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会津で400年以上続く農家として稲作に励み、同業者の農業経営もサポート

農業界の未来を見据え、全国においしい会津米を届ける稲作のプロ

新國文英

新國文英 にっくにふみえい
新國文英 にっくにふみえい

#chapter1

手塩にかけた「会津コシヒカリ」「ひとめぼれ」「天のつぶ」を全国に向けて展開

 「作物を育てることも、人と関わることもとにかく楽しくて、僕は農業が大好きです。全国の皆さまに手塩にかけた会津米をご提供するとともに、同業者さんの事業運営をサポートしていきたいと考えています」

 そう話すのは、「農業総合研究所」の新國文英さん。福島県の会津地域で、400年以上続く農家の18代目として稲作に従事する傍ら、ネットショップで農作物を展開。就農者のために、確定申告に役立つ農業複式簿記の記帳支援にも力を入れています。

 新國さんが45ヘクタールに及ぶ田んぼで作付けしているのは、主に3種類。常に高い評価を集める「会津コシヒカリ」と東北の代表的な品種「ひとめぼれ」、福島県オリジナルの「天のつぶ」です。農薬や化学肥料の使用量を抑えた特別栽培米のコシヒカリも10ヘクタールを使い、生産しています。
 「会津コシヒカリは大粒で柔らかく、強い粘り気が特徴です。炊き上がりはもちろん、冷めても甘みを感じていただけますよ」

 通販サイトに寄せられるのは、「いつも迅速な対応で助かります」「おいしくて家族からも好評でした」といった声。受注処理などの出荷業務は、農作業を終えた午後5時以降と、翌朝4時から6時半頃にかけて行っているそうです。

 「お客さまに新鮮なお米をご賞味いただけるよう、発送当日に精米や『肌ヌカ』の除去作業をしています。肌ヌカとは、精米時に除去し切れない米ぬかのことです。米のとぎ汁は、肌ヌカが水に溶けたもので、水質汚濁の一因になると言われています。環境負荷を減らすためにも手間暇は惜しみません」

#chapter2

就農者を支援するために創業し、経営にも関わる簿記のセミナーなどを開催

 一家の三男坊だった新國さん。長男が農家を継ぐ風潮がある中、生まれ育った地で田んぼに関わっていきたいと家業に入りました。
 「僕は、志を持つ人に門戸を開き、誰もが農業に携われる仕組みを作りたいと思いました。弊社は、希望を持って農の道へと踏み出した方々が、経営を続けていくための後押しをするべく立ち上げた会社です」

 過去には税理士と連携して、お金の流れを把握する上で欠かせない農業複式簿記に関するセミナーを定期的に開催。新型コロナウイルスなどの影響でいったんはストップしましたが、時機をみて再開したいと熱意を見せます。
 「2022年からは、地元の経営者団体『会津若松法人会』のデジタル戦略委員会のメンバーにも選んでいただきました。ゆくゆくは『農業部会』を作って、業界のデジタル化を進めていきたいですね」

 長年、会津の地で農業を営んできた新國さんには、忘れられない出来事があると言います。
 「2011年に福島第二原子力発電所の事故が起こってすぐ、いつも購入してくださるお客さまから、『私は新國さんのお米について何も心配しておりません』とFAXをいただいたんです。先が見えずつらい状況でしたが、こんなにも自分たちのことを信じてくださる方がいるのだと、涙が出ました」

 一方で、放射能汚染を心配する人から心無い言葉を向けられたことも。「食に対する意識が高い生活者の不安を和らげるには、安全なお米を販売することは当然だが、それだけでは安心感にはつながりにくい」と思い至ります。

新國文英 にっくにふみえい

#chapter3

誠実な姿勢でお米を届け、就農者を支えることで農業を次の世代につないでいきたい

 「みなさまの信頼を得るには、従業員一同、丹精込めてお米を作っていることを知ってもらう必要があると考えました。お客さまの質問に誠実に答え、質のいい商品をお届けして期待に応える。万が一異物が入っていた場合には、封を開けて食した後でも返品できることを周知する。そうして初めて、お客さまとの関係性が築けるのではないでしょうか」

 ネット通販は顔が見えない分「対面販売以上に丁寧な説明や対応が求められる」と、発送するお米には会津地方伝統の「赤べこ」をあしらったサンクスカードを同封。表には万年筆で購入者の名前を、裏面には返品や交換の案内を記しています。定期購入者やリピーターには、年に1度、感謝を込めて会津産のぶどうを送っているのだとか。

 生産者に向けては、農業経営に関する講演も行いたいと力を込めます。
 「実は、私には現在の研究所の前に創業した会社を実質倒産させてしまい、代表を降り、今も会長として経営再建中という経験があります。身をもって学んだことを踏まえ、金融機関とのお付き合いの方法や、事業を維持・発展させていくために取り組むべきことなどをお伝えしていきたいですね」

 新國さんは、農業を仕事として選ぶ人を支え、次の世代へとつないでいくことを見据えます。
 「私と同じ轍(てつ)を踏まないよう、同業者の方が経営者感覚を磨くお手伝いができればと思っています。全国のお客さまにはぜひ、口にする食べ物がどんな過程を経て自分のもとに届いているのか、少しでも関心を持っていただけるとうれしいです」

(取材年月:2023年1月)

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新國文英

農業界の未来を見据え、全国においしい会津米を届ける稲作のプロ

新國文英プロ

農業

有限会社農業総合研究所

会津地方で400年続く農家の18代目として稲作に従事し、産直通販サイトを運営。さらに農業界の未来を見据え、同業者が事業を継続しやすいよう、確定申告の手伝いやデジタル化の推進など経営面からサポート。

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