輪を広げるお手伝い

「ほっ」と安心できるこども食堂の運営を支援するプロ

宮崎孝司

宮崎孝司 みやざきたかし

#chapter1

子どもたちを取り巻く環境が厳しい中、求められている継続的な支援

 子どもや保護者が、無料または安価に食事ができる「こども食堂」。貧困家庭に手を差し伸べるだけでなく、人の輪や地域のつながりを作る場としても注目されています。一方、必要な費用や食材は、大部分が持ち出しや寄付などの善意によって賄われており、継続していくには多方面からの協力が不可欠です。

 食材の配分をはじめ、補助金など資金面に役立つ情報を提供したり、有志を募ったり、施設運営をサポートしているのが、羽島市の「こどもがセンター」代表の宮崎孝司さんです。

 「『子どもの貧困』が社会で指摘されて久しいですが、はた目には気付かないことが多く、対応は容易ではありません。また、家庭での虐待や学校でのいじめといった“心の貧困”に起因する課題も根深いものがあります。子どもたちを取り巻く環境は想像以上に厳しいだけに、ランドセルを下ろして『ほっ』とできる居場所が求められています」

 2012年に全国で9件だった「こども食堂」も、2023年には約9000件に。岐阜県にも161カ所あります。
 「かつては貧しい子どもが行く場所というイメージでしたが、今はいろんな子どもたちが寄り合う場になっています。下校後、保護者から100円をもらって食堂に出掛け、友達とカレーを食べる。私たちが子どもの頃に通った駄菓子屋のような存在になっていますよ」と宮崎さん。子どもたちの笑顔がエネルギーの源と目を細めます。

 「通学路を眺めていて、元気がないと感じる子もいるのですが、食堂に来て、うれしそうに食べ物を頰張っているのを見ると、やっていてよかったなあと思いますね」

#chapter2

フードバンクの物流拠点を開設するほか、学習支援や相談事業も展開

 「こどもがセンター」という名前が表すように、子どもを真ん中に、みんなで力を合わせて育てていきたいと願う宮崎さん。「こども食堂」の中間支援組織として、趣旨に賛同し手を貸してくれる人たちと、利用したい人たちを結びます。

 「農家さんや小売店さんなどからお米や野菜が私たちの元に届くと、県内各地の『こども食堂』に連絡をして、運営者さんにセンターまで取りに来てもらいます。とはいえ、食材はいつも手に入るとは限らず、供給が追いついていないのが現状です。また遠方の施設は、高速道路を利用して取りに行くよりも買った方が安いといったケースも珍しくありません」

 宮崎さんらは広範な地域へ配送できるよう、2023年に、メーカーなどから食品を寄贈してもらうフードバンクの物流拠点を関市に開設。将来的には各種団体と連携して配送網を構築し、東濃や飛騨などにも行き渡らせたいと語ります。

 宮崎さんたちの支援は多岐にわたります。
 「当方では不登校の小中学生を中心に学習支援も行い、岐阜、羽島の両市に、無料の英会話教室やフリースクールを開講。相談事業も手掛け、司法書士や医療関係者らが離婚や親権問題、子どもの発達に関する悩みに応えています」

 夏休みの終わりには「まちかど保健室」と銘打ち、商業施設で子どもから大人までを迎え入れ、それぞれの声に耳を傾けます。
 「気丈に振る舞っていても、目に涙をいっぱいためて胸の内を吐露する中高生もいます。抱えている重荷を少しでも下ろしてもらえればと考えています」

#chapter3

こども食堂、学習支援、遊び場づくりの三位一体で、子どもの成長を支援

 元々サラリーマンだった宮崎さんですが、50歳のときに胃がんになり退職。その後の人生を社会貢献にささげようと決意します。

 「今では『胃がん退職』と冗談で言えますが、当時は命が1、2年持つか分からず、不安な毎日でした。父親から『人に迷惑を掛けた分、60歳からは社会に恩返しをしろ』と日頃から言われていたので、やるべきことをやってあの世に行こうと思い、一足早く職を辞することにしました」

 仲間たちとNPOを設立し、一人暮らしの高齢者が誰にもみとられず旅立つ孤立死を防ぐため見守り訪問をスタートさせました。
 「ある日、担当していた女性から『孫が離婚して、ひ孫の笑顔がなくなった』という話を聞いたんです。子どもたちのために何かできないかを考え、2015年に『こども食堂ぎふネットワーク』を立ち上げました」

 活動の幅が広くなったことから、2022年に一般社団法人として現在の名前に改称。宮崎さんらの取り組みは行政からも高く評価され、児童虐待や戸籍のない子どもの解消に向けて協力を要請されるまでになります。
 大学では教員志望の学生に子どもとの向き合い方について話し、社会福祉協議会や民生委員の研修会でも講師を務めています。

 現在は子どもたちの新たな居場所として、農産物の栽培から販売まで体験できる環境づくりを進めています。
 「花を植えたり、ポニーに乗ったり、しっかり遊べる場にしたいです。こども食堂、学習支援、遊び場の三位一体により、子どもたちの成長を支えたいですね」

(取材年月:2023年12月)

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専門家プロフィール

宮崎孝司

「ほっ」と安心できるこども食堂の運営を支援するプロ

宮崎孝司プロ

子育て支援団体

一般社団法人こどもがセンター

こども食堂の運営者に対し、食材の提供や行政の補助金などの情報を提供、フードバンクの物流拠点を開設し、食材の運搬態勢の確立を目指しています。子どもたちの学習支援や相談業務にも取り組みます。

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